劇パト2を観てきて

「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」を観に行ってきた。
90年代の名作ロボットアニメ映画として取り上げられるイメージがある本作だけど、自分にとっては正直なところ「凄い作品」であって、「好きな作品」ではなかった。
見どころは多い。作戦指揮所と戦闘機パイロットの交信を軸に展開される幻の空爆はスリリングだし、ラストのイングラムの戦闘シーンはパトレイバーファンを満足させるには十分すぎる出来だ。

でも、昔の自分は、荒川の「嘘の平和と真実の戦争」の話を処理することができなかったし、南雲が柘植のもとに寄り添うラストにはどんな反応を示せば良いのかわからなかった。

作品に対する立ち位置を決めきれない状態で観に行った劇パト2の4DXだったけど、今までで一番作品を楽しめたと思うし、劇パト2が「凄い作品」から「好きな作品」に切り替わりつつあるように思えた。

種を明かせば映画館の大画面と大音響で心の琴線が騙されたということなのかもしれない。
でも、映画館の暗闇は作品に意識を集中させる効果があると思うし、それによりこの作品が持つ魅力を見いだせたとも言えるのではないか。
同じお金と時間を支払うのなら、例え偽物の感情だとしても楽しめたほうがいいのだ。

南雲しのぶについて

劇パト2の中で自分が一番好きなシーンなのが南雲と柘植の再開シーンだ。
雪が降る東京の水路をボートで進む南雲、無表情のまま言葉も発さない彼女の様子は柘植との過去を振り返っているようで、もの悲しい音楽(調べたら「With Love」という曲名らしい)も相まって印象的なシーンの一つになっている。

本作の南雲しのぶというキャラクターは生々しい。
彼女がこれまで持つ「才女」「職務に忠実」「特車二課に頭を悩ませる苦労人」という要素の中に「柘植との不倫の過去」という傷が一つあらわになるだけで、フィクションの「頼れる隊長/上司キャラクター」からどこにでもいる「一人の人間」に堕とすことに成功しているのではないか。

南雲しのぶも自分たちと同じ人間だと気づけたから、劇パト2を「好きな作品」だと位置づけられるきっかけが生まれたし、最後に柘植を選んだ彼女の非論理的で感情的な選択も少し理解できるようになったと思う。

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