【画廊探訪 No.042】ささやかな寺域に広がる蒼天の夢 ―――七人展 梶浦洋平出品に寄せて―――
ささやかな寺域に広がる蒼天の夢
――七人展 梶浦洋平出品に寄せて―――
襾漫 敏彦
曼陀羅と聞いて、普段思いおこすのは、様々な仏の姿が描かれた画像であろう。けれども、それ以外にも、仏像を配置することで、立体的に表現する曼陀羅――羯磨曼陀羅――というものもある。
梶浦洋平氏の今回の出品は、薬師如来と十二神将をはじめとして、数体の仏像を配置して、一つのまとまった表現として表現として提示している。仏像や美術作品と一対一として面する今日的な見方でなく、東寺の21体の彫像が成す講堂や東大寺の戒壇院の空間に通じる感じ方を意図しているのであろう。
彼は掌に乗る大きさの仏像を並べる。そして、その細部にいたるまで丁寧に仕事をする。会場には天眼鏡が用意されていたが、それが必要な位の造形である。この事は、仏像に包まれた空間の内側に、意義を封じ込めようとする為でなく、そこをとりまく空間をも、変化させようとしているのであろうか。内に逃げるのでなく、空間そのものを外へと開放する為にこそ、眼に着色して力をこめ、細部を省くことをしなかったのだろう。
人と人が出会い語るとき、その間には何かがはいる大きさが生まれる。それを見聞きする人がいると、また何かがはいる大きさが生まれる。そして、それを包みこむ場所との間にも、形と大きさが生まれる。そう夢想した時、七人の若者が、伝統を縁(よすが)に、「物」との間に産みだした何かが織りなす空間の中央に、彼の十二神将と薬師如来が居るのも、あながち、偶然ともいえないだろう。
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梶浦さんは高い技術に支えられて、小さな仏像も彫られます。それらを集めて立体曼荼羅の可能にしています。