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【ドラマ感想】放課後カルテ#5「お前が傷つくくらいなら、こいつを傷つける方がいい」

4話に続きターニングポイントの5話。今回は二組の父子家庭が描かれる。
※ドラマ本編および原作漫画のネタバレがあります。
画像出典のページ数は電子書籍版準拠です。



原作エピソード紹介

第24話~第28話 牧野・大学病院時代の話

原作6巻P.99より

牧野が大学病院から小学校の保健室へ赴任するきっかけとなった、ストーリー的にとても重要な回。単行本1冊分程度と、この話だけで1話作れるくらいのボリュームがある。

第21話・22話 水本羽菜の話

原作5巻P.70より

前回に引き続き、破壊衝動を抑えきれず時に自分自身をも傷つけてしまう羽菜の物語も描かれる。今回は家族がどう向き合うか、がメイン。

大学病院の頃

この頃の牧野は、病気を見つけたい・治したい気持ちはあるが。患者や家族のみならず医療者からも信頼されていない。

目の前の患者になにが起こっているか全身を捉えて見つける
心の不安を取り除くことも治療だぞ?
患者の言葉を聞かず早合点で診断下してないだろうな
つまりは信用できない どれだけ技術が上がったとしてもだ
知識アタマだけで医者やれると思うな

咲間(原作5巻P.149~150)

真琴を診察する少し前、原作では牧野は元指導医・咲間にこんな指摘を受けている。ここまで言われてもとある母親に対して責めるような言い方をしてしまい、研修医からも「なんて言い方するんだろ」と思われる始末。

真琴を診察している時の様子はドラマオリジナル。真琴や保護者も見ようとせず、ほぼ背中を向けている様子を見てこれで信頼してもらうのは厳しいよなぁと感じた。

受け入れられない人たち

病棟を抜け出した真琴を見つけたあとの、牧野と医局長の対話シーン。ドラマの医局長はだいぶ理性的だったが、原作ではめちゃくちゃ怒っている。

「間違ったことは言っていない」と主張する牧野に対して
(原作6巻P.115より)

ドラマだと1対1だった貴之が牧野を責めるシーン。原作だとそこに居合わせた医師がおり、医局長はその医師から牧野が何を言ったか聞いている。我々が読んでいるだけでも別々の医師から3回は注意を受けているのに、態度を改めるどころか病院への信用を揺るがすような暴言を言ったと知ったらそりゃあ怒るだろう。

悲嘆のプロセスという概念がある。アメリカの精神科医、キューブラー・ロスが1969年に発表した5段階のプロセスが有名だろう。

悲嘆のプロセス
ナーススペース「患者・家族の認識とグリーフケア」より引用

これになぞらえると、「僕は病気じゃない」と言っている真琴は1、牧野に怒りをぶつけた貴之は2が当てはまりそうだ。これにたいし、牧野が医局長に言っていた

代わりにはなれないのに勝手に絶望して、受け入れることから逃げて….。
何が救われる?

牧野峻(ドラマ「放課後カルテ」#5より)

は、このプロセスのゴールである5に最初から行けと言っているようなもの。貴之が病気を受け入れることから逃げていると指摘した牧野もまた、樫井親子の心の声を受け止めることから逃げている。
「それは責められた自分への言い訳だろう?」は、牧野のそんな姿勢を指摘する言葉だと思う。胸ぐらを掴むのは現代だとコンプラ的に難しいだろうが、この台詞は入れてほしかった。

樫井家の事情

貴之も真琴も、まだ母の病死を乗り越えられていない。貴之は医者を信用できる心理状態ではないし、真琴も病院が怖い。

原作6巻P.55より

今回、真琴や貴之が抱えている不安についてはだいぶ端折られていた。ドラマ制作陣の狙いは推察できるものの、もったいないなと思う。

成長したのは、本当に学校ここで?

おそらくこの回で描きたかったのは牧野の成長。ともに父子家庭で牧野が直接家に状況を見に行った者である真琴・羽菜の物語を同じ話でやることで、「小学校に来てから牧野はこんなに成長した」というのを示したかったのかな、と思う。

しかし、私から見えたものは違う。
確かに真琴を診ていた頃は、患者や家族の気持ちを全く考えていなかった。
けれど1話ではゆきから話を聞こうとうさぎのぬいぐるみを使って話しかけているし、3話では環(啓・直明の母)の気持ちに寄り添った発言もしている。

なら、患者や家族の気持ちを考えられるようになったのは小学校へ赴任する前じゃないか?と思えてならない。原作序盤よりドラマ序盤の牧野を成長させた弊害が、ここに出てきてしまった。

踏み出した第一歩

時を現在に戻して、ここからは羽菜の話。

班の子たちとの交流や、父親にちゃんと娘への愛情があるのを描いてくれてほっとした。特に好きなのは保健室にみんなが迎えにきてくれたところ。子どもたちのアドリブだというおんぶのくだりは微笑ましかった。ああいうのすごく好き。

保健室で羽菜と父が話し合うシーンは原作準拠でよかった。家でのアイスのくだりは前回の追加描写を活かした改変で、現在の羽菜を知っていく第一歩になっていくんじゃないかな、と思う。

母親との電話

羽菜もまた、これからに向けて歩き始めた。
まだ心の傷が癒えたわけじゃない。何もかもが上手くいくわけでもない。でも今まで心の痛みを自傷や破壊にぶつけていたのが本音を話せたことや気持ちを受け止めてくれる人がいることで少しずつ変わっていけばいいなと思う。

さいごに

今回の感想を短くまとめると「羽菜まわりはよかった、真琴の話はこれだけだともったいない」かなぁ。真琴のこともじっくりやると思っていたから、ちょっとしょんぼりした。

終盤にあった芳野の台詞がすごくいい。医者と教師、立場も仕事も全然違うから見えてくるものも違う。そりゃそうだよね。

次回は篠谷回かな?

コミックス画像出典

放課後カルテ 5巻
日生マユ/講談社(2013年刊・IBSN:978-4-06-380405-8)
放課後カルテ 6巻
日生マユ/講談社(2014年刊・IBSN:978-4-06-380424-9)
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