【詩】そばにいて

彼女は雷が怖かった
暗雲に広がる刹那の光と轟音
そばにいてと、彼女は言った

彼女は怒りが怖かった
感情剥き出しの相手への敵意
そばにいてと、彼女は言った

彼女は友人が怖かった
いつか裏切りが二人を切り裂く
そばにいてと、彼女は言った

彼女は一人が怖かった
沈黙と孤独
そばにいてと、彼女は言った

彼女は暗闇が怖かった
誰も気づかないうちに自分が消えてなくなる
そばにいてと、彼女は言った

彼女は嘘が怖かった
心がどこにあるか目には映らない
そばにいてと、彼女は言った

彼女は未来が怖かった
巻き戻せない時の流れ
そばにいてと、彼女は言った

彼女は死が怖かった
積み上げた経験や思いが失われる
そばにいてと、彼女は言った



僕はそんなとき
とても幸せだった
そばにいてやれば
彼女たちは癒される

たった一つの
僕にできること



僕には、そばにいてやる以外のことなんて
僕には、到底できないわけだから

そしてみんな、遠くへ行った
もっと幸せになるために
本当に思いやってくれる人を見つけるために


雷と、
怒りと、
友人と、
一人と、
暗闇と、
嘘と、
未来と、
死は、
僕のすぐそばにいつもあった
彼女たちのことを思わずにはいられなかった
彼女たちは、無事幸せになれただろうか。



そばにいて欲しかったのは
彼女たちのほうだったのだろうか
それとも
僕の方だったのだろうか


そばにいてと、僕は結局、誰にも言えなかった。

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