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【和歌】清少納言/『紫式部日記』登場の歌人(3/4)

清少納言(康保3年〈966年〉頃~- 万寿2年〈1025年〉頃)
 父は清原元輔、『万葉集』の読解と『後撰和歌集』の選者を務めた歌人、曽祖父(または祖父)は『古今和歌集』の代表的歌人である清原深養父、夫は藤原斉信の家司橘則光、子は橘則長、後に摂津守藤原棟世と再婚、娘は小馬命婦
 正暦4年(993年)冬頃から長保2年(1000年)まで一条帝の中宮藤原定子に仕え、中宮定子の死後(長保3年(1001年)頃)『枕草子』を書き上げる。

画像:清少納言 人物伝『前賢故實』巻第五
<国立図書館デジタルコレクション> ※クリックで拡大

『清少納言集』
 
日常生活を描写した即興的な歌が多いのが特徴[
 家集『清少納言集』(42首)は自撰でないとされる、平安時代後期から鎌倉時代中期頃に成立か
 『後拾遺和歌集』など勅撰和歌集に15首入集
 「流布本」(31首、内1首は連歌) 宮内庁書陵部蔵
 「異本」(42首) 宮内庁書陵部蔵

 ※以下、和歌引用はウェブから
     現代口語訳:高安城征理 辞書に拠る注釈、太字:本記事の著者

 ≪和歌≫「夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関は許さじ」<『後拾遺集』雑九四〇>
 (夜を閉じ込めて(まだ明けないうちに)、鶏の鳴き真似をしてだまそうとしても、(中国の故事の函谷関(かんこくかん)なら通れるかもしれませんが)この逢坂の関は決して(通すことを)許さないでしょう(お上手言っても、決して逢うことはありませんよ))
 ※「夜を籠(こ)めて」⇒「こめて」とあるのでマ行下二段活用、名詞「夜(よ)」+格助詞「を」+他動詞「こむ」の連用形「こめ」+接続助詞「て」(連用形接続)、夜を押し込んで、閉じ込めて、まだ夜が明けないうちに、の意
 ※「籠(こ)む」
 他動詞 マ行四段活用(ま/み/む/む/め/め)
  
詰め込む、押し込む、の意
  ☞「あまりに人参り集(つど)ひて、たかんなをこみ、稲麻竹葦(たうまちくゐ)のごとし」<平家物語 三 公卿揃>
   ( あまりに人がたくさん参上し集まって、まるで竹の子を詰め込み、稲、麻、竹、葦が密生しているようである)
 他動詞 マ行下二段活用(め/め/む/むる/むれ/めよ)
  
中に入れる、とじこめる、包み隠す、の意
  ☞「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちにこめたりつるものを」<源氏物語 若紫>
   (すずめの子を犬君(=童女の名)が逃がしてしまったの。伏籠の中にとじこめていたのになあ。)
  ☞「心にこめ難くて、言ひおき始めたるなり」<源氏物語 蛍>
   ( 心に包み隠しておくのが難しくて、書きとめ始めたのです。)
 ※「よに」副詞 たいそう、非常に、まったく、〔下に打消の語を伴って〕決して、全然、の意
  ☞「梨(なし)の花、よにすさまじきものにして」<枕草子 木の花は>
   ( 梨の花は、まったくおもしろみのないものとして)
 ※「じ」打消推量の助動詞、不変化型活用(―/―/じ/じ/じ/ー)、~でないであろう、の意、未然形接続
 ※藤原行成(ふじわらのゆきなり)の求愛を、中国の史書『史記』孟嘗君(もうしようくん)伝の故事を巧みに用いながら拒否した歌
  『枕草子』の「頭の弁の、職にまゐり給ひて」の段に、詳しい事情が述べられている。「逢坂の関」には、男女が逢う意をかけている。
 
