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ありのままのぼくたち|エッセイ

実家に帰省したのは数年ぶりだった。

車でドライブをしながら生まれ育った故郷を眺めた。竹藪だった場所に巨大な商業施設が建ったり、サッカーや泥遊びをした広い空き地が住宅街になったりしていたが、本質的には何も変わらない気がした。

変わっているのは、周りの友達や自分だと感じた。今までは子どもで、無知で、何も知らなかったが、酒も飲むようになり、煙草も吸うようになり、ゴルフもするようになり、みんなが無理して大人のふりをするようになった。そういうことをするべきなのか、するべきじゃないのかは分からないけれど、いつの間にか、そういう風になっていた。

昔は、サッカーボールでも持っていって、事前の連絡もなく家まで行って「公園で遊ぶぞ」って言えば、すぐに友達みんなで集まることができたのに、そうはいかなくなった。

自分も例外とは言えないかもしれないけれど、無理して大人ぶる必要もないのではないかと思った。今すぐにでも、空から大量の薬剤が降ってきて、ぼくたちの心と体を小学校時代のモノに戻す効能をもたらしはしないだろうか。もしそうなれば、さぞかし面白いだろうと思う。

成人を過ぎて、ヘアスタイルを少々いじくって、格好だけは大人ぶっているぼくたちが、あの角刈りやスポーツ刈りやらの、むき出しの姿に戻される。みんなが個性に満ちあふれていたあの頃に。そうなってみれば、今みたいに、無理に大人ぶって、いきがることを思い切ってやめられるかもしれない。

故郷の友達と再会したときにそんな風に思ったことはないですか?

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