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喫茶店でおばぁちゃんとホットサンドを作った話
今日は、午後から地元の友人と映画を観る約束をしていた。僕は予定よりも2時間ほど早く、映画館がある場所に行き、近くの飲食店で昼食を取り、読書をして友達を待とういう計画を立てていた。
映画館がある付近を、ぷらぷらと歩きながら、入れそうな飲食店を散策していると小洒落た喫茶店を見つけた。ランチセット540円というお得な、のぼりが目に入ったので、僕は迷うことなく入店した。
内観は、ノスタルジーを感じさせるアンティークな雰囲気で、古めかしいポスターやら看板やらが飾られていた。平日の昼間だったためか、客は僕1人だった。厨房まではよく見えなかったが、おばぁちゃんが1人で切り盛りしているようだった。
ランチセットを頼むつもりであったがなんとなくメニューを見ていると、美味しそうなホットサンドが目についた。
理由は、一人暮らしを始めて、朝食に食パンを毎日食べるようになり、ホットサンドメーカーなるものを買えば、ワンラン上のおしゃれな朝を過ごすことができるのではないか、という気持ちがずっと思考の片隅に鎮座していたからである。その思いは日に日に強くなり、ホットサンドメーカーの種類や値段を調べるほどになっていた。
ホットサンド食べたいなと思いながら、ランチセットを探していると、ホットサンドにミニサラダ、コーヒーが付いたセットがランチセットとして提供されていたのである。自分の豪運に感謝しながら、私はその540円のランチセットを注文した。
程なくして、僕のホカホカのホットサンドが運ばれてきた。
ピザ風のホットサンドだったらしく、中にはチーズとピーマン、トマト、ハムが入っていた。とても安く提供されていたため、味には期待していなかったが、カリカリのパンに、アツアツの具材がたっぷりと入っていて、非常に美味しかった。
僕は5分足らずで、ホットサンドとサラダを食べ終え読書をしていた。するとそこへ、おばぁちゃんが食後のコーヒーを持ってきてくれた。
おばぁちゃんは僕の目の前に、可愛いカップに入ったコーヒーを差し出した。そして、話し相手が欲しかったのか、僕と正面の椅子を引き、座ってなにやら語り始めた。
「この店はね、大正時代からあるんだよ」
「この店に飾られているポスターと看板は主人が趣味で集めたものなんだよ」
「ところどころに飾ってある白い猫の写真は、私が飼っている猫なんだよ。写真屋さんに頼んで撮ってもらったんだよ」
など、たくさんこの店に関わることを、話してくれた。
多少興味はあったし、面白かったので、大きめのリアクションをとりながら、丁寧な相槌を打っていると、それが気持ちよかったらしく、おばぁちゃんは熱量そのままに話し続けた。流石に店の話が尽きたのか、唐突に
「おばぁちゃんは何歳でしょう?」
と、質問してきた。僕はこの手の質問が苦手である。小さい頃から、テレビで取り上げられている50代の美魔女が50代に見えてしまうからである。相手が気持ちい塩梅で、外すことができないのである。だから、最近は開き直って、本気で当てに行くようにしている。
僕は、手と首のシワや、声のトーン、姿勢から年齢を割り出した。
「んー、おばぁちゃんは69歳でしょ」
と、自信満々に答えた。
すると、おばぁちゃんは、ぱぁぁ〜っと笑顔になって
「69歳かぁ、おばぁちゃんはね、78歳です」
と、嬉しそうに答えた。僕は生まれて初めて、この手の質問に大正解した。気を良くしたおばぁちゃんは、その後、10分程度、淀みなく美の秘訣を僕に教えてくれた。
なんとなくの話の流れで、僕の一人暮らしの話になった。僕のだらしない一人暮らしの話を、若干引き気味に聞いていたおばぁちゃんが、
「朝ごはんは、なに食べてるの?」
と質問してきた。僕はついさっき食べたホットサンドがとても美味しく、ホットサンドに対する興味がますます湧いていたので
「朝はだいたい食パンに目玉焼きを乗せて食べてます。最近、ホットサンドメーカーを買うか迷ってるんですよ」
と答えた。すると、おばぁちゃんが
「つくってみっけ?」
と、言ってきた。内心、ホットサンドくらい体験せずとも、なんとなく作れるけどなぁと思ったが、そんなつまらない自分を心の奥の方にしまって
「いいんですか、ぜひ、作ってみたいです!」
と興味ありげに答えた。そして、おばぁちゃんに連れられて、厨房に向かった。
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