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彼は「戦メリ」をどうやって作曲したのか?(その19)
その18 からの続きです。
龍一教授には独特の手癖があります。作曲するとき、自然と出てしまう癖です。そのひとつが、
♪ドシラソ~ミ~
の下降フレーズ。出世作「テクノポリス」のここ。
楽譜で見てもらったほうがいいかな。
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作曲者ご本人が「10年に一度の名曲!」とかつて自画自賛した(私にいわせれば凡曲ですが)ゲーム音楽「セブンサムライ」の、ここ。
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どちらも「♪ドシラソ~ミ~」フレーズですね。
「戦メリ」にも聞こえてきます。
この場合は「♪ド~シソミ~」であって「♪ドシラソ~ミ~」から「ラ」が抜けているわけですが、それでも同じ音列といえます。どうして同じといえるかというとですね…
前にこんな鍵盤図をお見せしました。白鍵が並んでいて「F」の鍵盤は鳴らしてはならない、そういう白鍵の図。
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「C」の鍵盤(上の図で一番左の鍵盤)を「ド」と定めると、「F」は「ファ」ですね。つまりドレミファソラシの白鍵七音のうち「ファ」は鳴らさない、そういう鍵盤です。
この鍵盤準拠で、マイナー三和音を作ってみると…
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以上の二つが該当します。
実際、以下の小節において「ラ・ド・ミ」→「ミ・ソ・シ」と和音が進んで、旋律フレーズ「♪ド~シソミ~」を支えています。
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さてここでクイズです。先ほどお見せした、以下のマイナー三和音ふたつを、一度に弾いてみたらどうなるでしょう?
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こうなります。サルでもわかる。
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おお、♪ドシラソミの旋律フレーズが現れました!
この旋律メロディを「ド」から「ミ」にかけて下降させるのは、喩えるならば、航空機をわざと急降下させて…
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伴う和音として「ラ・ド・ミ」や「ミ・ソ・シ」を鳴らすと…
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引力と慣性の力が、機内でプラスマイナス0となって、画像のような状態になります。
「戦メリ」でいうと、引力(D♭長調)と慣性の力(A♭長調)が以下の緑の小節で中和して、ふわっと調性が浮くのです。
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理論的なことはすでに説明してあるので、ここでは省略します。
ちなみにマイナー和音でないといけないわけではないのですが、メジャー三和音に比べてマイナー三和音のほうが引力が弱くなって、無重力状態を作るりやすくなるのです。
「テクノポリス」「セブンサムライ」における「♪ドシラソ~ミ~」無重力については、さらに面白い分析ができるのですが、それは後の機会に委ねて、「戦メリ」の分析をさらに進めていきます。