新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで
2017年に国立新美術館で開催されていた新海誠展の記録です。
何と言っても目玉は神木隆之介くんの音声ガイド。
一番初めの「こんにちは」でもう胸がキューンとした。
色んな見方の出来る展示だと思うけれど、私は、新海誠がどんな風に悩みながらこれまで作品を作ってきたか、という点に最も興味をひかれた。
「自分が作れるもの」
「自分が描きたいもの」
「ファンが求めるもの」
に、どう折り合いをつけるか。
無茶しないで、やれることをきちんとやった「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」あたりがやはり名作だと思うので、作家としてどうジャンプするかというのは難しい。だからといって同じような作品ばかり作っていたら、固まってしまうし。
新海監督の出身地である長野県小海町は上空の気流が複雑で、雲の形が表情豊かに変化しながら通り過ぎるという。行ってみたい!
上京後しばらく武蔵浦和に住んでいたそうで、それで「ほしのこえ」の舞台があのあたりなのかと。
アニメ監督でありながら、私小説を書く作家のように、作品と生活が密着している。
最初のうちは見よう見まねで描いていたとか、立派な監督さんなのに、何だかすぐそばで頑張っている人のようで、きっと古くからのファンはそういうところに魅力を感じて応援してきたのだろうなと。
お父さんが建設のお仕事をされていた、という年表の記述も目を引いた。
だから自然の風景と建築物の両方を愛情込めて描けるんだな、と。
テッシーのことも思い出しますね。
会場では、新海監督が映像を制作した、大成建設のCMも見られた。
絵コンテと作画資料の展示は数が多いので、興味のある部分だけザザッと。
「言の葉の庭」のユキノ先生についての、
『「クールというよりカワイイ」同時に「なんか瞳孔開いててコワイ」です!』
という指示が面白かった。
こういう細かい工夫の積み重ねで、ユキノ先生の多面性が形作られていたのかと。
彼女はアニメのキャラらしくない生々しさを感じさせつつ、絵でしか表現出来ない美しさもあり(あの足!!!)印象的ですよね。
美術背景についての解説を引用する。
「新海作品の背景描写は、写真加工と見違える緻密さだが、写真は場面レイアウトのベースに使われ、実際には人の手で全て描き直されている。この際、強調する部分とそうでない部分を意識し、ディテールを省略するなど、場面に合わせて調整して描かれている」
アニメに限らず、創作全てに当てはまることだと思う。
気が付けば、展示室に入ってから3時間以上経っていた。
神木くんってば、
「一緒に回れて楽しかった」
だって! キャーッ!!
最初から最後まで、甘酸っぱい気持ちにさせてくれてありがとう♪