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意思決定のスピードと仮説の精度を高めるアナロジー思考とは?

こんにちは、独立して3年目の経営コンサルティング、顧問業をやっている松本です。

新卒でコンサルティング会社に入社し、マネージャーを経て、ベンチャー企業にジョイン。役員として数年経営全般に関わり、退任後に複数のベンチャー企業の取締役、アドバイザーをやっています。

経営や投資を通じての日々の学び、気付きや自分の頭で考えたことをnoteにまとめていきます。

◎ はじめに

もし今までの記憶や経験がリセットされて、もう一度社会人人生をやり直さないといけない状況になり、どれか一つだけ持ち越し可能なスキルを選んでいいいと言われたら、私は迷わず『アナロジー思考』を選択し、回答します。

今回のnoteでは『仮説の精度と意思決定のスピードを高めるアナロジー思考とは?』について、以下のテーマに沿ってときほぐしながら解明してきたいと思います。15分程度お付き合いください。w

・アナロジー思考とは、『観察から複数の事象間に存在する法則性を導き出して、課題解決に向けてその法則性を実現可能にする思考法』

・アナロジー思考の強みは、意思決定のスピードを保ちながら、初期仮説の精度を担保できること

・ アナロジー思考の鍛え方
 1. 大量のインプットパターン認知の蓄積
 2.時間軸視野空間軸視野で比較する癖を持つ
 3.上位概念(抽象)⇆ 下位概念(具体)を繰り返す訓練をする

今まで培った知識や経験をもっと存分に力を発揮したいビジネスパーソン、最近会社や部署が変わり、今まで通りの成果や期待が出せるか?不安や悩みに直面しているビジネスパーソンは、ぜひご覧いただければ幸いです。

◎ たまーに聞いたことあるアナロジーってどんな意味?

まず、アナロジーの語源や一般的な意味について説明していきます。

アナロジーとは、ギリシア語のアナロギア analogia〈比〉に由来する語源であり、〈類推〉〈類比〉〈比論〉などと訳され「類似している、似通っていること」の意味があります。

また、複数の事象間に共通または並行する要素や関係性があること、またそのような想定下に行う〈推論〉と訳されます。

長くなりましたが、簡単にアナロジーを説明すると『ある複雑な事象を説明する際に、同じ要素や関係性をもった、身近な事象に例えて、説明すること』です。

例えば、 PC(パソコン)の機能を人間の機能を例えて話すと

   <PC>             <人間>
ハードウェア   →  基礎能力(地頭、反射神経、体力)
OS          →  知恵(知識を組み合わせて生かす力)  
アプリケーション →  知識(情報理解、処理する力)

といったような使われ方、活用法になります。

ビジネスの現場のおける使われ方として、アナロジー思考とは、まだ深く知らない事象や経験していないことを既知の事象に当てはめて、推論していく思考法になります。

未経験の分野や未来におけるビジネスの機会を見つけて、チャンスを最大化させることが出来る、これから起こるであろうリスクを回避、最小化できる思考法だと理解してください。後ほど詳しく説明していきます。

◎ これからの時代、なぜ必要とされるのか?

まず、時代背景からお話しすると、ここ最近、社会情勢やビジネス環境において将来の予測が非常に困難なことからVolatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の4つの頭文字から取ったVUCA(ブーカ)時代と言われております。

VUCA時代において慎重さや公正さによる意思決定や時間をかけて綿密な計画を立てるやり方では急激な変化や突発的なリスクに対応できないため、意思決定のスピードと初期仮説(仮の答え)の精度が求められます。

一般的に意思決定のスピードと初期仮説の精度はトレードオフの関係にあり、緻密な計画には必ず「時間と労力」がかかります。

成長が約束され、安定していた、変化が予想できる環境下においては、このような慎重さや公正さによる意思決定や綿密な計画性を重視した思考でいいんですが、環境変化が急変している、未来予測をすることが非常に困難なシーンでは、役に立ちません。

