ラズベリーとイチゴミルクと。あと、なんだっけ。
買いそびれたものがある。いつも。
欲しくて欲しくて、堪らないものがあって。だけど。棚の間を何度も何度も往復しながら、何度も何度も棚の前で足を止めながら。私は結局手に取らなくて。
いつだって帰り道の中で思う。
あぁ、今日も買いそびれたなぁ、と。
だけど。
そういうものだろうと思う。本当に欲しいものっていうのは、きっと。
手が届くときには、胸のどこかを押さえつけられているようなそんな感触がして、思わず目を逸らしてしまうような。手が届かないときには、胸を締め付けられているようなそんな気がして、思わず後悔してしまうような。
結局ずっと、そのことばかりを考えてしまうような。
眠りを、浅くするような。
きっと、そういうものだ。
いざ手に入ってしまったら、何にもならないんじゃないだろうか、なんて。私はどこか、危惧していて。欲しいことに、本当は理由なんてないんじゃないかと、勘ぐってしまって。
手に入れてしまった、あとが怖くて。
いっそ、皆が持っているから、なんて都合のいい言い訳が出来てしまえばいいのに、なんて思ってしまう。これからに必要だから、なんて手に入れる理由が出来てしまえばいい、なんて。
本当に欲しいものって、そういうものだから。
本当は。そういうものだから、なんて暈して片付けたくなんてないのだけれど。毎回エコバックを用意しながら、買い物メモの一番下に、まるで今思い出したかのように付け加えるのだけれど。
それでも私は。
買いそびれる。
棚の前に五百円玉でも誰かが落としておいてくれていれば。これを使ってしまいたくて、なんて言い訳でもできるのにな、とか言って。棚の下をこっそりと斜め向こうから凝視してみたりなんかして。
通りすがりに値札を確認してみたら、今日はポイント五倍、なんて手書きの几帳面な字で書いてあって、ポイントカードを忘れたことを悔やんでみたりして。持ってきていればよかったな、なんて口先だけで。
帰り道で、きっとこれからも何回だって後悔するのだろうと思う。
あぁ、買いそびれたなぁ、と。私は。
次からは、ポイントカードちゃんと財布に入れていこうかな、なんて。そんなぼやきに、意味なんてなくて。だけど、なくても別に良くて。
そういうものなんだろうと思う。
欲しくて欲しくて堪らないものは、きっと手に入らないから欲しいんじゃなくて。
欲しくて欲しくて堪らないものは。
きっと手に入れない方が美しいんだって。