星野ルネ「まんが アフリカ少年が日本で育った結果」感想
ルネさんは見た目100%アフリカ(カメルーン)人、4歳直前に来日し兵庫県姫路市で育ったので、日本語(関西弁)がほぼ母国語。
カメルーン人が日本人の集団の中で暮らす、という特異な状況に対して、ルネさん御本人や周囲の人が「関西弁でツッコミを入れる」
この「異文化の接触」と「関西弁」の相性が良いんだな。
いっぱい笑った!
人間というのは「イメージ」によってこの世界を把握している。
「外国人」のイメージ→日本語を話せない。日本のことをよく知らない。英語を話す。
関西弁とフランス語を話し(日本で育ったから当たり前に)日本のことを知っているルネさんは、周囲の人々の「イメージ」を飛び越えてしまう。
ルネさんは戸惑う人々を批判しない。
あまりに度々でうんざりもしているだろうけど、あきれつつ怒らないでツッコミを入れてネタにして楽しんでいる。
人間は何故ここまで「イメージ」に囚われるのか。
今、目の前にある世界を「全く知らない状況」として毎回一から把握していくのは大変だ。
「イメージ」によって世界を単純化すると、考えたり想像したりする回数を減らせる。
そうやって無意識に思考や時間を節約しているのだろう。
「イメージ」に合わない人を犠牲にすれば済むだけだ。
人間の脳にはあるがままの世界を受け入れる力があると、私は信じている。
たくさん考えたり想像したりすれば良いのだ。
漫画や小説のような「物語」は、イメージを作りもするし、壊しもする。
ルネさんの漫画は良いイメージを作り、狭いイメージを壊している。
関西の人が描く「おかん」って素敵ですね(これもイメージだ)
関西の芸人さんたちがエッセイの中で描くおかんを思い出す。
民族衣装を着て入学式に来て、カメルーンのピリ辛スープをお弁当に持たせたりする「おかん」
お母さんというのはおおむね素晴らしいものなのだろうけど、イタリア人と関西人は躊躇せずに母への愛を表現する。
ルネさんの漫画は色彩が明るく鮮やかで美しい。
本の三分の一くらいがフルカラーなのが嬉しかった。
ヤシの木やパンの実など、日本では馴染みのない植物、食べ物の紹介も興味深かった。