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【随想】「なぜ日本の国力はここまで落ちてしまったのか」/視点にズレ政策に誤り

 「なぜ日本の国力はここまで落ちてしまったのか」
 新年、本でウェブでお偉い先生方のお話を幾つか拝読いたしました。まあ、共通している点は国力とは経済力を意識されている御様子、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)が落下の一途を辿っていることを気にされているようでございます。では、どうすれば国力が増すのか、あれこれ挙げられてございますけれども、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、の域を出ておりませぬ。言葉尻を捕らえた論戦とて意味ございませぬよ(情けない)。
 因みに、名目国内総生産は、IMF(国際通貨基金)の2023年度の統計に拠れば、
 世界1位 アメリカ 26兆9496億4300万米ドル(150円/ドル換算で約4000兆円)
   2位 中国   17兆7008億9900万米ドル(約2655兆円)
   3位 ドイツ   4兆4298億3800万米ドル(約664兆円)
   4位 日本    4兆2308億6200万米ドル(約634兆円)
   5位 インド   3兆7322億2400万米ドル(約560兆円)
 しかも、第5位のインドで急追しており、日本が5位に転落するのも時間の問題とか。 
 総生産は総支出(需要)、総所得でもございましょうが、生産物だけでなく得体の知れぬサービスも含まれ、人口が多ければそれだけ金額も多くなるものでございますよ(ただし、ドイツは8400万人ほど)。

 経済となれば、まず国民一人当たりがどれほど豊かなのかということを問題にしていただきとう存じます、ねえ。
 因みに、その指標として一人当たりの国民総所得を見れば、世界銀行(World Bank)2022年度の統計で、
 世界第1位 ノルウェイ 118,440ドル(約1776万円)
    9位 アメリカ 77,530ドル(約1162万円)
    18位 ドイツ 65,300ドル(約980万円)
    30位 イタリア 52,470ドル(約787万円)
    32位 韓国 50,730ドル(約760万円)
    36位 日本 48,470ドル(約727万円)
    80位 中国 21,250ドル(約318万円)
となっております。

 経済を論じるにあたって、世の中にはたくさんのデータが出回っております。数字は実態を表わすものであっても、前提条件のある目安に過ぎませぬ。できる限り個人に近い物を選ぶ必要があろうかと存じます。
 鑑みるに、経済が日の出の勢いで伸びていたバブル経済時代、国(企業)は豊かでございましたけれども、個人はちっとも豊かではございませぬでした。これは、社会を支える根底(人の質)が育たなかったということでございます。

 ここでは、個人の力(購買力)、豊かさに直結する実質賃金に触れることにいたします。
 国際社会での比較を試みれば、この30年間実質賃金は低迷を続け、日本の国民は全然豊かになっておりませぬ。

<内閣府「令和4年度 年次経済財政報告」図表>

 見掛けばかりの政治で、賃金が低く待遇も悪い非正規雇用、女性雇用を増やしても消費市場は活性化しませぬ。投資もなく自動化(機械化)もなく労働原価は下がらず賃金の上がる道理がございませぬ。
 さらに、深堀りすれば、賃金から税金(所得税、住民税、固定資産税など)、社会保険料を引いた実質的な手取り(可処分所得)が低下、さらに、消費市場では消費税(意味不明の税金)がございます。

 物価が上がり「企業の利益が増せば」、賃金が物価を上回るように国民の収入を増やすことができ、経済市場が活発になって、さらに企業の利益が増す。この好循環を持続させていくことが大事、とするお偉い先生方のおっしゃり方には、出発点に大きなズレを感じませぬか。

 まず、まず仕事のできる人、生産力(創造力)のある個人の給与を上げる。「国民一人一人が豊かになって」購買力が増す。消費市場が活発化し、物の生産者が利益を上げる。生産力が増し、広く経済市場が活発化する。
 物を作る(創る)生産力が増す(強化する)ことが重要で、これが工業力、経済力、政治力、エネルギー、食糧自給率、延いては防衛力にも、文化、社会福祉にも諸々の分野に経済効果が波及して、所謂、国力が増すことになるのでございます。
 必要となるお金は「信用創造」(銀行が口座に貸し出すことで通貨を作る)を使うべき所(日本銀行、銀行)が使って回るものでございます。
 30年も40年もこうならないのは、国の政策失敗の連続にほかなりませぬ。投資すべきは「人」でございますよ。申し上げるまでもなく、国、組織の力とは「人の質」(人的質、技術力、教育含む)。日本国が弱体化しているのは、政治を含め社会がここを強化することに目を向けていないからでございます。


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