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モーツァルトの遺作は、私が解剖するしかないのか…(その16)

その15 の続きいきます。「コンフターティス」の分析です。

今回はこの小節からいく。


A短調解釈で階名を付けていくと、こんな風になるわけですが…


「G短調に変わったんやないんかい?前回の分析ぶんでそういうとったやないか」と問いただしたくなる皆様のその気持ち、よっくわかります。わかりますよ。わかってます。それで当っていますわかってるって。

しかしここでは譜面にある調号(無調号というべきか)どおりA短調とみなしで階名を付けてあります。

なぜか? 

ここ、減七和音だからですよ。「ソ・シ♭・レ♭・ミ」。A短調解釈。

Gdim 和音


一方で、前回の分析にそってG短調で考えるならば「ラ・ド・ミ♭・ソ♭」。

Gdim 和音

A短調、G短調のどちらの解釈をとっても、減七和音ですので七音音階からはみ出してしまいます。

結論を先に言えばG短調です。事実、ひとつ前の小節が Gm 和音でした。それが(上にあるように)Gdim 和音に進んで、減七和音の特性を使ってこれが D♭dim と読み替えられて…



続く小節はどうかな…おおやはり D♭7 和音に進むわ。F♯短調 のドミナントセヴンス和音

D♭7 和音(Ⅲ7)

D♭dim → D♭7 と進むわけですよ。もっと前の小節でも使われていますねこれ。半音下にさりげなく転調していくスーパー裏ワザ

ここではG短調から F♯短調 への半音下転調。モーツァルト進行と命名してもいいぐらいの巧さです。


画像はイメージです


続くここも F♯短調 で、トニック和音。F♯ⅿ

F♯ⅿ 和音(Ⅵⅿ)


ここがわからない。D♭、A、C、F♯ の四音が同時に鳴る和音って…


原楽譜と見比べてみたら、この「c」の音はないようです。つまりこの編曲版にどういうわけか混ざってしまった音です。打ち込みミスではないかと想像します。


そうだとするとここの和音は(ひとつ前のものと同じ)F♯ⅿ 。 F♯短調 のトニック和音。

F♯ⅿ 和音(Ⅵⅿ)



燃え盛った業火も、巧みな半音下転調の連続とともに静まっていく、治まっていく、そういう風に曲が進んで行きます。プラットフォームに、新幹線電車が緩やかに滑り込んでいくように。


次回、最終小節へ!


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