言語を失う私たち【AIと人類 #1】

私の興味関心の一つは、言語を取り扱う生成AIという存在の進歩が、私たち人類にどのような光を差し込み、逆にどんな影を落としているのかという点です。

生成AIが登場したことで起きたインパクトは数多くあると思いますが、私が面白いと思うのは、「言語」という文化的で民族的だったものが、資本主義の流れに直接的に組み込まれたという側面です。

chatGPTが99%英語で開発されているのはなぜでしょうか。生成AIの主要な開発プレイヤーであるopenAIやMicrosoft、Googleなどが英語圏の会社だからです。生成AIたちは、99%の英語に1%の日本語を入れると、日本語を喋れるようになります。

面白いエピソードがあります。

2022年以降、世界中の医学論文で「delve」というあまり聴きなれない単語が同時多発的に登場するようになりました。

なぜdelveというワードが医学研究者の間で急激に流行りだしたのか?実は、ChatGPTが口癖のようにdelveという単語を使うからでした。(多くの研究者はchatGPTを使って論文を書いている、というのも面白いです)

そこでテーマになるのが、なぜChatGPTはdelveなんてマイナーな英単語を口癖にしてしまっているのかという部分です。

実は、delveという単語は、ナイジェリアの英語で頻繁に使われる言葉だったのです。要するに、ナイジェリアなどの賃金が安い国の人たちにAIのチューニング作業をopenAIが外注した結果、その地方の人達からのフィードバックを受けたChatGPTにdelveという口癖が移り、結果的に世界中の研究者に移植されたのです。

このエピソードを聞いた時、面白さと同時に恐怖も感じました。個人的な話ですが、自分はもともとAIの研究をする前に言語学や哲学にどっぷり浸かっていました。

言語学には、使う言語によって思考や性格に大きな影響が及ぼされる という原則があります(あった気がします、、、)

英語を使うとややいつもの自分よりも態度がガツガツしてしまう、という人もいたりしますよね。

それは、英語が日本語のような遠回しな表現を用いない言語だからです。

先のエピソードのように、gptなどの生成AIを皆が当たり前に使う世界が訪れると、必然的に英語の良い点と同時に、悪い点も世界中の人間に実装されていきます。いずれは小さな子供もAIと会話するようになるでしょう。

感染症や世界的な危機(宇宙人の到来など)が起きた時、同じような思考を共有する人たちが人類の大半を占めるとなると、一体何が起こるのでしょうか。

これまでは、人類全体で各国ごとに全く違った対応をすることで、世界中で実験が行われ、結果的に最適解に到達するスピードが早かったはずです。(例えばコロナの時に鎖国する国・ワクチンを導入する・しない・何も対策しない国 に分かれたように)

恐ろしいのは、この言語統一の動きが、資本主義のロジックでどんどん加速しているという点です。

生成AIの進歩は、かけたお金の量が最大の燃料になっています。必然的に、話者が多い言語に集約されて行かざるを得ません。

私たち人類は知らず知らずのうちに、種としての大きな転換点を迎えているのかもしれません。

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