この問題を解決する手段の1つが、意思決定のスピードを保ちながら、初期仮説(仮の答え)の精度を担保できる解決策が、アナロジー思考になります。

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計画の精度や未来を予測を向上に目を向けるのではなく、過去の市場の流れをトレースして瞬時に初期仮説を構築し、高速で意思決定するスキルが問われています。

過去の類似市場や業界を調査して、これから起こるであろう確度の高い未来や大きな流れを掴み、分析することで、新しい市場の可能性や産業構造の変化を見通すことができるようになります。

つまり、これからどんな変化、波が起き、自分たちの環境下においてどんな影響を及ぼすのか?現在に意識をフォーカスし、変化が起きたときに、素早く柔軟に対応したり、変化が起きる前の予防対応しておく。

それがこの変化の激しい時代に生き残る、たったひとつの方法であり、大きく貢献する思考法の1つがアナロジー思考だと確信しております。

◎ アナロジー思考とは一体なんなのか?

前段に紹介した言葉の解釈も含め、アナロジー思考とは何か?まずシンプルに、シャープに短い言葉で表現すると『過去の事象や異なる分野から導き出した法則性を、これから起きることや未経験の分野または自分野に応用する思考法』になります。

わかりやすく、アナロジー思考における一連の思考プロセスを以下の図で表現してみました。

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・観察とは、事象を正しく認識して識別すること
・抽象とは、事象を構成する普遍的な要素と要素の関係性を可視化すること
・モデル化とは、枝を切り落とし、幹の要素のみに単純化すること
・比較とは、複数の事象間であるモデルとターゲット(解決したい課題やテーマ)を照らし合わし、共通点と相違点を抽出すること
・流用化とは、相違点を切り落とし、共通点のみに剃り落としたモデルにすること
・具体とは、ターゲット分野で機能するモデルに個別化、チューニングすること
・検証とは、個別化したモデルを実行して、再現可能なことを確かめること

これら一連のプロセスから『観察から複数の事象間に存在する法則性を発見、導き出して、課題解決に向けてその法則性を実現可能(個別化)にする思考法』と言えます。

◎ アナロジー思考が身につくと何ができるのか?

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アナロジーができない人と比べて、一つの体験から得られる学びの質や量が大きく違いがでます。

転職後の会社や部署を移動しても直ぐに成果を出せるたり、人間関係もスムーズ構築できるビジネスパーソンの特徴として、アナロジー思考が高い傾向にあります。まさに「1を聞いて10を知る」とはアナロジー思考の高い人に使われる言葉だと思います。

逆に転職後や部署移動後に活躍できない人の傾向として、新しい環境において全て個別事象として識別してしまい、今までの経験やスキルを転用できるレベルまで法則性を導き出していないことで転用できないケースが多くあります。今まで培った経験値を、また振り出しに戻り1から貯める必要があるため、その結果、成長速度に大きく乖離が生まれてきます。

◎ 具体例な活用方法

これからアナロジー思考の活用方法についてビジネス事例を踏まえて説明していきます。

例えば、ブロックチェーンを活用した新しいビジネスを立ち上げる、上場できるビジネスを構想するテーマを与えられたとします。まずはじめに着手することは、どこかの分野で似たような先行事例、成功パターンや上場したケースがないか?時間軸視野(過去、歴史)と空間的視野(異分野、海外)を広げて、類似パターンを見つけ出します。

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ブロックチェーンとは何か?定義や意味といった表面的な理解ではなく、従来の技術との違いやこの技術が実現された際の社会的影響度を把握します

理解していく中で、インターネットに変わる新しいテクノロジーの可能性を秘めている、従来の技術では実現出来なったことを実現可能にするイノベーションと言われていることがわかってきます。

あれ?これ以前にも同じようなことや似たようなことを聞いたことがあるな、と思い当たる節があると思います。ここ数年に台頭してきたAI、ドローン、ゲノム編集、VR/ARといった新しいテクノロジー、ソリューションと何か似ていないか、近くないかなと空間的視野(異分野、海外)に基づいて想像力を働かせます。

