見出し画像

人の不幸は蜜の味?~誰の心にもいるシャーデンフロイデ~

あなたは「シャーデンフロイデ」という言葉をご存じでしょうか?
日本語でいうところの「人の不幸は蜜の味」というもので、ドイツ語では「シャーデン(不幸)、フロイデ(喜び)」というそのまんまな言葉になります。

他人の離婚・浮気・不倫などのゴシップが注目される理由のひとつとしても考えられています。

今回はその「シャーデンフロイデ」について、取り上げていこうかと思います。


1.「自分は得をしないのに、他人の失敗が嬉しい」?

シャーデンフロイデの特徴は、「自分が得しなくても嬉しい」というところです。つまり、誰かの不幸によって損得が生じなかったとしても、喜びを覚えているわけです。

例えば、予約戦争に負けて満席になったイベント会場があったとしましょう。「誰かの都合が悪くなって行けなくなり、代わりに行けるようになったから嬉しい」というのであれば、得をしているので喜びが発生するのは尤もでしょう。

しかし、シャーデンフロイデは「損得関係になくても嬉しい」という気持ちを示します。

「他人の不幸は蜜の味」というと、何だか性格が悪い人のように感じる人もいるのではないでしょうか。

しかし、それは誰しもが持っているものであり、本当は誰もが向き合うべきものではないかと考えています。
その理由は以下の通りです。

2.誰でも「他人の不幸」を甘く感じる?

「いやいや、自分はそんなことないです」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとお付き合いください。

沢田匡人氏によるシャーデンフロイデの研究論文では、以下のような研究成果が書かれています。いずれも大学生を対象とした調査の結果です。

「復讐心が高い人は、実際に恨みを晴らすような行動をとらなくとも、当該の復讐心とは無関係な他者の不幸を喜ぶことによって溜飲を下げている可能性が示唆された」

(引用:小中学生の制裁的いじめ加担における恨み感情とシャーデンフロイデの役割

「潜在自尊感情が高い者ほど、妬ましい(有利な状況にある)他者の不幸を喜びやすいことが明らかとなった」

(引用:中学生のネットいじめ加担と被害者の関連性研究

研究の内容はいじめに関するものとなりますが、今回はそちらの本題は少し置いておきます。
注目すべきは、「復讐心が高い人」「潜在自尊感情が高い者」ほどシャーデンフロイデの傾向が強いという点です。

潜在自尊感情については論文内で明確に定義されている記述を見つけられなかったので、ざっくり「自己への肯定的または否定的な感情」としましょう。
(もっと詳しく知りたいという方は、ぜひ卜部明氏の「自尊感情の諸側面Ⅱ」を読んでみてください! 研究一覧も掲載されています)

さて、この潜在自尊感情ですが、これは顕在自尊感情との組み合わせ次第でもあります。ただ、研究の目的などからすると、

「自己評価の高さ」と言い換えることができそうです。

復讐心の強い人はそのままですね。

では、どうして自己評価が高い人・復讐心の強い人ほどシャーデンフロイデの傾向が高く出るのでしょうか。

3.不満や妬みは誰でも持っている

ずばり、「不満や妬み」が強い人ほど、シャーデンフロイデの傾向が強いのだと考えています。

自己評価の高さと他者からの評価に差があったら、不満が生じる場合もあるでしょう。誰かにあるいは社会に仕返しがしたいと感じるほどの経験をしたのなら、成功している人や幸せな人を妬む場合もあるでしょう。

しかし、これらはすべて特殊で特別で、普通なら有り得ないのだと断言できるほどのものでしょうか?

ちょっとした嫉妬心、物事への不平不満、満たされない気持ち、言いようのない苛立ち、もやもやする不公平感、解消できない理不尽さ……誰でも何かに、そしてどこで感じたことのある感情ではないでしょうか。

何をやっても感謝されない。どんなに頑張っても評価されない……そういう気持ちになったことがある人自体は、珍しくないのではないでしょうか。

そこから「他人の不幸」を喜ぶような精神状態になるのだとすれば、「シャーデンフロイデ」が特別に異常でおかしなことではないといえるでしょう。

大切なのは「他人の不幸」をエンタメにして、消費して面白がって、忘れてしまって、流してしまわないようにすることです。
もし、「他人の不幸」を楽しんでいて喜んでいる……そんな自分に気が付いたら、今の自分と少し向き合う時間が必要なのではないでしょうか。


シャーデンフロイデは、自分の状態を測る指標だといえます。「他人の不幸」に喜びを感じるとき、一番傷ついているのはあなた自身の心なのかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!