「ベーシックインカム社員」を始めた理由とその結果
こんにちは。
企業や自治体の事業課題を「関係性の編集」を通じて解決するハンズオン支援事業や、Webメディア/コマース『70Seeds』を通じたスモールビジネス支援事業に取り組んでいます。
前身となる会社の経営権を共同経営者に譲り2017年6月に立ち上げたこの会社や、私のプロフィールについては、こちらの記事をご覧いただけるとうれしいです。
さて、この度noteを始めたのは、上の記事でも言及している「規模の拡大だけを求めるのには無理がある」時代に、事業や組織のあり方を考えていく過程を残しておこうと思ったことがきっかけです。
「適切な価値が適切な相手にとどき、適切な対価をうけとること」
私のミッションでもあるこのテーマを一言で表すと、「小さな営みの時代」となります。そしてそんな時代に、過剰な規模を持つ組織は自らの重さに耐えきれなくなってしまう。
それが「恐竜は死ぬ」ということ。
そんな「小さな営みの時代」を生きる実践者として、私の会社「株式会社am.」が取った施策の1つ目として本稿で紹介するのが、「ベーシックインカム社員」制度です。
きっかけはある社員の申し出でした。
会社を立ち上げて4か月あまり、6人目の正社員として加入したあるメンバーがこんなことを言い出しました。
「もっと地方に関するライティング中心に仕事をしていきたいのでフリーになりたい」
ちょっと考えた私。
そこから出てきたのはこんな提案でした。
「ちょっと準備期間とってみない?」
生まれたばかりの会社ですから、まだまだ彼の力は必要です。
でも、個人の活躍する可能性は最大限応援したい。(それが会社のミッションでもあるし)
そんな思いが生んだ制度を、「ベーシックインカム社員」と(勝手に)名付けました。
しかしこの制度、「個人にとってはいいかもしれないけど会社としては甘いのでは?」そう思う方もいるかもしれません。
でも、そんなことはないのです。
「新しい働きかた」の時代に小さな会社が生きる道
これから、会社が優秀な個人を抱きこむことは難しく、そして双方にとってメリットの薄い時代になると考えています。
「ベーシックインカム社員」は、互いに合理的でありながら、気持ちよく居続けられる(かもしれない)関係性が築ける選択肢なのではないでしょうか。
結婚しなければ離婚もないようなもの、というとわかりやすいかもしれません。(個人的にはハイロウズの「不死身の花」という曲を思い出します)
さて、そんな「ベーシックインカム社員」制度が生まれてから半年、彼はどうなったのでしょうか。
導入から半年経った結果
「ベーシックインカム社員」として半年経った彼は、満を持して独立、6月からフリーライターとなります。
会社から彼へは、今後も一定の業務をお願いしていくのですが、内部事情やビジョンのことを理解している人物だからこそ、単なる受発注の関係ではなく信頼して仕事をできる仲間が増えた、と捉えています。
そして、じつは次の「ベーシックインカム社員」も決まりました。今度は、経験豊富なプロフェッショナルが加入してくれることになったのです。
ここで、この制度の意義がもう一つ生まれました。
育成装置としての「ベーシックインカム社員」
最初の事例となった彼は上の図でいうところの2に、新しく加入したプロは1にあたります。
通常、1の人材を確保しようと思うと、企業はそれなりの対価および採用経費を必要とします。
ところが、この制度だと「おもしろいから」「共感するから」という理由でライトに参画してきてくれる方が一定数いることがわかりました。
なぜなら、そういった方々はお金よりも「かかわりしろ」を求めて仕事をしているから。
そして、そのような方々と一緒に仕事をできることは、既存の社員にとっての成長機会にもつながります。
こうして、成長した社員が独立し、またプロ・ベーシックインカム社員として戻ってきて若手の成長に携わる・・・金銭による関係だけではない「恩送り」の組織が生まれはじめています。
では、この組織に課題はないのでしょうか。
既存社員は本当に必要としているのか?という問い
この制度を導入するには、「ベーシックインカム」の元になる「かかわりしろ」、そして「原資」が必要になります。
そして、何より重要なのは既存社員が「納得するか」。
このあたりは第2、第3の事例の経過をもって、またお伝えしたいなと思っています。
まとめ:今のところ合理的かつ可能性のある取り組み
というわけで、株式会社am.で導入した「ベーシックインカム社員」制度のあらましと、現在の結果について記しました。
「小さな営み」をテーマに、今後もリアルな事例をお届けできればと思います。
次回は、「ベーシックインカム社員」と対になる人材の考え方「Push→Pull→Door人材」についてを予定していますので、よろしければフォローいただけるとうれしいです!
文・イラスト:岡山史興