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刑務所は0円生活【食事編】

刑務所は生活費が一切掛からない。
衣食住の全てが「0円」なのだ。
出所時に作業報奨金から差し引かれることもない。
後日、税金のような形で請求されることもない。
本日はその中でも、「食」に注目していきたい。


食事の回数

食事は、朝・昼・夕、の3回供与される。
朝食・・・7時頃
昼食・・・12時頃
夕食・・・17時頃
起床時間が6:30で、就寝時間が21:00の生活なので、
世間一般の常識で言えば早いが、妥当な時間なのである。

①食事の量

これは法務省の訓令で定められている。
主食の量は、
A.仕事量
B.身長 この2点に応じて決まる。

A.を分かりやすく言うと、「刑務内容」である。
成人男子の場合、
立ち仕事はA食(1600kcal)、
座り仕事はB食(1300kcal)、
居室で過ごす人はC食(1200kcal)となる。
B.は、身長180㎝以上の場合は加算される仕組みとなる。
185cm以上、190cm以上もある。

ただ、この量はあくまでも「主食」である。
なので、背が高い人は主食のごはんやパンが多いのだ。
よって、副食(おかず)は全員同一となる。
お分かりの通り、おかずで差をつけるとトラブルになるからだ。
摂取カロリーで言えば、1020 kcalが基準である。

②食事の内容

まずは主食となる「ごはん」だ。
勿論、高価な白米ではない。【麦飯】である。
これもちゃんと定められている。

「主食は麦飯で、米対麦が7対3であること」
「米は玄米を購入し、精米の搗精(とうせい)率は0.93~0.94、
 つまり1㎏の玄米を出来上がり量930~940gに精米すること」。
なので、出所した後に食べた白飯は、舌がピリピリするほど
美味しかった記憶がある。これは元受刑者あるあるだと思う。

ただ、これも考えられていて、栄養バランスを考えて麦飯が
採用されている。歴史に詳しい人ならもうお気づきかもしれない。
そう、脚気防止の観点から麦飯が採用されているのだ。

③朝食は軽め

ごはんの他に、味噌汁と副菜2品。
副菜と表現したが、実際はごはんが進むお供的なおかずだ。
例に挙げてみよう。
 月曜:きな粉、きゅうり漬け
 火曜:ひじき炒め、練り梅
 水曜:味付海苔、切り干し大根
こんな感じだ。
そして大切なのが、一人ひとりに分けられている状態で供与
されるということだ。
きな粉も味付海苔も小袋に分けられているし、その他のおかずも
小さなお皿(醤油皿ぐらい)に分けられている。
言わずもがな、受刑者同士のトラブルを避けるためだ。
そして、朝食を食べるスピードは半端ではない。

④昼食は工場で食べる(平日)

ごはんの量は3食通して変わらない。
昼はおかずが3品となる。
メイン1品と副菜2品が通常の献立である。
私のいた施設では、それぞれのお皿が独立していた。
他の施設では1枚の大きめのお皿に3品すべて載せる
プレートタイプもあるようだ。

平日は工場ごとで食べるため、給食のような大きな
保温バットに入った状態で届き、配膳係が全員分を
取り分けていく。
ただ、列を作ってもらうような形ではない。
事前に分けておいて、机に並べていくのだ。
この際も「刑務所あるある」がある。
配膳係がつまみ食いをしたり、えこひいきをしてしまうのだ。
これを刑務所の違反行為で【不正配食】と呼ぶ。
元々、配膳係の任命は職員がその受刑者の刑務態度や行状を
考えているだが、所詮はポンコツの集まりなので、なかなか
期待通りにはいかない。
また、受刑者の楽しみの中で食事はトップクラスなので、
中には大好物で心が揺らいでしまうのかもしれない。
【違反行為や罰則】については、また後日お話しするので、
食事の話に戻りたいと思う。

取り分けた食事が、そのまま受刑者に供与されるのではない。
ここで、職員のチェックが入る。
全員に均等に盛り付けられているかを確認するのだ。
細かい職員は、必ずと言っていいほどトングで調整する。
これを経て、昼食の準備が完了するのだ。

昼食の喫食は、職員の
「食事始めっ!」
という、掛け声でスタートする。
食べるスピードは、朝食よりはゆっくりだが、
それでも世間一般とはかけ離れたほど早い。
そして、全員が食べ終わるまで一言も話してはいけない。
職員が常時監視しているので、誰も話そうとしない。
これこそ、THE刑務所、といった光景であろう。
食べながら話す、穏やかな食事の風景はそこにはない。
まるで、動物が餌を無心で食べる動物園のような光景だ。

⑤夕食は居室で食べる

配食係が各階で指名されている。
この者たちが各居室に配膳していく。
配膳係の仕事内容は後日記載しようと思う。

食事の内容は、昼食同様主食と3品が普通だ。
夕食は取り分けたりすることはない。
配膳する時間や場所の兼ね合いがある為、
全員分がお皿に取り分けられた状態で用意される。

とにかく、食事中は一切の講談が禁じられている。
ただ、少しは食事の話をしたくなったりもする。
工場で食べる昼食とは違い、職員は廊下を巡回しているため、
多少話をする者もいるし、バレないように食事を分ける者もいる。
ただ、こういう者は常習者の為、職員もある程度気にしている。
その結果、【調査・懲罰】を受ける者がみつかるのだ。

食べるスピードは、昼食よりも若干遅くなる。
それでも、やはり早い。
「早飯と早糞は受刑者なら当然」と、称する職員もいた。

全員が食べ終わると、食器をまとめて配膳係が回収する。


食事は受刑者の楽しみ

受刑者にとって、食事は何よりの楽しみである。
自由がない暮らし、楽しみが限られる暮らし。
その中で、「食べる」という行為は、何より幸せだ。

出所すると、いつでもどこでも、そして何でも食べられるので
食事に対する喜びが少し薄れたような気もする。
それほど、刑務所に居ると特別な時間だった。

この文章を書きながら、食に対する感謝や喜びを
私自身が考えさせられる結果となった。




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