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変革の邪魔をする「現状維持バイアス」6つの例

 今回は病院改革に関する僕の記事に寄せられた反論記事(上記のもの)への返信になる。考える中、6つの現状維持バイアスが明らかになった。これは特にリベラルな人には保守派との討論上の有効なシールドになるものであり、お役立ち情報として記しておきたい。

 先に列挙すれば、1:現状追認論 2:被害者擁護を盾にした責任回避 3:ターゲットすり替え 4:体制から個人への責任転嫁 5:体制変革の後回し論 6:リベラル派への悪魔化になる。

 一読して思うのは、僕が先の記事で書いた現状維持派がよく使う「煙に巻く論法」である。物知り情報をられつするも、論旨自体は不明確で弱いというもの。根本的には問題をムダに複雑化して、争点をアイマイにし、現状維持を図っているものだ。

 そこには後述してゆく現状維持バイアスが多々ある。

 全般的には「すでに世の中がそうなっているんだからしょうがない」という1つ目のバイアス・現状追認論がある。これは改革議論においては改革自体を排除するため論外になる。その元では何も変わらないのだ。

 ただ「病院を悪者にするな」という趣旨のタイトルには共感する。コロナ禍で民間病院も医師も疲弊する中、病院の責任を問うことは酷である。先の記事にはこの点への配慮がなく、反省材料になった。

 しかし、僕が批判したのはもうけ主義の病院と政治の癒着体制とそれを作ったものに対するものであり、現場スタッフに当てたものではない

 そして医療崩壊は特に民間病院から噴き出したものであり、そこは責任追及すべき核心部である。コロナ禍で日本が「医療後進国」であることが明確になった今、民間の病院改革は最優先事項だ。

 大きな問題を起こしたものは大抵、被害者でもある。今回の医療崩壊もまた民間病院が問題を引き起こし同時に大きな被害を被っている。だが、そこに同情を寄せすぎれば、責任追及が弱まり事態は改善しない。

 この被害者擁護意識から問題責任の核心部を守ろうとすることは、現状維持バイアスの1つだろう。これが2つ目

 自民党だけの責任ではないという意見もまた、現状維持バイアスの「ターゲットすり替え」である。この元では、すべての悪が別の悪にすり替えられて見逃されてしまうのだ。これが3つ目

 また、この「ターゲットすり替え」が派生して「体制から個人への責任転嫁」というバイアスも生じる。これが4つ目。パンデミック下の医療崩壊という最も体制責任が問われる状況で、苦し紛れに個人に責任を投げるのもこれに当たる。

 ここには現状維持派の自己欺瞞も見える。彼らの多くは普段、個人の人権を徹底的に否定しているのに、体制側へ責任追及の圧力がかかれば急に個人主義者になる。個人には世の中を変える力があり、各々で何とか解決すべきだとなるのだ。それは責任回避のための欺瞞であり、現状維持派は心底からとことん個を弾圧する同調圧力に染まっている。

 あなたの最後の訴え、個人の努力こそ優先されるべきというのも、以上の2つのバイアスからくるものだと考えられる。パンデミックは戦争と同等の国家的有事であり、個人の努力よりも国家や医療などの体制努力の方が遥かに重要になる。

 深読みすれば、民間病院の抜本的な改革は時間がかかるものであり、渦中の今は個人の努力を促すべきだという考えも読み取れる。

 だがそれも現状維持バイアス、現状維持派がよく使う「体制変革の後回し論」、これが5つ目。体制改革も危機の渦中で同時並行的にやるべきもの。「鉄は熱いうちに打て」というように抜本改革もまた危機が過ぎれば勢いはそがれてしまう。病院体制の責任追及も今、なされるべきことである

 6つ目として最後にあげたいのが、「反対意見の極論化」である。これは保守派による「リベラル派への悪魔化」とも共通する現状維持バイアスだ。そのため彼らの訴えは非常に攻撃的なものになる。今回、僕に寄せられた返信も、いきなり罵倒から始まっている。そこには最低限の敬意もない。

 それはトランプ信奉者が反対者へ過度に敵対的な態度を取ることなどにも通じる。現状維持派は、変革側のあらゆる面を極端に歪めることで内々の結束力を高めようとする。

 バイデン新大統領は就任演説の中、その愚かさを「Demonaization」(悪魔化)と呼び、保守派に対して相手をちゃんと見てよく話を聞くことを訴えた。そこからすべての議論は始まるのだ。現状維持バイアスは、建設的な討論の土台を壊す最たる要因である。

 僕の提唱ポイントは、日本の医療崩壊は第一に過度に資本主義化された医療体制が引き起こしたものであり、今後は政治がそこに法的なブレーキをかけてさまざまな形で医療倫理を実践させねばならないというものだ。

 高すぎる理想だが、そこに向かわねば何も変わりはしない。何か反論があるのなら、僕がここで示したよう論旨だけを書いて欲しい。「煙に巻く論法」は真意が分かりづらいため、読むのに時間がかかる。

 出来ない理由を挙げるだけの反論も不要。財政問題を筆頭に、そんなものはいくらでもある。建設的な批判と代替案を示して欲しい。おお、これは参った…と思うものであれば、僕もまた応じるだろう。

 もちろん、そんなのメンドくさいと思うのなら無視をしてもらっても全然構わない。

 

 

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