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紹介【なぜ ハワイ】<序章の1 こんなハワイに惹かれます>ーー「思想の科学研究会 年報 創刊号DISPLAY」より

 「なぜ ハワイ」は、山本英政さんが、『思想の科学研究会 年報』に連載している記事です。

 ハワイに心惹かれた出会いが序章では描かれています。アメリカ合衆国でありながら、この島は、白人のものではないという自尊心と、正しいことは正しいとするホコリに満ちた二人の高齢の男性のエピソードからです。

「コラッ、なにやってんだ!投げるんじゃない!(HEY, WHATTA MATTER
WITH YOU? DON`T THROW! PUT THEM IN!)」

 路線バスの車中でぼーっと前をながめ座っていたわたしは運転手の大声で
ハッとさせられた。怒鳴られたのはまだ幼い面差しを残した一三、四才の細身の少年だった。
 背格好の似たもうひとりと連れだって乗車してきた少年は運転席の脇にある金属製の料金箱に小銭を投げ入れたのである。コインは箱の上で勢いよく弾けカシャン、カシャンと音をたて、何度か跳ねてから箱の中に落ちた。それには構わず、少年は平然と後方の座席の方へ歩いて行くところだった。
 無礼な振舞いに腹を立てた運転手は怒りを露わにして少年の背中めがけ怒鳴りつけたのである。その声は車中に響き渡り、わたしたち乗客は少年を好奇の目で見やった。
「ソーリー」
 運転手に振りかえった少年は素直に謝った。
 バスの運転手、六〇才にちかい東洋系の男性。ふたりの少年たちは白人だった。
ホノルルのどこかを走るバスでのことである。”(本文より)

 この話を我が身に振り返って考えるとき、社会を構成する普通の人こそが、権力者とは異なっていても、自尊心と誇りを失わぬことが、真の意味での社会の精神性を支えてくれることを教えてくれます。

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