他にもブロックチェーンの技術を用いて、既にビジネスを展開している企業の事業構造や収益モデルを調べます。

例えば、ネット広告やテレビのCMで暗号資産の取引所をやっている企業が数社程度あったなーと、そこから時間的視野に基づいて、似たような構造として証券取引所の歴史や変移に注目してみます。

今現在、証券取引所やネット証券企業は数社程度しか残っていない、そうなるとブロックチェーンは暗号資産の取引所などのToC向けのビジネスを参入するのは、障壁が高そうだなとか、今からだと大きいな投資や資本持っていないと戦えない、勝算がないと仮説が立てられます。

じゃToCがダメなら、次はToB向けのサービスで技術を生かした企業の先行事例はないのか、公開している情報はないかと行きつきます。調べていくとPKSHA Technology(AI企業)とACSL(ドローン企業)といったここ数年で上場したスタートアップ企業がヒットしてきます。この2社のビジネスの立ち上げ方や成長プロセスを調べていくと、販売先のターゲットを大手企業に絞り、まずPoC(概念実証)案件で入り込む。その後、共同開発や業務・資本提携を実施して、徐々に事業拡大していた共通項や構造だとわかってきました。

他にも国内の事例だけではなく、海外で先行しているブロックチェーンの成功事例や成長プロセスについて詳しく調査して行きます。

調査の結果、異分野(AIやドローン)での成功モデルからブロックチェーン業界に置き換えて、個別化するにはどのような転用やチューニングが必要なのか?まずは大手企業向けにブロックチェーンのPoC案件でビジネス展開が筋が良いという推論(初期仮説)をベースに深掘りを繰り返し精度を高め、同時に意思決定のスピードを高めていくイメージです。

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以上より、アナロジー思考を実践する時は、以下のSTEPで進めて行きます。

STEP1:解決したい課題を設定する(今回の場合、ブロックチェーンを活用したビジネスを立ち上げる、上場できるビジネスを構想する)

STEP2:この状況と似たような構造を持って、過去にどこかで達成した、成功した事例はないかを調査する(ブロックチャーンは新しいテクノロジーであり、技術革新の可能性がある。別業界における新しいテクノロジー企業で飛躍した成功事例はないか?調査する)

STEP3:この2つのモデルを比較して、照らし合わす(ToCでやるべきか?またはToBでやるべきか?またどこ<販売先>を攻める、何<PoC>からやるべきか?の方針を定めること)

STEP4:課題を解決するための共通点は何か?相違点は何か?の視点で整理して、流用できるモデルに落として、個別化する(共通点からまずはToBで、大手企業を主軸に販売先を検討し、新しいテクノロジーということもあり二人三脚で進めるPoCから着手してみる)

この業界の未来はこうなるだろうと予測を立てる時や新しい事業機会を検討するときは、このように「時間軸視野(過去、歴史)と空間的視野(異分野、海外)から類似ケースを持ってきて、比較と照らし合わしを繰り返し」再現性を高める調査、分析を徹底的にやっていきます。

その後、推論(初期仮説)で作られたアナロジーがほんとに正しいのか?実際のビジネスを通じて検証していきます。

◎ アナロジー思考の鍛え方

最後にアナロジー思考の身に付け方や鍛え方について解説していきます。

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1/ 大量のインプットとパターン認知の蓄積

アナロジー思考の精度は、インプット(情報)の集積で決まります。
そのため、日々インプットする絶対量を増やすこと、そして興味ある分野から、とにかく大量に取り込むこと。

そもそもインプットの絶対量が足りないと発想の幅も広がらないし、アナロジーの精度も高まりません。どんなに素晴らしい頭のキレや論理的な人でも転用元である情報素材が知識のベースがないとアナロジーの発想に至りません。圧倒的な量のインプットを毎日シャワーのように浴びることをオススメします。

