妙なタイミング

昨日の夜、母親から電話があった。

子どもの頃に加入していた生協の保険の話を一通りし終わった後、おもむろに「じいじ(祖父)とばあば(祖母)が夢に出てきてる?」と言った。
母方の祖父母はともに亡くなってる。祖父は17年前、祖母は10年前。

俺は一瞬戸惑ったが「出てきてないよ」と答えると、どうやら俺の姉と祖母とつきあいの深かった友人がともに同じような夢を見た、と母親に連絡をしたらしいのだ。

夢の中では、祖父母は家の仏壇の前で「線香をあげてくれ」と言っていたらしく、加えて俺のことを何だか心配している、と言っていたのだ。
具体的に何を心配しているのかはわからないみたいだが、関わりのほとんどない二人が同じような夢を見ることが果たしてあるだろうか。

確かに今の俺は苦しみの最中にいる。毎日が苦しみの連続で、死についてのハードルが下がっているのは事実だ。
もしかしたら祖父母はそんな俺を天国から心配してくれているのかもしれない。
祖父は元警察官で寡黙な人だったが、俺のことをとても気にかけてくれていた。また、俺の名付け親(祖父?)でもある。
祖母は本当に優しいおばあちゃんで、のび太のおばちゃんの思い出に出てくるような、まさにあんな感じの優しいおばちゃんだった。

あぁ、心配かけてごめんな。
祖父は1月21日、祖母は12月25日が命日だ。手を合わせておくよ。

そして、その話の後、今度は母親自身の過去の話になった。
母親も今から20年以上前、同じように精神を病んで病院に通っていたらしい。それも7、8つの病院を駆け回っていたそうだ。当時の俺は何だか大変そうなのは感じていたが、まさかそんな病院を転々としていたことなんて全く知らなかった。

母親が自分たちもそろそろいい歳になってきて家の断捨離を進めていたところ、その当時の日記を記したノートを発見したそうだ。
そのノートには当時の様子が事細かく書かれていたらしく、あるカウンセラーに通っていたときの様子を語り出した。

当時病院を転々としても薬だけ処方されて「はい、おしまい」という現実に嫌気がさして絶望していたとき、近くに個人でやってるカウンセラーを見つけたらしい。そのカウンセラーと出会い、自分の考えていた答え、欲しかった答えが次々と見つかって、気分が本当に改善していったという。

しかし、カウンセラーと会う回数を重ねる毎に「上の先生と会ってほしい」「研修に参加してほしい」などと言われ、最初は怪しがっていたらしいが、自分が楽になっていたこともあってそれを信じてしまったらしい。
母親の友人にそれを相談して最終的にはまずい、と思って引き返したが、どうやらそのカウンセラーの背景にあったのがあの「オウム」だったという。

その話を聞いて一瞬ドキっとした。
「オウム」という単語のインパクトもあったが、それ以上に緊張感を覚えたのは、今の自分も個人カウンセラーにかかっているという事実と母親の話を重ねてしまったことだ。

俺の通っているカウンセラーも非常に心地よい言葉、自分にとって耳障りのいい言葉をかけてくれる。決して怪しい勧誘をされているわけではないが、母親の「次回の予約をこちらの意志に関係なく勝手に入れようとしていた」というオウムのカウンセラーのやり方と今の自分のカウンセラーのやり方が同じ、というところに妙な寒気を感じた。

母親はとにかく泣きそうな声で「しっかり勉強した、資格を持っている人に相談して」と繰り返した。そして、「絶対に大丈夫だから」と。
今の俺が心配でどうしても伝えておきたかったらしい。

俺は病院とカウンセラーを探す、ということを母親には話していた。
そして、俺は今のカウンセラーが気に入っていたが嫁さんは反対していた。母親とほぼ同じような理由で。

このタイミングでこんな話が出るなんて…。
最初、嫁さんと母親がグルになって俺を丸め込もうとしているのでは、と勘ぐってしまった。
一応双方に確認したが、裏で口裏合わせをしていたことはない、という。

妙な感覚だった。

祖父母の夢の話、

母親の過去の話。

いくら何でもタイミングが良すぎかな、と思った。
けど、こういうときはそういう警告を無視しない方がいいな、と直感で感じた。

きちんとしたカウンセラーを探そうと思う。
もとの自分を取り戻すために。

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