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【映画】オープニングの「長回し撮影」にゾクゾクさせられる映画。マイベスト3

U-NEXTで久しぶりに映画『黒い罠(Touch of Evil)』(オーソン・ウェルズ監督1958 アメリカ)を観ました。フィルム・ノワールの傑作の1本です。

この映画は何といってもオープニングのおよそ3分20秒に及ぶワンカット=長回し撮影が有名です。
私はどちらかと言えばカット(ショット)をリズミカルにつないでいく映画、最も敬愛する成瀬巳喜男監督、小津安二郎監督などの作品、海外ではアルフレッド・ヒッチコック監督、ビリー・ワイルダー監督などの作品が好みです。「長回し」で有名な溝口健二監督や相米慎二監督の作品は、もちろん好きな作品もいくつかありますが、全体的にはあまり得意ではありません。

しかし、例外的に『黒い罠』のオープニングの「長回し」には興奮させられます。
本作はタイトル及びスタッフ・キャストを紹介する「クレジットタイトル」からいきなり始まり、背景のタイトルバックの映像がそのまま映画本編のオープニングになっています。
撮影の流れとしては
・事件爆弾と時間のセットをする男の手のアップ
・男が走っていき、駐車場の車=オープンカーの後部トランクに時限爆弾を 仕掛ける
・車に乗り込む男女。車が走り出す
・車の俯瞰映像
・道を横切る別の男女の姿。マイク・ヴァルガス(チャールトン・ヘストン)と新妻スーザン(ジャネット・リー)が歩く姿を追うカメラ。
・メキシコとアメリカ国境の検問所で止まる車。その横を歩いて来るヴァルガスとスーザン。
・新婚旅行中の二人が道を歩いていき、立ち止まってキスをした瞬間、前方の車の爆発音(火に包まれた車の映像=ここでショットが変わる)

YouTubeで検索したところ、このオープニング映像がありました。
音楽はラテン調のビッグバンドジャズ(音楽=ヘンリー・マンシーニ)。
この音楽がメキシコ・アメリカ国境の夜の雰囲気を醸し出していてカッコイイ。本作はDVD化もされています。とにかく「長回し」撮影では本作がマイベストワンです。

『黒い罠』を最初に観た(確かビデオ)のはもう20年以上前だったと記憶していますが、観るきっかけになったのは、ある映画で紹介されていたからです。

その映画が「長回し撮影」マイベスト2の『ザ・プレイヤー』(ロバート・アルトマン監督 1991 アメリカ)
ハリウッドの映画会社を舞台にした実に面白いミステリー+ハリウッド風刺映画で、私は封切当時に映画館で観ました。その後DVDでも観たりと大好きな映画です。これもU-NEXTで視聴可能。
この映画もオープニングが映画会社の敷地での様々な人たちの動きと会話をワンカットで撮影していてその時間は何と8分6秒。屋外だけでなく、室内での会話も窓ガラスごしに撮影しています(映画卒業2の企画を話しているのは笑える)。映画の中では黒澤映画(確か『蜘蛛巣城』)の話も台詞に出てきます。

この「長回し」の中で、歩いている映画関係者が自転車を押している若者に「最近の映画は短いカットばかりだ。『黒い罠』の長回しを知ってるか」といった会話をします。私が『黒い罠』を知ったのはこの映画によるものです。

このオープニングもYouTubeにアップされていました。

最後のマイベスト3は日本映画で、前述した溝口健二監督の『新・平家物語』(1955 大映)。同じくオープニングの「長回し撮影」。
成瀬、小津作品と比較すると溝口作品は好みではないし、私の評価は高くないのですが、『新・平家物語』のオープニングのワンカット撮影はやはり凄いなと思います。時間としては2分くらいのものですが。

平安時代の屋外の市場の賑わいを、多くのエキストラを使って撮影しています。撮影はもちろん溝口組の巨匠カメラマン=宮川一夫。

「長回し撮影」は当然ながらクレーン撮影になるのですが、『新・平家物語』は「これどうやって撮ったんだろう」と感じるほど素晴らしい効果を挙げています。失敗したら最初からやり直しですからスタッフ・キャストとも相当な緊張があるでしょうね。

YouTubeにある『新・平家物語』の特報ではラストにオープニングのクレーン撮影が少し映っています。



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