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【画廊探訪 No.123】砕き散った欠片(かけら)に灯った唯一の輝き ――折笠敬昭個展“Where is my simulacre?”に寄せて―――

砕き散った欠片(かけら)に灯った唯一の輝き
―――アートスペース羅針盤 折笠敬昭個展“Where is my simulacre?”に寄せて―――


襾漫敏彦

 出会いは、失われて記憶の断片となる。そこに在った筈の存在が、時とともに消されてゆく。残ったものは、欠片(カケラ)のような断片である。時は、僕を未来へと押し流していく。記憶の断片は、更に崩れてより小さな欠片へと砕かれていく。けれども、それをまとめていた存在が、君が、いた筈なのである。

 折笠敬昭氏は、日本画の画家である。彼は、筆にかける力の増減を通して、あたかも油彩のようなタッチで、画を作っていく。暗調の背景の中に残火を浮びあがらせるように、欠片(カケラ)を置くように描いていく。それは、まるで、散り落ちる直前の花弁のようでもあり、焼け残った骨片のようでもある。そして、それは、転じて、輪郭となり、ひとつの虚像を、思い浮かばせる。

 何かが起こるとき、多くのものをつなぎとめてまとめていた力が解ける。ひとつだったものが、バラバラな断片になる。戦禍、災害、疫病、社会を襲う災厄は、僕等がまとまった世界の存在でなくバラバラの断片であったことを気づかせる。事件は、名付けられあたかも一つのものとして扱われがちである。けれども事件は、現実の世界では、砕け散る硝子の破片のように、具体的な形をとる様々な事実として出現する。

 別離も又、まとまりを砕く。君が僕の前から遠ざかるにつれ、細部はぼやけ、輪郭の欠片のみを鬼火のように認めるようになる。欠片は、君の肉体の断片かもしれない。もしくは、僕の心の残骸かもしれない。それは、僕を、君を、呼びとめる。それは、一回性の叫び。そのかけがえのなさは、あったかもしれない願望として、過去の幻影を呼び起こすのかもしれない。


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折笠さんは、音楽活動を含め、多彩な活動をされている日本画家です。ツイッターなどネットで検索するといろいろと出てきます。

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