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IVS2024を終えて、日本の現在地

2024年7月4-7日と3日間に渡り開催されたIVSに参加してきました。初日の「スタートアップ業界のM&Aの現在地」というセッションにも登壇。満員御礼、立ち見も数多くでるセッションになりました。ありがとうございます。

15,000人参加という超大規模さ、政治家や官僚などが数多く参加していたことは、メディアで中心的に報道されていました。まさに、裾野の拡大、国家のコミットは参加していても強く感じる点であったことは間違いありません。テーマ的にも一時のSaaS一辺倒から、AI実装、ディープテック、サステナビリティが当たり前になり、領域の拡大、グローバルトレンド、日本の強みなどを体現した形で広がりを感じました。それ以外にも私なり、いくつか印象に残った点があるので、いくつかご紹介しておきたいと思います。


① M&Aを当たり前に

如何にしてIPOを目指すのかいう話ばかりだった7年前の印象から、提唱し続けてきたポストIPOスタートアップの重要性、連続的に議論する必要性は急速に浸透し、当たり前になってきつつある印象があります。一方、M&Aについてはサブアジェンダ感が強く、IPO>>>M&Aという印象が色濃くでた日本型エコシステムでしたが、今回のIVSでは過去最高にM&Aという言葉を各セッションやお会いした方から聞いたように思います。

GSのM&Aチームで長年M&Aに関わってきたわけですが、シニフィアン創業時の2017年当時はM&Aというテーマに対する感心の低さもり、専門家であったにも関わらず、お話をする機会が極めて限られていた印象があります。今後はますますエコシステム全体でM&Aに対する議論が活発化することと思いますし、そうなっていくべきだと感じています。長くなるので割愛しますが、M&Aと一言で言っても一様に議論していいテーマではなく、さまざまな角度から消化していくべきテーマだと思います。

② スイングバイIPOという処方箋に注意

AI等がバズワードなのは周知の通りですが、今回驚くほど「スイングバイIPO」という言葉を耳にしました。当然ながらソラコムの事例が注目を集めたからに他なりませんが、言葉が一人歩きしすぎないように気をつけなければいけないなと思います。

スイングバイIPOは誰にでもメリットがある万能手法ではないですし、積極的に目指していくものでもないと思います。また、成功させていくためには様々な留意点があり、ポイントを押さえきれず実施すればうまく行かない手法だと思います。IPOやM&Aと同様にあくまでも手段。そして多様な論点があるからこそ、自社に当てはめて多様な選択肢から戦略的に考えていくことが不可欠です。

③ 宇宙領域が身近に

元宇宙業界の私にとって、今回は最も宇宙の話を聞いたIVSだったかと思います。それだけ社会の感心が高まり、時代が追いついてきたからだと思います。iSpaceに続き、私も投資家であるアストロスケールの大型IPOも影響していると思います。

ただ、宇宙分野については時代は追いついてきましたが、まだまだ入り口の入り口だと思います。より多くの技術や資本、人材を集約していく必要、グローバルを巻き込んでいく必要があることから、日本のスタートアップの未踏分野だからこそ、多くの未来に活かせるチャレンジが多数含まれています。中々エコシステム全体に共有されていない知見ですが、積極的に広げながら圧倒的な成功事例を作っていきたいと気持ちを強く持ちました。

④ 自立分散型運営

私の昔の日本のスタートアップの印象は一言で言えば「村社会」でした。ごく小さい、集約的、集権的な印象です。今回、IVSを通じて大きな変化を感じました。「脱村社会」に向けて、中央集権的な雰囲気から自立分散的な雰囲気に変わっていました。

各セッション、サイドイベントが同時多発的、かつかなりデリゲーションされながら、各運営者の力量に委ねられていました。IVS運営側はルールメイクとノミネーション(誰に任せるか)を徹底している印象でした。まさに、大規模組織の経営そのものだと思いました。

今後、ローカル含め日本のスタートアップも分散的になっていくと思いますから、自立分散はエコシステム全体にますます浸透していくのだと思います。

⑤ ダイバーシティの拡大

トレンドとして新しい話ではなりませんが、外国人、テーマ、所属、年齢、性別など、ダイバーシティはますます拡大していました。特に、外国人や若者は圧倒的に増えてきた印象です。

だからこそ、私自身もどんどん新しい出会いを求め続けないと、この拡大し続ける多様なエコシステムの全体像を見失うなと感じました。あるコミニティや領域で当たり前のことは、全く他では当てはまらない。また、良い点は取り入れていくべきだが、違いを意識しないと単なるコピーではうまく行かない。そういう時代がやってきています。

⑥ 分散するからこそ、如何に集約していくか

シードやアーリーを中心にVCは数を増やしており、同時に起業家も拡大しています。数千万円のシード投資を受ける難易度は10年前に比べると大きく下がってきているように思います。一方で、先日発表させていただいたSmartHRの214億円のラウンドのような大型ラウンドの組成の難易度は引き続き高く、実施できるスタートアップもほんの一握りであるのが現状です。

国際的にみても、日本のスタートアップのグローバル成功事例はまだほとんどなく、リソース面・資金面でも他国を圧倒できるわけではありません。自立分散型に向かっているからこそ、人的資本も財務資本も分散化していく傾向を強く感じました。これは裾野の拡大という意味では最高の結果ではあるのですが、大成功事例を目指す際にはデメリットが大きくなってしまいます。

ひと昔前は複数人で共同創業し、VC側の資金不足もあり単独投資ではなく共同投資(元気玉作戦)が当たり前だったことが、足元では三人の共同創業ではなく、それぞれで3社のスタートアップが生まれる状況です。入り口からかなりの分散傾向が働いています。

一方、ジョーシスやnewmoのように創業時に大規模資金や経験豊富なスター経営を集め、一気にグローバルや社会インフラ化を目指す事例も出てきました。M&Aを当たり前にしながら、集約化のレバーもエコシステムで強化していかないと、分散型で過当競争、競争量分散という国際競争力という観点でも、VCの個社リターンの観点でも弱部組む方向に向きかねない点は強くエコシステムとして意識すべきテーマだと思いました。

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村上誠典 | スタートアップ経営
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