良い障壁、悪い障壁『ヒーリングっど♥プリキュア』
アニメを観ていると、物語を展開させるためだけに存在するキャラクターを目にすることがある。
例を挙げると「主人公の邪魔をしたいだけのキャラクター」で、彼ら彼女らは他人への敵意が自己の大半を占め、主人公に悪口を浴びせ、行動を妨害することこそ自分の生きがいかのように描かれている。
このようなキャラクターが視聴中に高い頻度で登場すると、私は食傷気味でうんざりした気持ちになる。
そうはいっても、主人公に立ちはだかる障壁は物語に必要不可欠だ。
主人公に戦いを挑んでくる敵キャラクターから、味方なのに意見を異にする存在まで。
「主人公の邪魔をしたいだけのキャラクター」は得てして受け入れがたい存在だが、なぜ主人公と立場や主張を異にすることになってしまったのか、理由が上手に描かれると、そのキャラクターに対して感情移入してしまったりする。
今回はそんな主人公の障壁となったキャラクターについて、最近観ているアニメの中で良いなと思えたものがあったので書きたいと思います。
『ヒーリングっど♥プリキュア』のラビリン
今年の2月よりスタートしたプリキュアシリーズ17作目である『ヒーリングっど♥プリキュア』。
地球を病気で侵略しようとする悪の「ビョーゲンズ」に対し、「お手当て」という形で対抗するプリキュアたちの活躍が描かれている。
1話でプリキュアとして覚醒した主人公の花寺のどか/キュアグレース。しかし彼女には入院していた過去があり、その影響もあってか運動が苦手という弱点がある。
2話「パートナー解消!?わたしじゃダメなの?」では、主人公のパートナー妖精となったラビリンが、体育の授業や部活動体験で失敗ばかりするのどかの姿に失望し、コンビの解消を告げてしまう。
話の展開を考えれば、敵キャラクターと頑張って戦うのどかの姿を見て、ラビリンが考えを改める、という流れがその後のお約束だし、私もそうなると思っていた。
だが、今回の話は戦闘に入る前、ラビリンがコンビ解消の理由を吐露するシーンが描かれていた。
コンビ解消を告げ、のどかの前から立ち去ったラビリン。
夕焼けに染まる展望台の上でペギタン(妖精、3話で沢泉ちゆ/キュアフォンテーヌのパートナーとなる)がラビリンに話しかける。
ペギタン「自分でパートナーに選んでおいて、あれはひどいペエ」
ラビリン「わかってるラビ」
ペギタン「じゃあ、のどかに謝るペエ」
ラビリン「謝るけど、パートナーは駄目ラビ」
ペギタン「どうしてペエ?」
ラビリン「だって、危ないラビ。ただでさえビョーゲンズの浄化は危険ラビ。なのにあんなどんくさかったら、もっともっと危ないラビ」
ペギタン「ラビリン……」
ラビリン「ラビリンだってまだ見習いラビ。せっかく勇気を出してくれた優しいのどかを危ない目に会わせちゃったら……」
ラビリンはのどかのことを思い、そしてパートナーとしての力が不足している自分を認識しているからこそ、コンビを解消しようと思い至ったのだ。
主人公の障壁となった理由を描くことで、そのままでは視聴者に悪い印象を与えそうなキャラクターに対しても感情移入を呼び起こさせ、話の質を向上させている。
ちなみに私は2010年の『ハートキャッチプリキュア!』からプリキュア視聴を始め、過去作含め全て視聴済みなのだが、それゆえ設定や話の展開に既視感を覚えることがあったりする。
しかし、この記事で取り上げたような観ていて思わず唸るようなストーリーが放映されることもあるので、毎週欠かさず視聴している。
現在youtubeの公式チャンネルにて3月31日まで『ヒーリングっど♥プリキュア』の1話と2話が配信されているので、気になった方は観ていただければと思います。
その後、のどかとラビリンが和解するシーンも良かったので是非。
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