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生きる#1 初めて目の前で『止めさし』を見た日のこと。

パーン!

『その瞬間』はあっけないものでした。

わたしが『止めさし』の現場に初めて立ち会わせてもらったのは、地域おこし協力隊の2年目の2018年3月。
『止めさし』とは、くくりわなや箱わな等で捕獲された野生動物の「とどめ」を刺す行為のことを言います。
(そもそもなぜ狩猟免許を取ることになったかは・・・また別の機会に)

それまでわなの見回り・餌やりに同行させてもらうことはあっても本物のイノシシに出会ったことはありませんでした。
それどころか、実はマトモに猪肉を食べたのも、この4年内の話。

この日は、初めて『有害鳥獣捕獲』の確認作業に同行させてもらった日。
そして、忘れもしない、わたしの37歳の誕生日でした。

2月末で猟期も終わり、3月からは農作物・森林被害を防ぐために『有害鳥獣』として捕獲されるイノシシ。
わなで『捕獲』されたら『止めさし』は確実にセット。
逃がすことは許されません。

有害鳥獣捕獲員(ベテラン猟師)さん、市役所職員さんとともに現場に向かうこと30分。
箱わなの中に佇んでたのは、ウリ坊からようやく成獣になったくらいのイノシシでした。

車で向かう間のわたしは、とにかく緊張していたのを覚えています。
しかし、現場についてからは、初めて見る生きたイノシシと、イノシシに対峙する猟師さんの動きに釘付けで、あれこれ考える余裕はありませんでした。

車を降りるなり、慣れた手つきで空気銃を手に箱わなに近づく猟師さん。
生きるために必死で抵抗し、鉄柵に何度も突進してくるイノシシ。
沈黙の中、二者にしかわからないコミュニケーションをとっているように見えました。



空気銃が鳴る。

止めさしまでの時間は思っていた何十倍も長く、
止めさしの瞬間は、思っていた何百倍もあっけないものでした。

この時はただそう感じただけだったけど、狩猟免許を取得し、自分なりに勉強してきた今、この理由がよく分かります。

この猟師さんは、少しでもイノシシに無駄な痛みを与えないよう、
丁寧に、慎重に、一発で最善の場所を撃ち抜いたのです。

(ここから後、いろんな『止めさし』を知ることになり、結果、自分たちも狩猟免許を取ろうという流れになる)

この日の記録(友達限定公開のFB)によると、猟師さんからいただいた猪肉でハンバーグを作り、こう綴っていました。


あれから、『止めさし』の現場にたくさん立ち会い、実際自分の手で『止めさし』もするようになったけど、今もこの時の気持ちとほとんど変わりません。

この頃と比べるとできることは増えたけど、
自然の中での自分の力はまだまだ微々たるもの。
わたしにできることは何か?
その後もずっと答えを探していくことになるのでした。

我ながら、複雑な笑顔・・・

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