届け!21世紀のナイチンゲールたちへ ~ほんとはみんな読んでない「看護覚え書」~
フローレンス・ナイチンゲールが、著書『Notes On Nursing(看護覚え書)』を出版したのは、今から160年以上前のこと。それが現代でも、看護師の卵たちに読み継がれています。絶対良いこと書いてある。だって「名著」だし。
しかし!!
読破できた人、ほんとは多くないんじゃない?
そもそも読みにくくない?
それなら現役看護師の2人で、もう一度読んでみよう。
『看護覚え書』にある”看護の原則”は、現代の看護の現場でどこに散りばめられているかな?
2人で探してみよう。
このような動機から、看護師の奈津美、侑子の2人で、『看護覚え書』を元ネタに対談企画を始めました。
そもそも「療養中の生活を支えること」が仕事だったのに、いつの間にか看護師ができる医療行為はどんどん増えています。そして医療職種が増えていくにつれて、多職種へ連絡・調整するという仕事も…。
日々の忙しさ、業務量の多さに疲弊して、「看護ってなんなんだろう?」とわからなくなっていませんか?
一度、「看護の原則」を一緒に見直しましょう。
悩める21世紀のナイチンゲールたちが、自分の看護と向き合うキッカケのひとつに、この対談が役に立てれば幸いです。
★看護とは
療養環境を適切に整えて、患者の生命力の消耗を最小限にするよう整えることを意味する
私はほかに良い言葉がないので看護という言葉を使う。看護とはこれまで、せいぜい薬をのませたり湿布剤を貼ったりすること、その程度の意味に限られてきている。しかし、看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また食事内容を適切に選択し適切に与えることーこういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味するべきである。
(侑子)ナイチンゲールははじめに、「看護とは」について書いてるやん?
看護は健康を保つためのものだって書いてて、もうここが核心やんね。
(奈津美)保助看法では、看護は「診療の補助と療養上の世話」っていうけど、もう全然違うし、そんな言葉には収まりきってませんからって感じ。
(侑子)その言葉があるから看護師が混乱するんよ、っておもう。「看護ってどういう仕事なんやろ?」って、看護師でありながら結構疑問だったこともあって。病院にいてたら、薬の管理とかが多いやん?治療してるし。でもこれ読んでたら、暖かさとか、光とか静かさとか清潔さとか、お食事を整えることって書いてあって。なんや、全然違うやんって。
(奈津美)なんかさ、いろんな専門職が出てきたから、その間を縫うのが看護師で橋渡し的な業務がすごい増えてる感じがするけど、実際は、患者さんの生命力を最大限にさせることが私たちの仕事なんじゃないのかなって思うんだよね。
(侑子)うんうん。看護師本来の使命とは異なることが多すぎるから、看護師の「看護とは?」っていう混乱が生まれてる。病気は苦痛を伴うけど、適切なケアが行われれば、それと付き合っていくことだってできるし、自然回復することを助けるのが私たちの仕事であって、別に薬をぶち込むことが私たちの仕事ではないよね(笑)
(奈津美)ほんとだよね(笑)そこじゃないのに。
でも実際のところそういうことが業務にされてない?ほんとうに看護師がやるべきことは、なんとなく「+α」っていうカウントになっている気がしていて。できればやってね、みたいな。
でも本当にやらなきゃいけないのは「そっち」なんだよね。
(侑子)そうやんね。最近在宅医療が浸透しつつあると思うんやけど、在宅の現場で働くようになった看護師たちが、「これが看護師本来のあるべき姿だ」って喜ぶ声をよく聞くようになったわ。
「病院は治療るところ」「在宅は生活するところ」っていう性質の異なる場だから、どっちが看護師本来の姿なのかっていうのは、そもそも比較するものではないとは思うけど。
それでも、これ(看護覚え書)読んでたら、私も訪問看護してるから身にしみてわかるっていうか。確かに、在宅では新鮮な空気とか光とか、生活を整えるっていうところにより重点を置いてるなっておもった。在宅のほうが、薬どうこうとかの調整はタイムリーでやる場面が少ないし、生活を整えるところの優先順位が高い点では、「看護本来のあるべき姿」っていうのはわかるなって思った。やっぱり治療の最前線にいると、生死をさまよう場面も少なくないから、その他でやらないといけないことみたいなのに重きが置かれてしまうしね。
(奈津美)そうそう、それで患者さんがなんとなく置き去りというか、本当に患者さんが主役になっているのかなって疑問に思うこともあるなぁ。患者さんというよりは、治療というものが主役になっている気がする。患者さんの生活もおいといて、患者さんの好みも置いといて、治療優先!みたいな。そのために、あなたこれ我慢しなさいみたいな。
でも本当に中心にあるべきは患者さんなはずなのに。治療をサポートしているスタッフが多いよね。
(侑子)そう思う。なんかさ、治療をするために我慢する、っていうこと自体が、なんかもう回復を妨げていると思えて仕方がない。
(奈津美)ほんとそれ!!生命力奪ってるよって思う!!
(侑子)ね、ストレスって本当に病気の根源だと思う。
私の友達が、ストレスで消化器官のあちこちが荒れちゃったことがあって。
(奈津美)やばいね、ストレスが病気つくっちゃってる。
(侑子)ほんまに。まさにストレスが病気造ってた。でもストレスの根源を断ち切ったら、ぴたっとなくなったって言ってて。ストレスが体に及ぼす悪影響ってすごいよね。
(奈津美)そういうのをさ、看護師がケアしていくべきなんだろうにね。もっと、本当の看護ってなんだろって、看護覚え書を読みながら見つめ直してたいよね。
対談をシリーズでお届けしていきます
これから「換気と加温」「住居と健康」など、看護覚え書の項目に沿って対談を進めていきます。看護覚え書に書かれている『看護の原則』をもとに、今の現場でできることを探っていきます。
ぜひ更新を楽しみにしていてください。
<対談者プロフィール>
【奈津美】
’92年生まれ。ドラマの影響で看護の道へ進むことを決意。しかし臨床1年目に一度挫折を経験する。「やっぱり看護が好きだ」と気づき、現在は病棟の副主任看護師を務めている。たくさん泣いて転んで落ちこんだからこそ、人の生きがい、人間関係、死に方と生き方を大切に思うようになる。看護師を癒す看護師でありたい。たくさんの人の人生を、わくわくするものにしたい。食べること、歌うこと、ビールと日本酒が大好き。
【侑子】
’92年生まれ。現役小児訪問看護師、兼ベビーマッサージ講師。人の目を気にして自分の想いと葛藤し、きゅうくつな幼少期~思春期を過ごしていた。生きづらさから脱したくて「私を知りたい」と、小児領域に飛び込む。今は、自分らしくのびのび生きることを大切に、生きている。「子ども・家族と心を通わす看護」がモットー。日々子どもの”生きる”をサポートしている。山と旅、新しい価値観に触れることが大好き。山登りは、ハードさよりもゆったり景色を眺める縦走が好み。発酵食、保存食づくりにハマってます。
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