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Thus Created Ryuichi Sakamoto "Merry Christmas Mr. Lawrence" (Part 2)

[Abstract: The introductory section of "Merry Christmas Mr. Lawrence" can be seen as having both a 12/8 and a 3/4 time signature, which creates a unique rhythmic pattern. This combination of rhythms comes together to create a captivating musical moiré pattern, evoking imagery of cherry blossoms falling gently in the breeze, similar to the soft descent of snowflakes in the listener's mind.]



その1からの続きです。

前回、モチーフⒶとⒷについて説明しました。

同一の和音より生まれた、性別違いのふたごさんですよって。


この話は、後の回でまた取り上げるとして…


今回より「戦メリ」イントロ部分、すなわちモチーフⒶの初登場ぶりを、数回かけて分析していきたいと思います。



和声進行「Ⅳ→Ⅴ7→Ⅲ→Ⅵ→Ⅴ」の妙についてはすでに論じてあるのでここでは省きます。今回着目していただきたいのは、ここ。


ひとつの小節が、八分音符で 12 個ぶんの長さですよーという表示なのですが…


先日見かけた楽譜では、こんな風になっていてびっくりでした。


オーノー! その解釈ですと、冒頭の旋律は…

↘ ↗ ↘ の動きをしていることになります。いえいえこれで間違っているわけではないのですよ。ただ、作曲者はこの表記は断固拒否すると思うのです。

なぜか?

彼はこう解釈していると思われるから。

緩やかなワルツを踊っているのがわかりますか。

桜の花びらが、風に舞いながら、尽きることなく、どこまでも散っていく…そういう情景を、♪ で描くならば、この表記でないといけないのです。


以下が × というわけではありません。演奏を聴き取ってこう譜面にした、その思考過程は十分理解できるのですが…

以下の解釈と、コインの表裏関係にあると、果たして理解されていたのでしょうかこの記譜者さま。


龍一楽曲は、ひとつの曲にふたつの調が同時に響く、そういう設計がされています。そのため、弾くのは割と簡単でありながら、広がり豊かな響きに満ちています。さらにはこの曲のイントロは「3/4」と「12/8」のふたつがそっと同時に奏でられているため、音のモアレが生ずるのです。


この奥ゆかしい仕掛けを、それとなく示しているのが

なのです。実際の音の組み立ては

であっても、楽譜での表記は…

これでないといけないのですよモナミ。


このモアレ構造に気づいたうえで聴きかえすと、一段と味わい深いですねこのイントロ4小節。


つづく!


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