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二度目の受賞なるか、グラミー賞
明日(2025年2月3日)早朝、グラミー賞の授賞式があります。あるそうです。いつもあまり興味なしですが今年のは多少あります。坂本龍一の遺作アルバム(といってもアメリカ市場用に作ったもの)がニューエイジ部門の候補に入っていて、もしこれが受賞となれば、私にとって仕事上多少有利にならないでもないから。[追記:惜しかったですね空さん]
彼の最初の(そして生前唯一の)グラミー受賞は映画「ラストエンペラー」のサウンドトラックによってでした。
唐突にロンドンから国際電話で「ポルコ・ロッソ、今すぐ曲を書いてくれ。時間は一週間だ」と切り出されて目がテンになって、急遽東京でスタッフを招集して複数のスタジオを押さえて作曲と編曲を同時進行させ、メインテーマを作ってロンドンのベルトルッチ監督に急送して「鳥山くんこれボツ」と言われることを二回繰り返して三回目で「よかろう至急ロンドンまで飛んでこい」となって編曲・録音セッションの地獄一週間を味わったとかなんとか。
これがおそらく最初のボツ曲です。
これがどうやって三回目にしてここまで変貌したのか…
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どちらもトニック和音で始まるところは同じ。しかし「よかろう」のほうは旋律もトニック音で始まる。つまり調性が非常に強い。調性感をむしろ浮遊させるのがRSの味であったのを、ベルが浮遊を禁じ、地表に引力で引きずり降ろしていったというところでしょうか。
RSの才能を以てしても、いきなり「よかろう」は書けなかった、「ボツ」を経て今我々が「ラストエンペラーのテーマ」と呼んでいるものに到達したという事実は、今の私には非常に興味をそそられます。
いったいどうやってラグランジュは解析力学の体系を作り上げたのか、そこにたどり着くまでに先輩というか師匠と言っていいオイラーによる最小作用原理や、ダランベールによる拘束力相殺の理論(後にダランベールの原理としてラグランジュ解析力学の一角に吸収される)を自家薬籠中としていく過程は、とても味わい深い。科学史は奥が深い。
それとどこか重なるのです「ボツ」から「よかろう」への過程を追う面白さは。
いずれやりたいなラストエンペラーのテーマ誕生の過程の追跡。