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転職で失うもの

 世の中、転職エージェントの広告が多いためか、転職をポジティブにお勧めする風潮が強いように思った為、警鐘を込めて転職をしたら失うものに関して書いていこうと思います。少しでも転職を考えている人が安易な転職に流れないように、ご参考にしていただければ幸いです。

1.仕事仲間を失う
 必ずしもそうとは限りませんが、関節部門で働いている私などは会社が変わると関わってくる人は全て変わります。「LIFE SHIFT」という有名な本の中に人生を幸せに導く要件として、無形の資産があげられており、人間関係というのはこの無形資産の重要な構成要素です。
 もちろん、この人間関係こそを失いたくて転職する方にとってはデメリットではありませんが、もし長期の間、会社に在籍されていた場合は多くの人間関係が少なからず構築されており、それらを全て失い、新しく仕事上作り上げていかなければならないというのは非常に辛い部分ではあります。例えば現在の仕事が非常につまらない、苦痛である場合に食堂などで偶然であった同僚と「最近きつくてさ…」という会話をされていた場合、その人間関係を失ってしまう可能性があります。こうした何気ない人間関係というのは日常に溢れており、失うことに対してあまり大きな問題ではないと思う方も多いかも知れません。
 しかし失う前に、是非再考することをお勧めします。実は会社で生活する上で上記のものは私個人の経験としては結構重要な要素を兼ねており、隠れたモチベーションになっています。次の会社ではそういった方が見つからないかもしれず、そうなったときにふと恋しく感じてしまうものです。愚痴を言い合える仲間の為に頑張るというのは隠れたモチベーションなのです。
 もし現状の上司や現在の部門の周りが耐え難い、という場合は社内転換(できれば)をすることも一つの手段です。きっと同僚も会社も貴方との人間関係を喜んで失いたいとは思っていないはずです。その憂いがなければそれはそれでよいのですが。

2.専門知識を失う
 私は経理という職務ではあり、間接部門ですので汎用性のある分野と言えます。例えば人事などもそうでしょう。ただし、この経理や人事という職業であっても転職することによっては一時的に必ず次の会社についていけなくなることはあり、この部分はデメリットです。
 会社には必ず一つ一つ独自の色が存在し、それが正しいかどうか、優れているかどうかは別として、自分をそこにシフトさせなければいけないことが出てきます。そこに合わせるのに、早くても1か月ぐらいはかかってしまうものと推測します。(超優秀な人はその限りではない)私の経験上、自分は変化には強いタイプだとは思っていますが、やはり結構苦痛です。
 一つの会社で長く働いていると、毎日考えもしない当たり前の思考が次の会社で崩れたりし、そこに驚くことがありますので、会社を移る前に毎日の当たり前を見直されてみることを推奨します。
 全く同じことをやっている会社というのは存在せず、今までの知識はほとんど通用しない、その中で自分は頑張らなければならない。そして得た知識は同じようにその次の会社でもあまり役に立たなくなる、というイタチごっこになることを念頭に置いておいた方が良いかもしれません。

3.平穏を失う
 なんだかんだ、転職をするという方は自分の人生を劇的に変化させることです。「何をいまさら」と思われるかもしれませんが、私の経験上それがいい方向に左右することは60%ぐらいです。
 5割を超えているならやった方がいいじゃないか、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、どこに行っても変化によるキャッチアップ期間は苦痛を伴いますし、残業しない、パフォーマンスを出さない、というわけにはいきません。現在の会社が長く勤められている会社であれば、幸か不幸か自分のパフォーマンスはある程度見通しが立っており、それを安寧ということ言い換えることができるかもしれません。
 もし、そうであれば、自分は本当に激流にのまれに行く覚悟があるのかと、自問してから転職に向かうことをお勧めします。
 例えばワークライフバランスを向上させたいので転職したいということであれば、それは安寧を失うことにならないのではないかと思われるかもしれませんし、ブラック企業からホワイト企業に移るのであればこれは確かに該当しません。ただ、対外的にホワイト企業と称されているからと言って、今からいく部門がホワイトである確証はなく、また自分の職務が安定するまではワークライフバランスとは概して手に入り憎いものであると頭に置いておいた方が賢明であるとは思います。それまでは覚悟が必要です。

ざっと失うものを書きましたが、恐らく多くの方が気にされるであろう給料が下がる可能性がある、ということもあるかとは思います。ただ、私個人ここを強く言及しないのは、給料は個人、いわゆる内的な要素というよりは外的な要因が大きいと考えているからです。給料の高い、低いは個人の能力の評価というよりは業界や会社の規模に因る部分が大きいです。
 ですので、高い給料を目指すのであれば業界を絞ったり、大きな会社を選ぶなどをすればよいとは思っており、ここは「失うもの」という定義と違うと判断しました。
 個人的に転職活動は嫌いではありませんが、不必要にする必要もない。今ある幸せを再考する、ということも必要ではないかと思うのです。
 ただ、心身に異常をきたしかけている場合は、こんな世の中ですので、即座に移動されることをお勧めします。例え失うものがあったとしても、自分の健康だけは決して失わないでください。

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