 ※『枕草子』第百三十六段「頭の弁の、職にまゐり給ひて」
  
「頭の辨の、職にまゐり給ひて、物語などし給ひしに、夜いたうふけぬ。「あす御物忌なるにこもるベければ、丑になりなばあしかりなん」とて、まゐり給ひぬ。」
  ( 藤原行成(ゆきなり)さまが、職(しき)の御曹子(みぞうし)に参上なさって、話などしていらっしゃったが、夜が更けてしまいました。(行成さまは)「明日は宮中の物忌(ものいみ)で、籠もる予定ですので、丑の刻(うしのこく、午前一時から三時)になったら良くないでしょうから」とおっしゃって、参内(さんだい、宮中にあがること)なさいました。

  「つとめて、蔵人所の紙屋紙ひき重ねて、「けふは残りおほかる心地なんする。夜を通して、昔物語もきこえあかさんとせしを、にはとりの声に催されてなん」と、いみじうことおほく書き給ヘる、いとめでたし。御返しに、「いと夜ふかく侍りける鳥の声は、孟嘗君のにや」ときこえたれば、たちかヘり、「『孟嘗君のにはとりは、函谷関を開きて、三千の客わづかに去れり』とあれども、これは逢坂(あふさか)の関なり」とあれば、
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ
 心かしこき関守侍り」ときこゆ。また、たちかヘり、
 逢坂は 人越えぐすき 関なれば 鳥鳴かぬにも あけて待つとか
とありし文どもを、はじめのは、僧都の君、いみじう額をさヘつきて、とり給ひてき。後々のは御前に。」
  (翌朝、蔵人(くろうど)の詰所用の紙を折り重ねて、「今日は物足りない気がします。夜を徹して、昔話などして明かそうと思っていたのに、(丑(うし)ならぬ)鶏の声にせき立てられまして」と、たいそう言葉を尽くして書かれた手紙は、とてもみごとなもの(筆跡)です。(私は)お返事に、「ずいぶん夜更けに鳴いたという鳥の声は、孟嘗君の(食客が鳴きまねをしたというにせの鶏の)ことでしょうか。」と書き申し上げたところ、折り返し、「孟嘗君の鶏は、その鳴き声で函谷関を開くことができ、三千人の食客がかろうじて逃げ去った」と書物に書かれているが、これは(それと違ってあなたと私の)逢坂の関ですよ」とお返事がありましたので、私が、
夜をこめて…(まだ夜が明けないうちに、鶏の鳴きまねでだまそうとしても、函谷関の関守はともかく、あなたと私が逢うという逢坂の関は(通すことを)決して許さないでしょう。
(函谷関の関守のような間抜けではなく)気の利いた関守がおりますよ)と申し上げます。するとまた、折り返し、
 逢坂は 人越えやすき 関なれば 鳥鳴かぬにも あけて待つとか
(逢坂の関は、人の越えやすい関所ですから、(夜明けを告げる)鳥が鳴かない時でも門を開けて来る人を待っているとかいうことです)

と書いてあった手紙などを、最初の手紙は僧都の君(隆円僧都)が、たいそう額(ひたい)をついて懇願まで、持っていかれました。後の手紙は、中宮さまに(差し上げました)。)

  「さて、逢坂の歌はヘされて、返しもえせずなりにき。いとわろし。さて、「その文は、殿上人みな見てしは」とのたまヘば、「まことにおぼしけりと、これにこそ知られぬれ。めでたき事など、人のいひ伝ヘぬは、かひなきわざぞかし。また、見ぐるしきこと散るがわびしければ、御文はいみじう隠して、人につゆ見せ侍らず。御心ざしのほどをくらぶるに、ひとしくこそは」といヘば、「かくものを思ひ知りていふが、なほ人には似ずおぼゆる。『思ひぐまなく、あしうしたり』など、例の女のやうにやいはむとこそ思ひつれ」などいひて、わらひ給ふ。「こはなどて。よろこびをこそきこえめ」などいふ。」
  (ところで、(私は)逢坂の歌には閉口して、返歌も詠めずじまいになりました。まったく困ったものです。(行成さまが)さて「その手紙は殿上人(てんじょうびと、帝に接見できる上級貴族)がみんな見てしまったよ」とおっしゃるので、「(あなたが私のことを)本当に思ってくださっていたのだと、その一言でわかりました。よくできた歌は、人の口から口へ伝わらないのは、つまらないものですから。反対に、みっともない歌は、人目に付くことがつらいことですから、(あなたからの)お手紙は、厳重に隠して、人には少しも見せておりません。(あなたの)お気持ちのほどを(私と)比べますと、(見せる見せないは違っても)同じことになりますね」と言いますと、「そこまで物事を分かって言うのが、やはり他の人とは違って感心させられる。『よくも考えないで、(私の手紙を他人に)見せてしまって』など、並の女のように言うかもしれないと心配していました」などと言ってお笑いになる。「とんでもない。喜び(お礼)を申し上げたいくらいです」などと言う。)