また、インプットを何も考えず、ただ受け取っていただけでもダメです。日々発生する様々な事象を体験していく中で、ただ面白い、凄いで終わらせず、これは一体どんなパターンなのか、何が面白く、何が凄いのか、整理するとどんなことが言えるのか認知、認識することがとても大切です。

そして、認知したパターンや整理した学びを自分の業界、分野に置き換えてみると、どういうことが初期仮説として考えられるのか、もう一歩踏み込んだ自らを問う癖を持ってみることです。

2/ 時間軸と空間軸で比較する癖を持つ

これ何か似ているな?や解決しないといけない課題に遭遇した時に、以下2つの軸をベースに解決策やアイデアを導き出します。

1つは、時間的視野。
時間的視野とは、過去や歴史を遡って眺めて見ること。新しいことを成し遂げたい、また何か大きな課題に遭遇した際、過去に遡って類似のケースを探し出し、どのような対策を実施して、その結果課題は解決されたのか?それとも失敗したのか?徹底的に調べてみます。解決されたケースがあれば、何が成功要因であり、逆に失敗したケースに関しても、どうすれば解決、回避できたのか?分析することで直面している課題解決のヒントを得ることができます。

2つは、空間的視野。
空間的視野とは、自国や同業界、分野ではなく、海外や異業界、分野を眺めて見ること。海外で成功したビジネスを日本版にカスタマイズして展開する経営手法のように、自国や自分野ではなく、海外、異分野に目を向けると、同様の構造をしていたり、今後押し寄せる流れが理解でき、似たようことがこれから起こることがわかってきます。これも同様に、どのような対策を打って、結果どういうことが起こったのか、うまく行ったのか?何がダメだったのか?徹底的に調べてみます。自分たちの置かれている状態や構造を照らし合わせして、この先どうすればいいのか?どんな打ち手が有効的なのか?解決策のヒントを得ることができます。

3/ 上位概念⇆下位概念の繰り返し訓練する

アナロジー思考は、上位概念(抽象)と下位概念(具体)を繰り返した回数に比例して向上できます。

・世の中で起きている事象をよく観察すること
・複数の事象の共通点と相違点を発見すること
・共通点より転用機会を見つけて検証して見ること

多少センスもありますが、それ以上に日々の積み重ね、鍛錬が差を産むと考えています。ただ「下位概念」から「上位概念」「上位概念」から「下位概念」を往復する思考プロセスは言葉で表現することは簡単ですが、行うは難しで、思考エネルギーの消費は激しいです。

普段の生活から

・抽象とは、つまり、要するに、こういうことでは?
・比較は、これは何かに似ているな?◯◯は共通点で□□は相違点では?
・転用は、例えば、こうすれば使えるのでは?

このような思考癖や口癖をつけて、日々の発見の量や質を最大化し、思考体力を身に着ける必要があります。

以上、アナロジー思考力は、パターン認知の蓄積量で決まってきます。

これ何かに似てるな?これはこういうことでは?と頭にひっかるレベルまでインプットを蓄積し、時間軸、空間軸の視野で分析して、「下位概念」⇆「上位概念」を繰り返すことで誰でも身に付く能力だと思っています。
習慣化するまで大変だと思いますが、コツを掴み、慣れると非常に楽しい思考トレーニングのため、是非身に付けて欲しいです。

◎ まとめ

今回の記事の内容を、箇条書きにしてまとめました。

・アナロジー思考とは『観察から複数の事象間に存在する法則性を発見、導き出して、課題解決に向けてその法則性を実現可能(個別化)にする思考法』
・アナロジー思考の強みは、意思決定のスピードを保ちながら、初期仮説の精度を担保できること
・ アナロジー思考の鍛え方
 1. 大量のインプットパターン認知の蓄積
 2.時間軸視野空間軸視野で比較する癖を持つ
 3.上位概念(抽象)⇆下位概念(具体)を繰り返す訓練をする

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