
せんせい、あのね。大きな猫を脱ぎたくなる6月だから…

先生になられて2ヶ月が終わろうとしています。毎日子供たちと全力で格闘、でもうまくかみ合わないことが多くて…くったくたになって心身ともにしんどい頃ではないですか。明け方気づいたらフローリングで寝ていた、なんて話も聞いたことがあります。「仕事辞めようかな…」「むいていないのかな…」なんてネガティブな気持ちに駆られるのもこの頃です。みんな同じです。ベテランの先生方の中にもそんな気持ちになっている方は結構いるものです。私も定期的にそんな気持ちになったこの時期。

4月、新規採用の先生だけでなく、多くのベテランの先生方も、もちろん子供たちも、「今年は頑張るぞ!」って120%くらいの熱量で新学期をスタートします。大人も子供も、「なりたい自分」に合った「大きな猫」を被って頑張るわけです。悪いことではありません。相手に好印象をもってもらいたいという当たり前の意気込みですから。そして、GWが終わると気温も上がってきて、6月が近づくと蒸し蒸ししてきて、そんな大きな猫の衣を脱ぎたくなるのも当たり前?!です。
がんばってきたから疲れるのは当然
1 今の自分を知る
ついついネガティヴモードに入ってしまうと、子供たちのよくないところ、または問題を起こしてばかりいる子供のことばかり考えてしまう。寝ても覚めても…どうしたらいいんだろうって自問自答し、良い答えも見つからない。隣のクラスはなんだか上手くまとまってきていているように見えて、焦りさえ感じる。子供たちがまとわりつくように楽しそうに先生とかかわっている姿を見ながら、どうして自分はああいう風にできないんだろう...とまた落ち込む。
こんな時は、今の自分チェックをやってみるといいですよ。

これは、私が凹んでいる時、ポジティブシンキングに切り替えるきっかけにしてきたことをまとめてみたものです(注)かなりの独断ですので何のエビデンスもありません)。
♧考察のpoint♧
❶家庭的背景を理解することの大切さ
名前は楽々クリア?!当たり前ですよね😊。子供は一人一人家庭環境が違います。子供からしてみると、今の環境しか知らないわけですから、どんな状況下にいてもこんなものなのかなぁと我慢していたり、誰にも言えずに不安や恐怖を抱え込んでいることだってあります。教師は、家庭的背景を変えることなんてできません。でも、知っていてあげるだけで、その子の行動への見方がちょっと変わる → 声の掛け方が変わるはずです。学級が開いて二か月、まだまだしっかりと理解してあげられるはずはありませんが、元担やよく知る先生に聞いたり、日々の子供の様子、個人面談等の様子から気になることがあったら学年の先生や管理職に相談したり、アンテナをたくさん張って背景を知る努力をする時期です。ベテランの先生方も同じようにしているはずです。(この時、子供から聞き出そうとはしないこと。話しに来てくれたとすれば、それはとっても凄いこと。)これは、時間と心を働かせて日々意識することが大切です。
❸うまい授業ではなく、確かな授業
手応えのある授業とは簡単明瞭で、子供が「分かった!」と実感できる授業です。少々進め方がぎこちなくても、奇抜なことをしなくても、セオリーを理解して、粛々と進めればよいのです。
言うまでもありませんが、
★ねらい・・・この45分間で身につけさせたいこと
★手立て・・・それを達成するための学習活動の選択
★まとめ・・・子供がどれくらい「分かった」かを把握すること
この3つがしっかりと役目を果たした授業を「確かな授業」と捉えます。学習活動の選択に気持ちが寄り過ぎて、まとめがなおざりになってしまう…先生あるあるです。「分かった?かなぁ…」と「分かった!」は、子供の表情や、振り返りを丁寧に行うことで正確に判断できます。

