見出し画像

秋田県の市役所にいる、飛び出した土器

どこにでもあるわけではない。それは秋田県由利本荘市の西目総合支所という施設にある。
そもそもはツイッター上でその情報を見たのが発端だった。考古館でも博物館でも郷土館でもない場所に土器か…。まあまったく無いわけではないかなと思いつつ、その写真を見ると仰け反るくらい飛び出た土器。これはけっこうすごいやつかも。そんなこんなで秋田の縄文旅の予定に由利本荘市を組み込んだ次第だ。
大曲で新幹線を降りレンタカーを借りる。由利本荘市に行く前に立ち寄った県の埋蔵文化財センターにはこんな地図があった。秋田の埋蔵文化財マップ、これはなるほど便利だ。みなさん秋田の縄文を見に行く際は活用してみては。

画像1


ちなみにこの地図には載っていないが、埋文センターでここも縄文のオススメの場所として紹介された「仁賀保勤労青少年ホーム」はひとつも縄文の資料がないという完全な「ガセネタ」だったんだけど、この地図はちゃんとしているだろう。縄文の資料はどこに何があるのかが、専門家でもなかなかわからないという問題があるのでこういう地図、大歓迎です。

1時間と少し。車で由利本荘市に向かう。何だかんだ閉館の時間が迫っているので地図を見ると途中にある郷土館はスルーして先に向かう。
順調に由利本荘市西目総合支所。建物はまだ新しい。どう見ても普通の市役所だが…中に入るともうすでに土器がそこにあった。

画像3

画像4


これはすごい。本当に飛び出しまくっている。土器型式としては大木9式というくくりの土器なのだが、それにしては立体的すぎるし(大木9はそこまで立体的なものは多くない、さらに言えば秋田の大木はややおとなしい印象があった)、あんまり見たことのないタイプとも言える。口縁部が胴部の2倍という無茶な造形なのに思ったより安定感があって、作者の造形的なセンスを感じる。口縁部や胴部の文様はなんとなくミミズクのような顔にも見えるのは多分意図的だろう。ひとしきり写真を撮ったり眺めたりしたあとに、担当の方にも少しだけお話を聞いてみた。
こちらの土器はここから近くの根子ノ沢遺跡という場所から出土したものですが、きちんと発掘されたものというよりは畑仕事で見つかったもので、遺跡自体もそれほどまだ調査されていないということ、しばらくはこの場所(西目総合支所)で展示されるとのことを教えていただいた。
とはいえ、こちらは決して展示施設では無いので、いつまでここで見れるかはわからないそう、もし気になった方は早めに見に行ってみてください。

実は気になっている土器がもう一つあった。埋文センターの文化財マップににはこの土器と一緒に別の土器の写真が載っていた。これについても聞いてみたところ、特別に見せてもらえることに、ありがとうございます。

画像2

画像5

画像6

この土器も根子ノ沢遺跡の土器で、収蔵施設に置かれ、今はどこにも展示していない。やはり大木9式の土器だけど、支所にあるものとは違った意味で立体的だ。しかも一部には赤彩が残っている。もし大木式土器でサッカー日本代表を編成するなら、これもまたぜひ選出したい土器だ。

下の写真の土器は埋蔵文化財センターに展示されていた大木9式、いかに根子ノ沢の2つの土器が劇画調なのかわかるだろう。とはいえこれはこれで可愛いやつだ。

画像7


根子ノ沢遺跡にも行ってみた。もちろん何もなかった。立て札だけがそこにあり、充分に風の歌が聴こえたのは言うまでもないだろう。

画像8



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?