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孤独について/原民喜に触れて

外出自粛になって、かれこれ1か月と少し。先日、こんなツイートをしたところ、割合多くの方からファボを頂きました。

虚無感と書いたけれど、孤独感にも似ているかもしれません。

持論ですが、すぐには解決できない鬱屈感に対しては肉体の酷使で対抗するに限ります。大量に汗をかくと心のモヤモヤが嘘のようになくなりますので本当にオススメ。

”太宰のもっていた性格的欠陥は、少なくともその半分が、冷水摩擦や器械体操や規則的な生活で治されるはずだった。”『小説家の休暇』三島由紀夫

わかるわあ、ミシマっち!そうよねえ。でもさ、でもさ!ミシマっちのそのマッチョな肉体って心の弱さの裏返しみたいなところあるんじゃない?だって少なくとも私はそうだよ!聞いてよ!私、鬱屈が強すぎたから身体機能が爆上がりしたんだよ~。などと、ミシマと一方的女子トークを交わしたところで、強烈すぎる孤独を持った究極の繊細作家を紹介します。さしものミシマは彼には強く言えるまいよ!


原民喜~死と愛と孤独の肖像~

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大なり小なり作家は孤独を担保に作品を制作しているのではないでしょうか。数いる作家のなかから「孤独」をテーマに、原民喜を紹介したいと思います。

おそらく生まれつきめちゃくちゃ繊細だったと思われる原。動きもぎこちなかったせいで、子ども時代はいじめのような目にもあっていたようです。学校では誰とも口をきかず、成人してからもかなりの無口。変人。そんな原の人生は「死」で彩られています。愛する父、そして姉の死。人生最愛の妻の死。そして、広島での被ばく体験という大勢の人の死…。

原民喜の代表作、小説「夏の花」。これは、原爆投下の日を描いた短編です。作者の内面的な感情についてはほぼ触れず、淡々と状況のスケッチが続くとても静かな作品です。愛する者たちとの別離によって生きる意味を見出せなくなっていた原が、大量の死を目の当たりにすることで生きる意味を見出すその運命は皮肉的です。

生涯に渡って孤独感を抱えていた原ですが、その作品には一貫して透き通るような美しさと、どこか懐かしく思えるような感覚があります。現実が辛ければ辛いほど、作品が美しくなる系の作家と言えるかもしれませんね。

個人的には最期を迎えるまでの短い時間、若き日の遠藤周作との交流が大変心温まってとても好き。無口で内気な原、やんちゃ者の遠藤、そして少女タイピスト・U子の奇妙な3人組エピソードはかなりキュンときます。


というわけで…もしご興味をもたれましたらまずは「原民喜~死と愛と孤独の肖像~」梯久美子(岩波新書)をお読みください。「ああ!もう民喜!」と思えるエピソード満載で、一気に読めること間違いなし。そしてそのあと「夏の花」原民喜(岩波文庫)を読まれると、かなりグっとくること請け合いです。


孤独はすべてのクリエイティブの源。でも、そういうのあんまり感じたくないんでー、自分は筋トレに励みま~す。ではまた~!

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