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年を重ねること



『今日がこれからの人生で1番若いのだから、何かを始めるのに遅すぎることなんてない。』

何かに挑戦するとき、一歩踏み出す時、

こんな言葉に背中を押されているが、

本当は1番若い今日という日が昨日に溶けていくのがとても怖い。




マラソンで靴が脱げたらちょっと戻って履けばいいけれど、

人生は靴が脱げてしまったら履きに戻ることができない。

新しい靴を見つけるまで、裸足で走らないといけないのだ。


人生はきっと、靴が脱げてしまってからでは遅くて、

靴が脱げてしまうその前に、

何度も何度も立ち止まって固く靴紐を結び直さなければならないのだと思う。


それでも気づいたら靴紐は解けているし、靴は脱げるし、きつく結びすぎて紐が切れてしまうことがある。


わかっていても、怖い。


靴が脱げてしまってから、その先の道を裸足で歩いていくのが怖い。



今までに脱げてしまった靴を数えるのも怖い。


新しい靴も怖い。


この先の道でまた靴が脱げるのも怖い。



年を重ねることに抗える者はいなくて、

みんな戻れない過去というものを蓄積して、

その上で生きているのだけれど、

そうだとわかっていても、



戻れない過去が積み上がっていくことが怖い。






きっと、だから人間の目は前についている。

いつか、いつの日か、恐れることなく過去を見られる日が来るまで、

目のついている場所に従って、

前に進めばいいのだろう。



脱げてしまったあの靴に再び出会えたり、

切れてしまった紐を直せたり、

解れた糸を新しくしたり、

絡まった紐を解いたり。

そんな日が来るはずだから。





年を重ねることは怖いけれど、


この怖さを拭ってくれるのも年を重ねることだけだ。



未来に怯えながら、過去に怯えながら、

戻ることのできないこの道で年を重ねよう。

きっと大丈夫。





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凪
毎日投稿続けています。その中に少しでも心に届く言葉があれば幸いです。