アニメ「ユーリ!!! on ICE」感想
想像していたよりコメディ寄りで楽しかったです。
まだ自宅にテレビがあった頃(20年程前)家族でご飯を食べながら、フィギュアスケートの中継放送を眺めたのを思い出し、懐かしかった。
今も昔もフィギュアスケートの知識は皆無ですが、
「ミスを全くしないのに、心をつかまないスケート」
と、
「転んだのに、オオッと思わせるスケート」
があって、オオッと思わせたスケートの方がちゃんと点数高く出るんですよね。
ど素人の感覚にも沿う採点システムすごい。
「ユーリ!!! on ICE」はそういう選手一人一人の滑り方の違いをアニメで表現しており、新鮮でした。オープニング映像もすごくお洒落でわくわくする。
主人公の勇利、コーチのヴィクトル、ライバルのユーリはもちろん、各国の選手がみんな可愛くて愛おしい。
タイのピチットくんが特に好き。
前に、フィギュアスケートの選手が事件に巻き込まれて亡くなったニュースがありましたよね。
「ファンは悲しんでいるだろうな」
とその時も思ったけれど、このアニメを見た後、彼のファンだけでなく、フィギュアスケート好きな人全員が耐え難い気持ちになっただろうと感じた。どんな人だって亡くなるのは悲しいし、殺されたりしてはいけない。でも特にフィギュアスケートの選手というのは、
「人間には肉体と感情があり、それは美しいものなのだ」
ということを、体現している存在である気がする。
架空の「ユーリ!!! on ICE」の登場人物たちでさえ、傷一つ付けないで欲しい、と祈ってしまうのだから……(ケガする展開がなくてホッとしました)
鮮やかに曲に乗って滑る勇利が、普段は地味な眼鏡男子だったり、氷上では天使にしか見えないユーリが、リンクを出た途端ガラの悪いヤンキーになったり、ギャップも素敵。
タイのピチットくんやカザフスタンのオタベックの、エキゾチックな動きも良い。
オタベックとJJ(カナダの選手)の声が、細谷佳正さんと宮野真守さん(「ちはやふる」の新と太一)で、君らここでもライバルか、と可笑しかった。
故郷で応援している人たちもみんな優しい。
ユーリのおじいちゃんが言った、
「ユーラチカ(ユーリの愛称)強くなったな」
というセリフは「試合に勝てるようになった」という意味ではなく「わがままなユーリが自分に克てるようになった」のを喜んだのだと思う。
勇利の地元、長谷津(モデルは佐賀の唐津らしい)の人たちも、繊細な勇利をほど良い距離感で見守っている。
博多の南くんも含め、九州の言葉が好きな私にはたまらない設定でした(お母さんの「よかよか」とかとか!)
ピチットくんが滑る「王様とスケーター」ふーん、そういう映画があるんだ~ と思ったら、架空の作品で、曲もアニメオリジナルと分かりびっくり。
ピアノ協奏曲もクラシックかと思ったらオリジナルだった。
細部まで凝ってますね。
スケートは思いのままのヴィクトルが、勇利の揺れる感情に手を焼く。
勇利はヴィクトルに対し「支えて欲しい」「競技者に戻って欲しい」という相反する気持ちを抱き、苦しむ。
全てを終わらせようとする勇利を、彼にしか出来ないやり方で止めようとするユーリ。
最終回まで見て、彼らが送った一年の価値が分かり、心に残った。
ヴィクトルがユーリを抱きしめる場面にオタベックのセリフが重なるところ、競技後のユーリの涙も良いよね……