「細江英公・人間ロダン展」感想

 2010年に銀座RING CUBEで開催されていた「細江英公・人間ロダン展」の記録です。

 まず思ったのは、
「彫刻をこんな風にエロく撮って良いんだ!」
 ということ。どの写真にも、見る者の度肝を抜くようなエロさがあります。

 他のお客さんも、
「すごい……艶めかしい……」
 と唸るようにつぶやいていた。

 次に考えたのは、
「私が『エロさ』として受けるこの感覚は、いったい何だろう?」
 ということ。エロいといっても全く下品ではない。むしろその反対で、他では見たことがないほど、高尚な世界が写っている。

 私の心をざわめかせているのは、性欲なんだろうか? それとも何か別の欲望なんだろうか?

 今、「性欲」を辞書で調べたら、「肉欲」という単語が出て来た。うん、こっちの方が近い気がするな。しかしそもそも、何で肉体を見るとドキドキするのだろうか?

 肉体なら何でもいいという訳じゃない。そこには「美」が宿っていなければ。逆に言うと「美」さえそこにあれば、人間の肉体でなくても良かったりする。

 肉のような何かに欲情する私。

 細江英公は、三島由紀夫の裸を撮影した写真集「薔薇刑」を出した人です。出版当時、
「小説家をこんな風にエロく撮って良いんだ!」
 と世間がそろって膝を打ったのでしょうか。
 反社会的でありながら、その完成度によって誰にも文句を言わせない。
 
 崇高なエロさ…… いや「肉体」と「肉体への欲望」は、もともと崇高なものだったのでは、と思わせる力。細江英公だけが作り出せる世界だ。

 写真って、本当に不思議。現実は一つだけなのに、切り取り方は無限にあり、写真家はその中から最高のものを選び出す。
 その選択は時に、人々の価値観をひっくり返す。

 「薔薇刑」も見る機会があればぜひどうぞ。私は東京都写真美術館の図書室で立ち読みしました。