美容院でストレートパーマをかけて、変な題名の本を読んだ。色や味の無かった過去と、現象のような今と、予想のできない未来について
さて、昨日は美容院に行って、うねり始めた髪の毛にストレートパーマをかけてきた。行きつけのお洒落な(照)美容院が定休日だったので、激安のチェーン店に入ってみることにする。並べられている雑誌は、殆どが週刊誌だった。
そのうちブリーチもかける予定なんですよ〜などと美容師のお姉さんと話しながら、持参した本を読んだ。永六輔と矢澤泰久の対談で、「ははははハハ」という題名である。完全に題名に惹かれて図書館で借りた。別に永六輔や矢澤泰久を詳しく知っているわけではない。
内容はめちゃくちゃ面白いのだが、なにより下ネタがかなり多いので、途中から美容師の目が気になって読むのをやめた。ぼーっと鏡の中の自分を眺めながら、アイロンやドライヤーを当てられる。
話は脱線するが、床屋は資格上、簡単な医療行為をする事ができるらしい。バリカンなど、人の肌に刃物を当てることを許されているからだ。床屋の前の、あの赤と青と白のまわるやつの赤は、血を表していて、医療行為のことらしい。「ははははハハ」内の情報である。
そういえば、美容師と床屋の違いって、バリカンを使えるかどうかだった気がする。…と今調べてみたが、どうやら別に美容師も毛剃りはできるらしい。
いつかアメリカの美容院の動画を見たことがあるが、ビールサーバーがあって、お客さんもほろ酔いになりながらカットされていて面白かった。海外の女の人は、前髪の無い人が多い。前髪を作りたいものの、彫りが深くて似合わないので断念している人も多いそうな。
そういえば美容師になりたかった時期があった。家庭の方針上、私は国公立の大学に通うのが好ましい。卒業後、自分のお金で通信大学に通おうと思っていた。地元の友達は、春から美容専門学校に行って、美容師になるんだと言っていた。
美容師は大変な職業である。だけど、一番身近にいる魔法使いだと思っている。
私は、この先、何をやりたいと思うようになるのだろう。今は漠然と、哲学や地理を勉強したいと思っている。海外に留学もしたい。
アメリカを始め、あちこちで日本人留学生が緊急帰国させられるという話を聞く。海外で進学する予定のあった人達もいるのだ。つくづく、何が起こるか分からない。
未来はいつも流動的だ、と思う。聞いた話によると、人の未来に対する予想の80パーセントは、必ず外れるらしい。残りの20パーセントのうち10パーセントは、「あの花瓶は不安定な場所に置いてあるから、そのうち落ちて割れるだろう」といったような、先に回避できるものだという。
つまり未来への底知れぬ不安のうち、80パーセントはどうせ外れるし、10パーセントは行動に移せるということだ。「人は現象」とはよく言うがその通り、環境ありきの人格であり、未来ありきの計画だ。
そういえば私は、受験生のころどうしても地理がやりたくなって、センター試験の2ヶ月前くらいに、選択科目を日本史から地理に変更したことがある。
地理の知識は殆どなかったのだが、私が地理をやりたい!と言うと、周りの先生や友達がノリノリで協力してくれた。過去問も参考書も貸してもらい、予想に反して不自由ない環境で勉強できた。
なにより独学だったので、テストの点で人から笑われたり怒られたりすることなく、楽しく勉強できた。だいたい、世界地図に海流を書き込んだり、アメリカの地名を覚えたりするのが夢だったのだ。PERICAN FANCLUBのtelepas telepasという曲の歌詞で、「アラスカ育ち寒さには負けない」「フロリダ育ち暑さには負けない」とあるし。なるほどフロリダは赤道に近いな、などと思っていた。
とにかく、何かやりたいと思ったら言ってみるものである。案外強引に、じゃあやろうぜ!と言ってくれる人が現れる。言い続けて、99人に反対されても1人の師匠が現れたならこっちのものである。なんでも始める頃が一番楽しい。
そういえばシムシティという無料ゲームを入れたのだが、始めた頃は楽しかったがだんだん飽きてきた。地理も多分、受験という目標があったから楽しさが続いたんだろうな…とも思う。受験は当分嫌だけどさ。
最近、お腹がすくようになったし、夜になると少し眠くなるようになった。食べ物の匂いがいい匂いに感じた時、すごく感動してちょっと泣いた。色も、くすんだ色が見え辛いというか、青い薄いガラス越しに見ているように見えていたのだが、時々はっきりと鮮やかに見えることがあって驚く。
かなり辛かった頃、幸せになる自分がどうしても想像できなかったし、悲しいことばかりがフラッシュバックしていた。その頃、ふと、鍋の中の白菜とか、えのきや豆腐の匂いがあったことを思い出して、号泣してしまったことがある。ずっと鍋を楽しむ余裕なんてなくて、食べる事はずっと生きることで、色や味があることはずっと忘れていた。そういったものを感じられないことが悲しいと、初めて思った。
ポン酢の中蓋を開けること、夜中に裸足でトイレに行くこと、車を洗うこと。生きることそのものって、そう。人と上手に話すとか、何かのために努力することではないんだな、と思う。
眠れない夜に捧ぐ