❺&❻ 子供は「優しくて怖い?!先生」が好き
子供が褒めてほしいところ(頑張ったこと)をちゃんと分かってあげて、温かい言葉で褒めてあげることが、何より人間関係の礎となります。が、子供は反面で、いけないことをした場合にきちんと叱ってくれる先生も求めています。もっと言うと、きちんと指導できない先生への不信感は想像以上にダメージが大きいです。叱ると怒るの違いは大前提です。ダメなものはだめ、を徹底していて、それ以外では面白くて優しい先生。今昔、老若男女問わず、子供が大好きな先生です。という私も、褒めるのは結構得意でしたが、叱るのはいまいち下手くそでした。上手くいかなかった時は大抵、子供の立場や言い分を度外視して感情で怒っている時、または、ダメなものはだめ、の物差しがブレブレな時。そんな時、お世話になった校長先生がよく口にしていた「叱る3原則」を思い出して自分を戒めて?!おりました。
【叱る3原則】
★他人に迷惑をかける行為をした時
★人権を侵害する行為をした時
★命の危険に触れる行為をした時
それ以外は、いちいち口うるさく言わず、さり気なくこうした方がいいかもね、的なアドバイスをしてあげられる余裕が出てくれば何とかなります。(この技術習得には数年かかります)
余談ですが…
生活科の授業で朝顔の観察をさせている時に、虫取りに夢中になっていっこうに観察カードを書かない子に、「ちゃんと書きなさい!」なんて怖い顔で怒っていた若い頃の自分が懐かしい。
今だったら。。。
活動中に起こりうる状況を先に考えて、
活動1 植木鉢をもって、教室の席のように座る。(場所の指定/固定)
活動2 先生のお話(ねらい/やること、をもう一度手短に)
活動3 みんなで葉っぱの数を数える。(やることを絞る)
活動4 みんなで葉っぱの形を観察する。(みんなで同じことをする)
活動5 分かったことや気付いたことを発表し合う。(気づかせる)
活動6 各自でそれをカードに絵や文に書く。(書くことを明確に)
活動7 色を塗る。(個人差を配慮した時間)
活動8 先生に見せて花丸をもらう。(即時評価/ゴールを明確に)
活動9 植木鉢を片付ける。(これが大事)
活動10 他の花や虫の観察をする。(お持ちかねタイムを作る)
褒める場面がたくさん作れるように、こんなふうに、やるかなぁ。。。何の見通しももたせずに、ハイ、書きましょうって、そりゃひどいことしていたなって猛省。
❼&❽仕事以外の時間を意識的に作る
今だから力説しますが、これが本当に大事です。やることがたくさんあって終わらない→遅くまで学校にいる→それでも終わらないから土日に学校に行く、といった仕事の仕方が定着しているベテランの先生がたくさんいます。教員は、とことん主義の方も多いので否定はしません。一方で、そのスパイラルに溺れてしんどくなって体を壊していった先生もたくさん見てきました。前出した「とことんタイプ」の先生をよくよく知っていくと、実はそんなハードワークの合間に、趣味があったり、違う世界をもっていたりと、納得することもたくさんありまして、やっぱり、仕事以外の時間を上手にもつことが、バランスの良い仕事の仕方だと確信しました。ちなみに、私は、意地でも、成績前の一回だけを除く、土日には学校に行かない、と決めて実践していました。もうすぐボーナス!頑張って自分へのご褒美に、何か買ったり、どこかへ行ったり、美味しいものを飲み食いしたり、それを楽しみにできる自分づくりをしてみてくださいね。
❾&❿話すことで7割解決する
人間は、誰かと話題を共有したり、共感してもらったり、一緒に腹を立ててもらったり、とにかく話をすることで結構気持ちが晴れるものです。特に、心配なことや納得いかないことは、それをよく知る人に相談するに限ります。学年の先生や管理職はなんだかハードルが高いなって思う場合もあるでしょう。その時は、クラスのことをよく知る専科の先生や養護の先生とか、学校にはけっこう先生はいるものですよ。
2 目標を決めてゴールはお楽しみタイムで
今の自分、まだまだだって落ち込むのではなく、足りないところは改善し、良い所は自信につなげていく気持ちのもち方が大切です。これからどうやっていこうか、これが肝心要のお話です。
【1000個の花 作戦‼】(2年生の実践から)
訳あって、9月から11月まで、2年生の担任をすることになった時の実践です。とても穏やかで落ち着いていそうに見える学級でしたが、何をするにも人任せで、自分がクラスをよくするために何かしてみようといったあたりの関心が低い所がとても気になりました。そこで、まずは自分が頑張ったことが学級の役に立っている実感と、それってすごいことだよねっていう共感をもたせる取り組みを考えました。その時たまたま折り紙のバラづくりがちょっとブームになっていて、「!」これ使おうって直感で決めました。
活動1 「このクラス、こうしたらもっと良くなる」の話し合い
活動2 目標その1を決める 【チャイムは席で聞こう】
活動3 班ごとに毎時間チャイム着席が間に合った人数の花丸を黒板の端に書いてあげる。(間に合わなかった子を責めない風土づくり)
活動4 その日のトータルの花のバラの折り紙を有志の子に折ってもらって、模造紙(花の大きさから計算したら模造紙一枚分で200個)に貼っていく。
だんだん有志が増えていきました。
活動5 目標1がほぼできるようになったら、次の目標を設定
みるみる花畑は広がっていきます。みんなが同じ方向を向いてきたなと感じたころ、「お花何個まで挑戦する?」とゴールを問いかけます。ちょうど算数で1000までの学習をしていた頃だったので、「1000個!」(想定通り!)。ということで、いくつかの目標をクリアしながら、一人一人の気持ちが学級づくりに向いてきました。初めは、行動目標だったのが、少しずつ活動目標(何をしたら役立つか考える活動)に質的にも変化していきました。ちょうど、11月で新しい先生が決まったところ辺りで、1000個達成!
活動6 「1000個達成記念パーティをしよう」の話し合い
活動7 パーティーの準備(一人一人が役割をもって活動)
活動8 「1000個達成記念パーティをしよう」
教室の後ろに、模造紙5枚一杯に貼られた色鮮やかな折り紙の花は圧巻でした。(就学時検診で、気が散るからと隠された時にはちょっと…でしたけど)この活動のテーマ曲?みたいに、いつも「世界に一つだけの花」と「パプリカ」が流れていました。歌ったり、踊ったり、みんなで活動しながら学級が一つにまとまっていく様子が素敵でした。
「がんばらなくていい」の次は、がんばりどころを見極める
しんどくなってきた人に「がんばれ」って言っちゃいけないと言います。本当にそうだと思います。そして、「がんばらなくていい」と言ってそっと肩の荷をほどいてあげることも大切です。ですが、自信や気力が低下してしまった時、どうやって今の状況から抜け出していくのかを考えない人はいないと思うのです。だからこそ、少し気持ちが休まったら、本来のがんばりどころを見極めることが大切なのではないかな。違う仕事に変わって本来のがんばりどころを見つけた方もいましたし、担任から離れた仕事にかわってやりがいに気付いた方もいました。はたまた、いろいろな先生に相談しまくって、がむしゃらにやった結果、一転してクラスがまとまった方もいました。

人それぞれ出口は様々です。いや、そこまで深刻じゃないなっていう方もたくさんいると思います。今回は、子供も大人も、実はみんなしんどい6月なんだということを共有しながら、それを何とか乗り越えて、楽しい夏を迎えよう!ってお伝えしたくて書きました。少々上から的な言いようが反省…です。
ご精読ありがとうございました。