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【画廊探訪 No.050】黒く輝く金色の魚 ―――西山瑠依展に寄せて―――
黒く輝く金色の魚
―――ガレリア・グラフィカbis『五色』西山瑠依展に寄せて―――
襾漫敏彦
カントは『判断力批判』の中で、美は趣きであると述べている。美以外への心の関わりを極力排除した時、残るものは、その人の趣向でしかないということであるようだ。
西山瑠依氏は木版画家である。彼女は、版木を幾枚も彫り、それを紙に重ね刷りしていく。墨で加筆し、水彩の具をかけたりと、様々な技法を取り込んでいく。紙に油彩を施したり、胡粉を加えたり、濡らした布で墨を抜く。手を加え紙を傷めつけ、版を完成させていく。
版を重ね刷り技法のためか、作品は全体がくすんで、白地の所に靄がかかったようになっている。そのためか、色彩や意匠が、はみ出していく空隙は、白地でなく、むしろ重ねられた漆黒の闇の奥にこそ拡がっているようである。
彼女は、木の皮肌や草花を思わせるモチーフを描く。版の枠と木の幹から飛び出して、跳びかう黒の切片は、木々の隙間より漏れ出でる太陽の光にも思える。煙のように立ちこめた黒彩の霧の中で、木版と彫刻刀をふるいながら、西山氏はその中を泳ぐ漆黒の鯉をつかみとろうとしている。その黄金の輝きは、彼女の趣きなのかもしれない。
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