画廊に行くようになって気がついたこと その46
ここのところ、創作の身体性にまつわる話を続けています。
絵画と写真、映画の看板の昨今の比較と続けました。今回はデジタルペイントについてです。
最近は、ミクストメディアや写真の取り込みなど、様々な手法が展開しています。その中で、パソコンやiPADなどを使って映像を作成し、それをデジタルで出力する作品もでてきています。
デジタルの特徴は、指示したとおりにでてくるということです。
絵具を使って絵を描く場合は、どうしても物質としての具材の制限がかかります。その物質としての制限と自分の描きたいものとの間の葛藤が、作品と制作に絡まってきます。それは、一種の底なし沼のようなものですが、そこに、それを扱う人間の限界や個性が、染み出してくる源泉のようなものがあります。
作画の段階では、さまざまな個性が含まれているのですが、筆の運行の偶然性や、塗った時の時間差などのどうしようもなく生じる差異はキャンセルされるのでしょう。
指示と計算の世界を通すことで、作者の身体性のようなものは洗い流されてしまいます。
これは、印刷、3Dプリンター、写真、AIを考える際にも参考になる視点だと思います。