  「まろが文を隠し給ひける、また、なほあはれにうれしきことなりかし。いかに心憂くつらからまし。いまよりも、さを頼みきこえん」などのたまひて、のちに、経房の中将おはして、「頭の辨はいみじうほめ給ふとは知りたりや。一日の文に、ありし事など語り給ふ。おもふ人の人にほめらるるは、いみじううれしき」など、まめまめしうのたまふもをかし。「うれしきこと二つにて、かのほめ給ふなるに、また、おもふ人のうちに侍りけるをなむ」といヘば、「それめづらしう、いまのことのやうにもよろこび給ふかな」などのたまふ。」
  (「私の手紙を隠されたこと、これもまた、やはりしみじみと嬉しいことです。(人目についたら)いかに不快で嫌なことでしょう。これからも、それ(分別)を頼りにしましょう。」などとおっしゃって、その後に、経房(つねふさ)の中将様がおいでになって、「行成さまが、あなたのことをたいそう誉めていらっしゃると知っていましたか。先日の手紙に、起こったことなど(『夜をこめて』の歌など)について話されました。自分の思う人が他の人から誉められるのは、とても嬉しいものです」など、きまじめな顔でおっしゃるのもおもしろいものです。「嬉しいことが二つ重なりまして、あの方が(行成さまが)誉めてくださることに、さらに、(あなたの)思う人の中に入っていたことが。」と言うと、「それ(思う人であると言ったこと)を珍しい、目新しいことのように喜ばれるのですね」などとおっしゃる。)

≪和歌≫「言の葉は つゆかくべくも なかりしを 風にしをると 花を聞くかな」<家集『清少納言集』二>
   (まったく言葉を交わすであろうとも思わなかった、風に木の枝を折って道しるべにしていると(華やかな)花の噂を耳にしますよ)
 ※こうして言葉を交わすとは思いも寄りませんでしたのに、あなたが派手に女心をなびかせているとの噂を耳にしております、の意
 ※「つゆ」副詞、副詞 〔下に打消の語を伴って〕少しも、まったく、の意
  ☞「やがて末まではあらねども、すべてつゆたがふことなかりけり」<枕草子 清涼殿の丑寅のすみの>
   (すぐに下の句まで答えるということはないが、すべてにおいて少しも間違うことがなかった。)
 ※「しをる」他動詞 ラ行四段活用(ら/り/る/る/れ/れ)
   木の枝を折って道しるべとする、の意
  ☞「降る雪にしをりし柴(しば)も埋(うづ)もれて」<山家集 上>
   (降る雪のせいで枝を折って道しるべにした柴も埋もれて)

