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私の合唱指導・中1編②

混声2部合唱「夏の日の贈りもの」がおおかた歌えてきた段階で、次のステップに進みます。混声3部合唱「夢の世界を」です。
2部はまあまあ声がそろってだいたいつられないようになったら、いったん区切りをつけます。3部がハモれるようになる頃には、2部に戻った時には、より洗練された響きになっているはず、という期待を込めて、完璧は求めません。お互い苦しくなるだけだからです。主旋律がどのパートか、によっても音量の加減をしなければならない。低い音で出しやすいからと、大きく歌えばいいというものではない、このへんも「夏の日の贈りもの」で指導できます。

さて、夢の世界を、ですが。この曲はやはり3部の導入に最適です。よく合唱曲集の最初に3部合唱のカデンツが載っていて、あれを導入にやっていた時期もあったし、それなりの効果はあったのだけれど、いかんせん音が低い。夢の世界をならば、ソプラノはミ~レ~、アルトはソ~ソ~、だからまあ音域的にちょうどいい。男声もド~シ~ラ~ソ~、だからこのへん出ませんはほとんどいない。

手順ですが、女声全員でソプラノパートを歌います。後半の「さ~あ~でかけよう」から最後まで。弓場メソッドの効果も少しずつ表れ始めるから、全体としては声は響き始めるのだけれど、個々にはやはり発声の悪さが露呈する。下あごの硬さから口が固まってしまうケースが多い。あとは、「さ~」はよくても、「あ~」で途端に響きが落ちるケース。「でかけよう」でハキハキ発音し過ぎて響きも息の流れも止まっちゃうケース。「思い出のあふれる」の後にブレスをしないで「道を駆け抜け」の最後で息が足りなくなるケース。「すばらしい僕らの」でブレスをしないから、「夢の~」の最後で息が足りなくなるケース。「の~」で口の中狭くなり苦しい響きになるケース。「世界を」の前でリセットできず、苦しいまま「世界を~」になるケース。適宜、お腹に手をあてさせて、お腹を動かして息を流すよう促します。口や喉は十分リラックスして。

次の段階は、「さあでかけよう」だけ1人ずつ歌ってもらい、いよいよパート分けです。究極、ソプラノ聞こえなければ合唱以前に音楽にすらならない、曲として成立しないので、難なく高音が響く生徒をソプラノにします。9人くらいいたら十分だと思います。そんなことしたらアルトが、というのはあるのですが、優先順位としてソプラノですね。ソプラノと男声のバランスも重要です。

次は、男声です。男声の場合とにかく音程です。変声が始まる小5くらいからていねいに1人ずつ声を聞いて指導してあげられたらベストかと思いますが、私は中学教師なので、ここからがんばるしかありません。メンバーによっては、かなり時間のかかる根気のいる作業になりますが、この時期がんばっておかないと、中2中3まで問題を先送りするだけなので、ここでやるしかない。あまりにも時間がかかって女声が暇になる場合には、女声には別の課題を与えます。教員が男女で1人ずついたら早いのですが、致し方ない。TT組める年なら、いいんだけど。とにかく変声期だから仕方ないを強調して、今歌える音域の部分だけを歌わせます。1人ずつチェックして。これが、出ない音域なのに適当な楽譜にない音程で歌われるのが、これが最悪。一生ハモれません。

男声が整ったら、男声+ソプラノ(女声全員)でハモる練習をします。
ハモれたらピアノ伴奏で。ここまでで1時間でしょうか。

次の時間には、男声は2回目の音取りなので、少し余裕ができます。女声は、全員でソプラノパートを歌った後に、全員でアルトの練習します。
最初に全員でソプラノを歌うのは、響きが落ちないようにするためです。アルトは常にアルトばかり歌っていると、どんどん響きが下がりますので、時々高い音も歌わせてリセットする必要あります。
アルトの音取りが終わったら、男声と合わせます。アルト(女声全員)+男声です。この組み合わせは、アルトが上の音ですから、アルトにとっては、音が取りやすいはず。ハモれたら、ピアノ伴奏で。ここまでで2時間目。
時間余った場合は、前半を女声→男声の順に練習して、最後にピアノ伴奏で通して歌います。「ほほえみ」の「ほ」、「かわして」の「し」、「かたりあい」の息の流れ、口の中の状態、あと、意外と難しいのが、「うつしだしたね」からの「さあ」。

いよいよ3時間目に、3部ハモりになります。例によって女声全員でソプラノを歌ってから、ソプラノだけ、アルトだけ、ソプラノ+アルト、男声だけ、男声+ソプラノ、男声+アルト、これでいけるクラスは、この後ピアノ伴奏に合わせて3部バッチリハモれます。再び前半を男女別に練習してから、最初から全部通します。いけるクラスは、これでほぼ仕上がってます。全クラスこうなれば、こちらは楽ですが、残念ながらイマイチの場合があります。
その場合は、根気強く原因を探して修正していきます。
ソプラノとアルトのバランス、ソプラノを増やす、アルトの音取りが不完全、男声が不安定、このへんでしょうか。特に、「うつしだしたね」からの「さあ」の頭が音取れないアルトは、確実にいますね。あとは全体的に響き下がり始める女声とか、ガナり始める女声とか。男声は、この時期だと9人くらいしかいないので、うまくいってなければすぐにわかるので、原因のほとんどは、女声の中に隠れている不安定さ、だと思います。列ごとにチェックする、1人ずつチェックする。でもね、「じゃあ一緒に!」ってなった時に急にチェックした時の歌い方を変えちゃう生徒ね、故意でないにしても、これがなかなか辛いところ。まあ仕方ないよね、少しずつ根気強くやるしかない。

あと、橋本祥路あるある、としては、語感を生かした歌い方ね。これは、橋本先生の研修会や橋本先生のDVDとかで散々教わってきたので、少し触れられるよね。ただやり過ぎると音が瘦せちゃうので注意。あくまでしっかり音が鳴らせるようになってからだね。

3部がハモれるようになったら、次は校歌かな。
次回は、「夢の世界を」仕上げ編と「校歌」について書きたいと思います。

補足だけど、「夢の世界を」の参考音源としては、You tubeで見れるけど、上村さんの「いい曲」の演奏、あれは僕は生で会場で聞いたのだけれど、本当にすばらしい。あと、野々村さんのソプラノの歌唱。あれも素敵です。
ただし、音取りだとあの無味乾燥な音取りCDの方が生徒は案外素直に声出たりするので、用途に応じて使い分けるべきかと思います。

補足2
前半部分を歌う時に、ポルタメントっぽく歌う生徒いたりするので、それは要注意。そうゆうの勝手に無意識にやっちゃダメだから、楽譜通りに!
8分の6拍子は、体に覚えさせる。時間的余裕あれば、説明するのもあり。ただ、音楽の場合、知識の扱いは技能より優先すべき、とは私は思わない。
自転車の乗り方を知識だけ手に入れても、何にもならないしね。


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