アラレちゃんがメガネっ娘になった本当の理由(その3)
前回のぶん ⇩
今回はアラレちゃんのペンギン村デビューを見ていきます。
このページの分析に進む前に「ドクタースランプ」第一話が、三幕で出来ていることを確認しておきます。
第一幕は、女の子(ボケ)とひげのおっさん(ツッコミ)の漫才。
第二幕は、デパートでおっさんが女の子の下着を買うために七転八倒するドタバタ。
そして今回分析するぶんが、残る第三幕。
順に見ていきましょう。
この第三幕で、ボケ(女の子)とツッコミ(おっさん)のペアが再び現れるのですが…
ご覧の様に、今回はもうひとり登場します。喫茶店のお姉さん。
続くコマでも三人いっしょに出ていますが…
以下は第一幕。ここではボケとツッコミの漫才が繰り広げられたのに対し…
この第三幕では、おっさんとお姉さん(ずけずけ言い合う仲のようです)がやり取りするものの、漫才にはならない。
ここでトリオ(3人)ではなくペア(2人)に変わる。
ここもそうです。しかし片方は入れ替わる。
横並びにしてみると…
これ伝言ゲーム漫才です!
女の子の顔が左に向く(つまり彼女は右に首をまわす)のと、コマのつながりが連動しています。
巧いなぁと、こうやって青で矢印を入れながら私は感心してしまいました。
実際にはこの二コマ、違う段に置かれているので、この工夫がわかりにくいのですが…
真横に並べなおすと…
さりげなく高度な巧さです鳥さま。
次へのコマつなぎが、また巧い。
女の子 ➡ おっさん ➱ 女の子 ➡ お姉さん ➡ おっさん
トリオによる伝言ゲーム漫才になっています!
第一幕では、この女の子がボケでおっさんがツッコミでしたが…
この第三幕ではおっさんのほうが受けで、女の子が攻めです。
お姉さんのごく普通の問いかけが、女の子を介して増幅され、おっさんに伝言ゲームされる様が、おかしみを生んでいます。
これがなんちゃって伝言ゲームで逆送信されます。
ここでおっさんの目玉をご覧ください。
でっかい目玉になっています。しかしとび出し眼球ではありません。
これはキャッチャーミットの大目玉です。女の子からのクールな送球を受けて、慌てて球を受け取る目玉。
リレー送球(赤の矢印)を受けて、青でマークしたでっかい目玉+派手な大口がキャッチャーミットとなって球を受け取る…
第一幕がキャッチボールの笑いだとするならば…
第三幕は中継プレーの笑いというわけです。
ああそういえば、ひとつ前のページで、こんなコマがありました。
前回の分析で、桃太郎さん(赤で括ったところ)が描きこまれているのはギャグまんがのテンションを(視覚的に)保つためだと分析しましたが…
ページをめくって最初のコマがこれですよね。
トリオ漫才の始まりです。その予告として…
こういう一コマに三人配置という、へん平構図が用意されていた…ように思えます。
続くこれは、斜め上からの構図です。
三角形が仕込まれています。トリオ漫才の始まりです。
それから彼女の背後に、ドアがありますね。
ドアをくぐって、社交界デビュー!の暗喩。
鳥先生の空間把握能力、そして視覚言語センスの良さがこの一コマに集約されています。
さらにすごいのは、以下の視線三角関係。
これがアンドロイドだと見抜けるかな?ふひひ(赤の両矢印)顔してますおっさん。
500ページの没を担当編集さんから受けながら、週刊少年ジャンプでのデビュー作ではこんなのしか描けなかった新人(当時23歳)が…
一年と数か月後にこうなって…
ここまで洗練進化してしまうの。
ちなみにこの第一話(それに第二話)が掲載された「ジャンプ」表紙にアラレが載っていなかったという話は有名ですが…
背表紙にしっかり笑顔。
ううう今回で第一話の残りページすべてを分析してしまうつもりでしたが、そうはいかなさそうなので、もう数回このエッセイを続けますね。
つづくyo ⇩
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