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妹が難病を自覚してくれません③
妹の病気は、神経有棘赤血球症舞踏病という。初めて聞いたときには「ユウキョク…?」となったが、とげとげの赤血球の写真を見て「確かに刺あるわ」と納得した。
症例がすごく少なくて、患者会も家族会もないので毎日毎日ググって数少ない論文を読んでいた。確定診断のときにも鹿児島大学に送るね、と言われて「鹿児島大学のS先生が一番熱心に研究してるもんな」と納得したくらい。私が詳しいのでなくマジ情報が少ないのでそうなる。
病気が判明したのは2016年。当時私は転勤でしばらく地元にいなかった。前の年に祖母が亡くなり、妹に会う機会が増えて気がついた。うまく食べられない、すぐに転ぶ、物が拾えない。母は祖母の介護でいっぱいいっぱいで、当時結婚して家を離れていた妹の様子を細かく把握していなかった。祖母の通夜でお寿司を食べられない妹に「ちゃんとした病院に行こう」と強く勧めた。いくつかの病院を経て、2016年5月に病名がわかった。神経有棘赤血球舞踏病だった。
ペンが拾われへんねん、と八の字眉で言う妹。一度口に入れた食事を、舌の不随意運動で押し出してしまう妹。ぎりぎりまでヘルパーの仕事をして、自転車であちこちに出かけて転んでた妹。おばあちゃんが悪くなる間、私たちは妹の異変に気がつかなった。注意力散漫とかうっかりとか、結婚して環境の変化があって、ご飯が食べにくいなんてことがあるのかなあと思っていた。
ちゃんとしいや、と咎めたり叱ったりしてた事を思い出すと今でも胸がきゅうっとなる。できなかったんだ。
あの時はごめんね、というといいよー、と言われる。交通事故にあっててもおかしくなかったと思うが(実際に不随意運動がゆえに事故にあいやすくなる例はあるらしい)今こうして生きていてくれることがありがたい。生きてくれてるから私の後悔も反省もまあいいかと思える。