「戦メリ」がオリンピック開会式に鳴り響いた!
Abstract: I have previously analyzed Ryuichi Sakamoto's grand composition "El Mar Mediterrani," which he composed for the mass games at the opening ceremony of the 1992 Barcelona Summer Olympics, in several installments. This time, however, I will analyze it based on his compositional sketches rather than someone else's transcription. A certain chord, consistently discernible in the soundtrack of the 1983 movie "Merry Christmas Mr. Lawrence," can also be found in this piece. Furthermore, by inverting the quartal chord stacks into a quintal harmony style, it creates the impression of a tower reaching up into the sky, gradually taking shape with each measure.
バルセロナ夏季五輪開会式の例の曲の分析を、今月に入って行いましたが、その際に使った楽譜はYouTubeにあったシーケンサー動画の転用で、作曲者によるスケッチ楽譜と比べるとやはり不一致があります。耳コピの限界ですね。
これは作曲者の直筆楽譜をもとに、私の手でドレミを入れてみたもの。
C長調 → F長調 → B♭長調 → G短調
一つ目の和声は ド・ミ・ソ・シ なのでⅠ△7。
二つ目は レ・ミ・ファ・ラ… あっこれって「戦メリ」和音やないですか。ファ に ラ・レ・ミ が乗っかるアレ。
三つ目もそう。戦メリ和音。
四つ目は Ⅲ7ですね。短調におけるドミナント和音。ここに旋律的短音階の上行形をのっけて、わざと下降線を描かせているの。
こういうのを私は「モーツァルト和音」と呼んでいます。私の命名です。
交響曲第40番の冒頭にあるのですよ。これによって旋律が上に向かって跳ねていく。
旋律の形式はベートーヴェンの「歓喜の歌」で、和声はモーツァルト交響曲の最高傑作のものを使い、そして転調で「戦メリ」和声を二連させています。
先日までのたうちまわっていたのが嘘のように、あっさり謎が解けてしまいました。
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続く小節についても見ていきましょう。
F短調 → F長調 → G長調 → A長調
一つ目のは ラ・ド・ミ に シ が挿まった和音です。この シ は和音構成音 ミ と四度音程です。
二つ目のは ラ レ ソ ド ファ おお四度堆積和音の転回形。
三つ目のも シ ミ ラ レ ソ ド の四度堆積和音の転回形。
四つ目のは ラ ド ミ ソ シ レ。旋律に ファ があって、和音構成音 シ と増四度音程を形作っています。つまりドミナント的。かなり無茶な和音ですがこの後の小節でタワー大崩壊する前振りと思われます。そうですこの ラ:ド ・ミ・ソ・シ・レ 和音はタワーです。
これが最後の小節で大崩壊。
詳しいことは、数日後にウェブ論壇誌「アゴラ」に私の分析がアップされるのでそれをご覧ください。