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ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚

ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚を読了。日本の離婚後の親権制度の問題やステップファミリーの方が直面する問題が整理されて書かれており、とても良い学びとなりました。

この本の発売日が2021年の1月8日。親が離婚したあとの子どもの養育をめぐる課題の解消に向けて、上川法務大臣が、必要な法律を改正するため法制審議会に諮問することを明らかにし報道されたのが1月15日。

この時期に発売された事に大きな意味と価値を感じます。

先ず本の帯にある、子どもは「新しい親」を求めていない!が非常に目を引きます。継親の善意が子どもを追い詰めやすい、「親代わり、良い親にならなければいけない。」日本の伝統といえる家族観が親も子も不幸にしている。現実を受け止めた先に見える、親子が幸福に生きる家族の形とあります。

この本が素晴らしい点は今の日本社会における離婚や再婚、家族観の問題が子ども目線で書かれている事です。

子どもが親を失わない権利ー国連「子どもの権利条約」

子どもを、単に保護の対象ではなく、独立した権利主体とみなして、新しい原理を明確に世界に示したのが国連の「子どもの権利条約」です。新しいと言っても、1989年に国連総会において全会一致で採択されてからすでに三十年以上が経っています。2019年時点、国連加盟国数を上回る196の国と地域で締約されている人権条約です。日本もこの条約を批准しています。批准した1994年から数えると、もう四半世紀以上が経過しています。

この条約の重要なポイントは、親が子どもを所有するのではなく、子どもが親を失わない権利を持つという発想の転換にあります。この条約によれば、子どもは、自分の父と母をきちんと知り、父母に養育される権利(7条1項)を持っています。

そして父母から切り離されない権利(9条1項)、そして一緒に暮らせない場合でも親と交流して関係が保たれる権利(9条3項)を持っています。また、自分の人生に影響を及ぼす大事なことについて自分の意見を表明する権利(12条)を持っています。そして、子どもの最善の利益に反しない限り、こうした権利を保障するのが国の役割であると、この条約は名言しています。親の離婚や再婚いよって、子どもの権利が損なわれないような社会を作ることが国家の責務とされているのです。

親の離婚・再婚のために、子どもが親の一方から養育されなくなり、交流もなくなり、さらにはその親の事を何も知らないような状況、さらに子どもの意見を聞かずに離婚や再婚が簡単に成立してしまう状況が放置されているとしたら、この条約に反していることになります。条約を締結した国には、そうならないように制度を整備・点検する責任があります。日本はこの責任をしっかり果たせているのでしょうか。

ステップファミリーの本で子どもの権利条約の話から、2011年の民法766条改正、24カ国調査、父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について、欧州連合欧州議会本会議が日本政府に厳しい要請を決議したと言う件まで書かれているとは思いませんでした。

この決議では「日本において親による子の連れ去り事例が多発発生していること」から生じる「子どもの健康や幸福への影響」についての懸念を表明し、「日本の当局に対して、子どもの保護に関する国際法を履行し、共同親権を認めるよう法制度の変更」を求めています。

父母との関係継続が子どもたちを支える

親の離婚を経験した大学生の自己肯定感が低く、親和不全が高いことを示した研究は、離婚後に別居親との面会交流があるグループだけを取り出して比較すると離婚経験がないグループと差がないことを示していました。

親の離婚を経験している大学生はそうではない大学生より親子間の信頼感が低いことを見出した研究でも、面会交流がある場合は父親との信頼感が高く、とくに宿泊つき面会交流は満足度が高いことが導かれています。

大人の願望から「子ども最優先」へ 単独親権の強制を止める

法律などの社会的制度をどのように改革すべきかについて、重要な点に絞って提言します。離婚後も共同親権の継続が標準的なパターンとなるような法改正を提案します。離婚後の単独親権制の存在が、「離婚→ひとり親家庭→子連れ再婚→ふたり親家庭」という固定観念の基盤となっています。子どもが一つの世帯や戸籍だけに所属するものという明治以来の家族観は改訂されずに現在まで温存されました。そのために、親権者である両親とつながっていた子どもから親権者の一人を剥奪しない限りは離婚が成立しないし制度が子どもの権利条約にいかに反することか、日本社会で認識が広まりませんでした。

この単独親権制が、親権をめぐる両親の争いを構造的に引き起こすので、協力的な離婚後の父母関係形成が妨げられています。共同親権が離婚後の標準となれば、まずは父母が子どものために対等に協力するための土台ができます。親権を失わずに離婚するために、親の一方が子どもを連れ去るような行為は、無意味かつ不可能になります。日本政府がそれを黙認していると国内法から非難されることもなくなるでしょう。

配偶者のドメスティック・バイオレンスから逃れるためと言う理由から、単独親権制の存続や子どもの連れ去りを正当化する議論を目にします。しかし、配偶者や親からの暴力・虐待・ハラスメントは、両親が婚姻関係にあるか、離婚したかに関係なく、つねに社会的に許されない行為です。国家は、必要があれば家族に介入し、そうした行為の被害から個人(大人も子どもも)を守る義務があります。離婚制度とは独立して、そのための法制度などをしっかりと整備しべきです。

それを明確にした上で更に言えば、厚生労働省の2016年「全国ひとり親世帯等調査」に基づく限り、離婚後の母子世帯全体(1,817ケース)のうち面会交流をしない理由として「相手に暴力などの問題行動がある」からと回答したのは0.8%(14ケース)にすぎません。

問題の大きい親からは親権の停止/喪失を裁判所が決定できる制度をきちんと機能させるのと同時に、離婚後の共同親権制度実現を急ぐべきです。

この本は離婚後の親権制度の問題だけではなく、協議離婚の問題についても触れています。

「協議離婚」の大掛かりな制度改革が必要です。共同親権が可能になっても、それだけで子どもの福祉が保証されるわけではありません。単独親権制と並んで世界的にも珍しい日本の協議離婚が大きな抜け穴となっているからです。

抜粋したものを資料化して妻に渡したいなと感じました。離婚や再婚を考えている方、これから結婚を考えている方にも読んでいただきたい本です。子どもたちの心と未来を守るために、日本の古い家族観を変えていきたいですね。



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