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ガーネット ゴミ屋敷の王妃のために。

ガーネット。アンティークの指輪。

    最近のことだ。 R氏が指輪を買ってくれた。

(左手薬指のリングは後日、わけあって潰していただいた 私のためのものではないからだ。)

初めて出会ってから一年以上が過ぎたが。
ケンカばかりの最近の毎日だったし、私はこんがらがっていた。

「貴女の前のマンションの部屋、まるでゴミ屋敷だな?って思ったよ!こんなんで引っ越しするのか?って!」
・・・これにはかなり傷ついた。リビングから見える部分はひどくごちゃごちゃ散らかしていたからだ。

あの時、彼が私のマンションの荷物を運びだしてくれた時はわざと余計に散らかしていたのだ。                 

      それには当時の私の諸事情があった。                  


筋肉少女帯の歌に「ゴミ屋敷の王女」って歌があるが(アルバム *蔦からまるQの惑星*に収録されている)、あれはわかる人には突き刺さる歌だと思っている。王女、よりも私には王妃、がふさわしい表現だろうと思っている。

指輪は他にも彼が自作した指輪をもらってはいた。彼は金属のエキスパートでもあるが天然石にはあまり興味がないという。

私も特に頓着してはいないが変なこだわりがあるのは認める。

指輪の石はガーネット、柘榴石。
黒く暗い赤。ルビーとはまた違う。貴女に服を、と言ってくれたが洋服は欲しくないのだ、とアクセサリーを買ってもらった。アンティークなジュエリーが好きだから今時ではないデザインでもあるけれど、悩んだ挙げ句、これを買ってもらった。

ルビーには縁がないようで持つと結果、手放したり失くしたりする。大切にしていたピジョンブラッドのルビーは泣く泣く手放した。

   ・・・アクセサリー。

誰かに見せるためではなく、R氏のためでもなく、自分が好きな自分のための「飾り」が欲しいと思った。それはあくまでも自己満足で私自身を慰めるためだ。

ピアスは失くす、ネックレスやブレスレット、アンクレットは切れたりするからバングルか指輪がいい、眺めていられるし綺麗なものが大好きだから。でもペアリングは欲しくないとも思った。

大好きなMALICE MIZERの歌にもなっているガーネット。鬼子母神の喰らう柘榴の果実は血の色をしている。

一年前までアクセサリーの類いはガチャガチャあった。

宝飾品やアクセサリーは確かに、確かにたくさん持っていたし安価なイミテーションから高価なものまで好きなアクセサリーはわらわらあったが大切にできなかったような気がする。

たくさん持っていたジュエリーはどんどん手元から失くなり、残ったわずかな貴金属や真珠は娘に譲ったり、友人に譲ったりした。大切なジュエリーは父が買ってくれたダイヤモンドが1個あればいいや、って思ってもいたのだけど。

貴女に服を・・・。素直に嬉しかった言葉だし、昨年夏、着替えもなかった私にすぐに洋服や下着、化粧品を揃えてくれた。

洋服は消耗品だから。唯一無二の、私のための、私に似合うアクセサリーが欲しいと思った。

全部捨てたって気持ちを埋めたいから、濁り、淀んでうずくまり、その悲しみを癒すために新しいアクセサリーを身につけたいと思った。

光に翳すと赤黒く煌めいている。深い赤い、重たい毒々しいガーネット。薔薇の花ならまさに「ローテ・ローゼ」の色だろう。

R氏はガーネットを検索しながらふーん、と頷いて貴女はブラックガールだからといって笑っていた。彼はネックレスにするだろうと思っていたという。

   ゴミ屋敷。

あの部屋は確かにゴミ屋敷のようだっただろう。
床に散らかしていた雑貨。
赤いテーブルの上にものが溢れている。積み重なり、ゴミなのか宝なのか他人にはわからないだろうし片付ける時間が限られていた。捨てられないものもあった。もはや本人さえどうしてよいのかわからない状態だった。

貴女に服を・・・。それは彼の好みの服を着て欲しいと聞こえた気がした。

それは少し嫌で、少しつらく聞こえた。

ちゃんとわかっている。タイトなラインのすっきり体の線が出るような服を男性が好むのを。

嫌なのだ。他の人と同じってなぜか嫌なのだ。あと「年齢相応」って苦手な言葉だ。

いろんなアクセサリーを見ていてブランドより、流行り廃りより私らしいものを探すってなかなか大変なことだ、ってあらためて思った。

貴女に服を・・・。ゴミ屋敷の王妃にふさわしいドレスはなかなか見つかりそうにないし期待にはこたえられないだろう。

R氏は新しいものが好きだ。
私は真逆で古くても素敵なものは大切にしたいタイプだから衝突する。

貴女に服を・・・。

貴女に服をってあと何回彼は言ってくれるだろうか。昨日R氏と見た部分日蝕の黒い欠けた太陽を思い出しながら蔦からまるQの惑星を聴いている。


そういえば以前にも私は筋肉少女帯が好きだというnoteを「R氏シリーズ」で書いているな、と思い出した。彼は大槻ケンヂさんをオーケンとよばず、ケンヂ、ケンヂという。

私は会話が下手で不器用だ。仕事なら嘘みたいに快活によくしゃべる。プライベートな会話が苦手でそれが好きな相手だとなおさらで、気持ちを伝えたいがためによく音楽を会話にひきいれる癖がある。

R氏は私と暮らしてMALICE MIZERや筋肉少女帯を聴いて全く聴く、聴いてみるなんて思わなかっただろうアングラな邦楽ロックやヴィジュアル系ロックを聴かされるはめになってしまった。
R氏は「ケンヂの歌はききとりやすい」って感想を言ってくれて嬉しかった。
決してケンヂは上手いとは言わないが。私はそれでも一緒に筋肉少女帯を聴いてくれるだけで嬉しいのだ。

ガーネットの指輪に光る赤い黒い光は私の流す涙の色だろう。

成長できない少女の心が流す涙はきっと赤黒いに違いない。赤い血の色。こみ上げる熱い想いを言葉にはできない。がらくたが、ゴミ屋敷の王妃の宝物がまた増えたのだ。

がらくたじゃない。   宝なのだ。


         
          ゆー。

(過去作品ですが、<みこちゃんコンテスト>にエントリーさせていたただきました。  読んだ身内からイタイと酷評された作品です。 あえて、反骨精神から読み直してからハッシュタグをつけさせていただきました。)

   #第2回THE _NEW _COOL_NOTER 賞

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姫崎ゆー
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