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モーツァルトの遺作は、私が解剖するしかないのか…(その15)

その14 の続きいきます。「コンフターティス」の分析です。
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前回ぶんで A♭短調にいつのまにか転調していました。しかしその続きであるところの今回ぶんは、A短調に戻されています

階名を付けていくとそれがわかるのだ ⇩

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どうなっているかというとですね、前回ラストで A♭ⅿ 和音だったのを思い出してください。①と③がそれぞれ「a♭」と「b」でした。これを減七和音の構成音その3と4と見なすと Ddim 和音すなわち「d - f - a♭ - b」にスムーズに繋がってくれます。


事実、見てのとおり「レ・ファ・ラ♭・シ・レ」なので Ddim ですね。バリバリの減七和音

Ddim 和音


「レ・シ・ファ・ラ♭・レ」ですか。Ddim の縦の並びが一部入れ替わってるの。

Ddim 和音


「レ・ラ♭・シ・ファ・シ・ファ・ソ♯」ですか。ここも Ddim の縦の並びが一部入れ替わったもの。

Ddim 和音


ここもそう。Ddim 和音の並びが一部入れ替わっていく。

Ddim 和音


小さいので分かりにくいかな。同じ Ddim 和音が続いていって、水色で括った和音の、トップの音が次にはボトムの音に移っていくの。

Ddim ➱ Ddim ➱ Ddim ➱ Ddim


ここから D7 和音ですね。減七和音から属七和音にスムーズにつなげていく、前回分析したのと同じ技。

D7 和音


ここでG短調、つまり前回ぶんの調(A♭短調)よりさらに半音下に降りていく。(より厳密にいうとA短調➱A♭短調➱A短調➱G短調


ここは Gm 和音つまりG短調のトニック和音かな。「レ・ラ・シ♭」を「ラ・シ♭・レ」と読み替えれば Gm 和音の②③⑤の音になるし。

Gm 和音


ここはもうどう見ても Gm 和音。「レ・ソ・シ♭」は同和音の ⑤①③。

Gⅿ 和音


ここは D7 かな?「レ・ラ・ド・レ・ラ・レ・ソ」。この後「ファ♯」が現れるまで D7 らしき和音に留まるけれど…

D7 らしき和音


「レ・ラ・ド・ファ♯・レ・ラ・レ・ファ♯」ということは… D7 和音。

D7 和音


D7 より Gm に着地。G短調のトニック和音。

Gm 和音

青で括った和音が、お団子二連を保ちながら縦の並びを変えていく、上昇していくのが面白いです。


映画のなかでは、まるで一気呵成にウォルフガングが歌いあげていったかのように作曲工程が描かれていましたが――
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いざ分析すると、どう考えてもそういう風には作られていないですね。

非常に緻密な計算、転調技が事前にスケッチされていて、それを元に弦楽器のオスティナートが書かれ、そこに合唱が載せられていったように思われます。

そうでないと書けませんこのような美しい曲。


つづくよワトソンくん⇩


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