≪和歌≫「身を知らず 誰かは人を 恨みまし 契らでつらき 心なりせば」<家集『清少納言集』五>
   (身をわきまえずに一体誰が恨んだりするでしょうか、契りも交わしていないのに辛い心をさせたのならば(あなたに恨まれるようなことはしておりません)
 ※「恨(うら)む」他動詞 マ行上二段活用(み/み/む/むる/むれ/みよ)
   恨みに思う、憎く思う、恨み言を言う、の意
  ☞「久しくおとづれぬころ、いかばかりうらむらんと我が怠り思ひ知られて」<徒然草 三六>
   (長い間訪問しないでいたころ、(女が)どれほど私を恨みに思っていることだろうかと自分の怠惰を身にしみて知らされて)
  ☞「花散らす 風の宿りは たれか知る 我に教へよ 行きてうらみむ」<古今集 春下>
   ( 桜の花を散らす風の宿をだれか知っているだろうか、私に教えてくれ、行って恨み言を言おう)
 ※「かは」係助詞([疑問]~か[反語]~か、いや、~でない)連体形止め
 ※「まし」助動詞、特殊型活用((ませ)ましか/ー/まし/まし/ましか/ー)
  [反実仮想]もし~であったら~であろうに [ためらいの意志]~しようかしら、の意、未然形接続
 ※「つらし」形容詞 ク活用((く)、から/く、かり/し/き、かる/けれ/かれ)
   薄情である、冷淡である、つれない、たえがたい、苦痛である、の意
  ☞「いとはつらく見ゆれど、志はせむとす」<土佐日記 二・一六>
  ((留守番の人は)とても薄情にみえるけれど、お礼の贈り物はしようと思う。)
  ☞「命長さのいとつらう思ひ給(たま)へ知らるるに」<源氏物語 桐壺>
   (命を長らえていることが、とてもたえがたく思われますのにつけても) ⇒「つらう」はウ音便。
 ※「で」〔打消の接続〕~ないで、~ずに、の意、未然形接続
  ☞「さては、扇のにはあらで、くらげのななり」<枕草子 中納言まゐり給ひて>
   (それでは、扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)であるようです。)
 【参考】「で」
 中古以降に見られる単語、語源は、「にて」(打消の助動詞「ず」の古い連用形「に」+接続助詞「て」)の変化したものとも、「ずて」(打消の助動詞「ず」の連用形+接続助詞「て」)の変化したものともいわれる。

 ※「せ-ば」連語、過去の助動詞「き」の未然形「せ」+接続助詞「ば」(順接の仮定条件)、もし~ならば、~したら、の意
  ⇒多くの場合、下に反実仮想の助動詞「まし」を伴い、事実と反する事柄や実現しそうもないことを仮定し、その上で推量することを表わす。
  ⇒「せば」の形には、サ変の未然形「せ」+接続助詞「ば」の場合もある

≪和歌≫「恋しさに まだ夜を籠めて 出でたれば 尋ねぞ来たる 鞍馬山まで」<家集『清少納言集』一一>
   (恋しくてまだ夜の暗いうちに外へ出たら、(なんとあなたが)訪ねて来てくれたのですね、鞍馬山まで)
 ※「夜を籠(こ)めて」⇒「こめて」とあるのでマ行下二段活用、名詞「夜(よ)」+格助詞「を」+他動詞「こむ」の連用形「こめ」+接続助詞「て」(連用形接続)、夜を押し込んで、閉じ込めて、まだ夜が明けないうちに、の意
 ※「籠(こ)む」他動詞 マ行下二段活用(め/め/む/むる/むれ/めよ)
   
中に入れる、とじこめる、包み隠す、の意
  ☞「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちにこめたりつるものを」<源氏物語 若紫>
  (すずめの子を犬君(=童女の名)が逃がしてしまったの。伏籠の中にとじこめていたのになあ。)

≪和歌≫「いつしかと 花のこずゑは 遥かにて 空にあらしの吹くをこそ待て」<家集『清少納言集』16>
  (いつだろうかと、咲く盛りを楽しみにしている花の梢は、はるか手の届かないところ。それで私は、花を吹き寄せる嵐頼みという心境です。あてにせずに待つしかありません)

≪和歌≫「たよりある 風もや吹くと 松島に 寄せて久しき 海人のはし舟」<玉葉和歌集一二五二>
   (頼みの風が吹くだろうかと(お目にかかる機会が来るだろうかと)、松島(あなた)に長い間お慕いして待ち続けている、切ない海人の小舟(私)なのです)

