宇宙のロマン、それは時間依存シュレディンガー方程式(その6)
だんだん長くなっていくよこのシリーズ。いつものパターンです、いつ終わるのか分からないまま、それでもしっかり決着をつけてしまう、私のいつもの歩みです。
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⇧ シュレディンガー方程式です。ふたつあるほうの、小難しげな方のです。
ここでクイズです。
この物理方程式、単位は何でしょう?
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チッチッチッチッ…
クイズの答え
正解は・・・ふたつあります。
「$${J}$$(ジュール)」と「$${\text{J} \cdot \text{m}^{-3/2}}$$(ジュールの空間密度)」の二つです。
なんでひとつやないんや⁉ とお怒りになる前に(そんなひとはいないと思いたいです…)どうか私の話をお聴きください。
シュレディンガー方程式の解釈をめぐって、生みの親であるところのエルヴィン・シュレディンガー教授そのひとが、思い違いをしていたという、科学史的にも非常に興味深いお話です。
同方程式はふたごさんでした。最初に産み落とされたものは、目下私たちが論じているものと違って、もう少し素朴な形をしていました。
素朴ゆえに分かりやすいものだったおかげで、当時の物理学界では「おおこれはわかりやすいぞ、従来の微積で間に合うやんか」と、アインシュタインをはじめ名だたる一流どころがやんややんやと称賛してくれました。
しかしやがて当時20代の前衛科学者と、その頭目ニールス・ボーア(たしかシュレディンガーと同い年でしたか)たちから反撃が始まりました。
ふたごの片割れ
面白いことに、数か月後には、シュと反シュの両陣営からほとんど同時に、新たな方程式が提示されました。
今、私たちが論じているこれです、この方程式です ⇩
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シュ教授は、この中に現れる波動関数 $${Ψ(x, t)}$$ について、統計数学でいう「重み関数」 にあたるものだと解釈しました。
この解釈に則るならば(シュそのひとは論文中で明確にはしていませんでしたが)この方程式はエネルギーの式であり、単位は $${J}$$(ジュール)となります。
一方、反シュ陣営のひとりマックス・ボルン教授は「確率振幅として $${Ψ(x, t)}$$ が現れるんやなかろうか?」と大胆不敵な説を切り出してきました。「そして $${|Ψ(x, t)|^2}$$ は確率密度やね」
この解釈でいくと、同方程式はエネルギーの式というよりは、エネルギー密度的な式であり、単位は $${\text{J} \cdot \text{m}^{-3/2}}$$ となります。
どちらが正しいか?
シュの「重み関数」解釈はその後形勢不利となり、その後はご本人やその理解者のアインシュタインらを除けば、支持者はいなくなっています。
とはいうもののディラックの解釈を取るならば、ハミルトン関数の量子力学版と見なせるので、エネルギーの式と見なしても別に差しつかえはなさそうです。
ボルンの確率解釈をメインに置くならば、エネルギー密度的な式(「的」としたのは厳密には「確率 *振幅*」だから)すなわち $${\text{J} \cdot \text{m}^{-3/2}}$$ が単位の方程式と考えられます。
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私ですか?「$${J}$$ でええやん」です。
左辺と右辺で単位が一致してればそれでええんやから。
単位が揃っているかどうかのチェックを「次元解析」といいます。
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次回、次元解析を時間依存シュレディンガー方程式に行っていきます。
「また会おうぜっ」