熊本旅行記(4日目 江津湖など)
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食後は江津湖の方に向かった。細長い湖で、小川の横を歩いていくと、だんだんそれが太くなり、大きくなる。
成趣園と同様に水が綺麗だ。サギやカモなど、様々な種類の水鳥が見られる。靴べらのようなくちばしを持つ白い鳥が珍しかった(後で調べてみたところ、絶滅危惧種のクロツラヘラサギかもしれない!)
風景を眺め、野鳥を観察しながら散歩するのは心安らぐ。
木のように背の高い草がずらっと並んで枯れており、文明の滅んだ惑星に降り立った気分になった。あれはおそらく芭蕉だったのだろう。春には新しい芽が出て、夏にはホタルが見られるという。
平日のせいか人は少なく、デートをするなら成趣園よりこちらの方が良さそうだ。誰も見ていないタイミングをねらってチューしたりするのも楽しそう。
Dちゃんにねだってみようかとも思ったが、どうせ二人でホテルに泊まっているのだし、わざわざ外でしなくても、と考えてしまうところが夫婦だ。部屋の中で落ち着いてしよう。
市電に乗り、
「また鶴屋に寄ってお土産を買おうか」
とDちゃんに言ったら、
「どちらからいらしたんですか」
と年配の女性に声をかけられた。
「埼玉です」
「そうですか。鶴屋の話をしていたから」
と笑う。どうして鶴屋の話をしていたら声をかけるのか分からないが(もう他人ではないということなのか?)地元の人の意見を知るまたとないチャンスと思い、こちらからも質問してみた。
「街を歩いていても熊本弁を聞かないんですけど、みなさんあまり使わないんですか?」
「いや、子供叱る時なんかには使いますよ。『すーすっす!』とかね。でもテレビの影響で、だんだん使わなくなってきましたね」
「私、ヨシおっちゃんが好きで、ああいう熊本弁が聞きたかったんです」
「カツラかぶってる人ね」
「そうです」
「私もヨシおっちゃん好き」
もっと話したかったが、鶴屋前の停留場に着いてしまい、大慌てでお礼を言って別れた。
「ヨシおっちゃんの話をし始めて、賭けに出たなとハラハラしたよ」
とDちゃんが苦笑する。
「知ってて良かったねぇ」
ヨシおっちゃんは熊本のケーブルテレビで活躍しているタレントさんだ。YouTubeで検索すれば、彼の熊本弁講座を見ることが出来る。熊本でどれくらい知られた存在なのか分からないが、話が通じて助かった。
鶴屋でお菓子のお土産を買い、熊本城に向かった。地震後は城内のほとんどが立ち入り禁止になっているので、外側の石垣沿いの道を歩いた。この石垣は「長塀」と呼ばれ、国の重要文化財であるらしい。夕闇の中でしんと静かな石垣を眺めながら、ここで積み重ねられてきた月日を思った。
城の隣にある「城彩苑」という観光施設で、母へのお土産を買った。透明なアクリルの中に、小さなくまモンが入っているキーホルダーだ。
「お母さんはきっとこういうのが好きだと思う」
とDちゃんが選んでくれた。母は可愛らしいミニチュアに目がないのだ。
夕飯は「勝烈亭」という店でとんかつ。
Dちゃんが、
「この後、熊本ラーメンも食べようか」
と高カロリーなことを言い出すので、ひれかつを一切れ分け与えた。二人とも無事まんぷくになり、そのままホテルへ戻った。
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