≪和歌≫「これを見よ 上はつれなき 夏草も 下はかくこそ 思ひ乱るれ」<家集『清少納言集』一九、『続千載集 恋一』、『万代集 恋三』 >
   (これをご覧なさい、うわべは何事もなくて(平気な様子の)夏草も、その下の方は(ほんとうは)このように思い乱れているのです(色が変わり乱れているのです)
 ※これが私の姿です、という思い
 ※「つれなし」形容詞ク 活用((く)、から/く、かり/し/き、かる/けれ/かれ)
   素知らぬふうだ、平然としている、冷淡だ、ままならない、何事もない、変わらない、の意
  ☞「いとつれなく、なにとも思ひたらぬさまにて、たゆめ過ぐすも、またをかし」<枕草子 うれしきもの>
   ( まったく素知らぬふうで、なんとも思っていないようすで、(相手を)油断させとおすのも、また興味深い。)
  ☞「昔、男、つれなかりける女にいひやりける」<伊勢物語 五四>
   (昔、男が冷淡だった女に言い送った(歌))
  ☞「かへすがへす、つれなき命にも侍(はべ)るかな」<源氏物語 桐壺>
   ( 本当にまあ、ままならない私の命でございますね。)
  ☞「雪の山つれなくて年も返りぬ」<枕草子 職の御曹司におはしますころ、西の廂にて>
   ( 雪の山は変わらずに年も改まってしまった。)

≪和歌≫「あらたまる しるしもなくて 思ほゆる 古りにし世のみ 恋ひらるるかな」<家集『清少納言集』三四>
   ((世の中は)新しく変わる気配もなく、(私はただ懐かしく)思われるあの過ぎ去った時代ばかりが恋しくてならないのです)
 ※「(思)ほゆ」他動詞 ヤ行下二段活用(え/え/ゆ/ゆる/ゆれ/えよ}
  (自然に)思われる、の意

≪和歌≫「風のまに 散る淡雪の はかなくて ところどころに 降るぞわびしき」<家集『清少納言集』三吾>
   (風に吹くときに散る淡雪のように儚くて(心細くて)、(皆が)あちらこちらに離れていくことこそ、本当に侘しいものです)

≪和歌≫「忘らるる 身のことわりと 知りながら 思ひあへぬは 涙なりけり」<家集『清少納言集』一>
   ((あなたに)忘れられてしまう我が身に理由があると分かっていながら、(それでも)恋い慕い合えないことが(私の)涙なのでした)
 ※「ことわり」名詞
   道理、理屈、説明、理由、の意
  ☞「かほどのことわり、たれかは思ひよらざらんなれども」<徒然草 四一>
  ((無常という)この程度の道理は、だれでも思いつかないはずはないのだが)
  ☞「中将は、このことわりを聞き果てむと」<源氏物語 帚木>
   ( 頭の中将はこの(女性に関する)説明を最後まで聞こうと)
 ※「思(おも)ひあふ」
  他動詞 ハ行四段活用(は/ひ/ふ/ふ/へ/へ)
   一様に思う、恋い慕い合う、考えが一致する、の意
   ☞「さぶらふ人々も…心ぼそくおもひあへり」<源氏物語 須磨>
    (侍女たちも…心細いと一様に思っていた。)
  自動詞 ハ行四段活用(は/ひ/ふ/ふ/へ/へ)
   ☞「かたみにおもひあはぬにしもあらじと見えしかど」<右京大夫集>
    (互いに恋い慕い合っていないのでもあるまいと見えたが)

≪和歌≫「憂き身をば やるべき方も なきものを いづくと知りて 出ずる涙ぞ」<家集『清少納言集』三九、『万代集 恋五』>
   (つらいことの多いこの身をどうするべきかの方法もないのに、どこに行けばよいと知って流れ出てくる涙なのであろうか)

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