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片道1000円分離れた友達と散歩した。私たちはお互い別の命を生きていかなきゃいけないけどさ。

私の知り合いに少し女癖の悪かった(この言い方が正しいのか分からないが)同級生がいる。後から彼から聞いた遍歴には酷いものもあって、自分がされたら絶対キレるなぁと思う。だけど、同時に彼には昔長く付き合った彼女がいて、彼が遊び回るようになったのはその子と別れてからだ、ということも本人から聞いた。

俺は今まで取ってこなかった選択肢をとって、どういう生き方が自分に合うのか、答え合わせをしているんだ、と彼は言う。

小さなテリトリーの中で虚勢を張りながら、私もずっとそれが私の生き方の答えじゃないことを知っていた。彼と私はまるで違う。だけど私もある意味では彼と同じように、これからは別の環境で答え合わせをしていくんだと思う。全く違う方法をとりながら。

最近は少しずつ分かってきた。どうやって人に私の気持ちを伝えるのか、どうやって確かめるのか、どうやって心から笑うのか。分かってきているし、その一方でまだまだ分からない。分かりたい。私の生き方を私はまだ知らない。

友達から連絡が来て、久しぶりに実家から遠い、彼女の家の最寄り駅へ行った。ぐるぐると公園を回って散歩をしたり、色々な話をした。何人か当てのあるひとを呼んでよとも言ったが、お互い高校の頃の知り合いの連絡先はほとんど消してしまっていたので、諦めた。

周りの環境や他人の目ですぐ曲がってしまう私を正してくれる、明るくて、眩しいほど全力で生きているその友達が私は好きだ。効かないダイエットアプリを何度も買ったり、片思いで玉砕して泣いたり、体育の先生に反抗して授業が終わっても残されていたり、私のために笑ってくれたり。

あのさぁ、●●にはお願いしとくね。と彼女は道路を歩きながら言った。私がもし若くして死んだらさ、遺影は一番盛れてる写真にしてよ。卒業アルバムのやつは駄目だよ!あれは可愛くないから。私は笑った。お母さんはね、多分あれを選ぶから、それだけは全力で阻止してよ。

分かったよ、覚えとくね。あの子は夜になると死について考えてしまうんだ、といった。生きていた証が何も無いまま死んでいくのは怖いなぁ、と。あの子はあの子の命を生きていて、それは私とは全く別のものだ。きっとこの子も、夜に天井を見て泣いたりするんだと思った。

あの子の身体や精神の痛みを、私は、本当に感じることはできない。それどころか私は、彼女が本当に痛みを感じているという証拠さえ、本当の意味では手に入れることができない。私はただ、それを想像で補って励ましたり、慰めることしかできない。私はそういうことができるようになりたい。

心理学を専攻している友達が言っていた。「お前さ、哲学は突き詰めたら必ず最後は、死にたどり着くよ。」そうなのかもしれない。私には分からない。

私は大昔に死を考えていたときがあって、だから今こうやって生きていることは結構幸せなことで、まだまだ死ねないな、と思う。消えるのが怖いと思ったことはなくて、どっちかっていうと消えたいと思っていたから、あんまり分かってやれないんだと思う。

私は●●(友達の名前)が死ぬのは嫌だなぁ、と私は言った。そんなことになったら、私はどうやって生きていくんだろうと思った。言いながら、そんなことを言って何になるんだろうとも思った。みんなさ、あんまり死ぬとか言うなよ。100年後も、200年後も、300年後も400年後も、一緒に生きようよ。ずっと生きていよう。綺麗だよね、私達。人間って綺麗だよ。

帰りに羊文学のstepを聴きながら、夕陽を見て、私は多分全部忘れてしまうんだな、と思った。今までのことは全てもやがかかったように真っ白であまり思い出せなくて、私はその中で色を残している色々な人の顔や声だけをこれから持っていくんだと思う。今までの生き方は終わりだ。もう終わり。さよなら。

生まれ変わって別の生き方で生きていけば、今よりも優しい顔、優しい声で笑える気がする。初めまして。

眠れない夜に捧ぐ