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運動量保存則はアインシュタイン方程式と同い歳?

この本について前回少し語りました⇩


いい本なのになんだか読みにくい理由のひとつに、運動量保存則やエネルギー保存則がどういう風に見出されていったのか記述があまりないことが挙げられます。(この点を指摘した書評はあるのかな?)

皆さんはこの両法則、どうやって学びましたか。今ですと中3の理科で「力学的エネルギー保存則」を習います。「運動量保存則」については…どうやら高校に進んでから習うようですね。

私は理科好きっ子だったので小学生のうちに、本で読み知っていましたが――

「運動量保存則」は20世紀になってから?

「運動量保存則と提唱したのは誰?」と先ほど ChatGPT に訊ねてみました。特定できないようでした。デカルトがすでにそれっぽいことを論じているとか、ニュートンの第二法則がそれだとか、いろいろ出てはきます。しかし保存則としてネーミングしたわけではありません。

ラグランジュ解析力学かって?現代の整理された教科書では、運動量をキーワードにして同力学が語られていますが、ラグそのひとは「運動量」ということばを使っていません。「一般化運動量」とは呼んでいましたが。

私も調べてみて驚きました、運動量保存則の名づけは20世紀になってから、それもアインシュタインが今でいう一般相対性理論の方程式をついに見つけだしたのと同じ年(1915年)、エミ・ネーター(当時は珍しかった女性の物理数学者)が後にいうネーターの定理を提唱したときのようです。


「力学的エネルギー保存則」の提唱者も不明?

力学的エネルギー保存則についても、この命名はいつ、誰によるものだったのか、はっきりしません。

19世紀半ばに、三人の科学者がほとんど同時かつ別個に、エネルギー概念を提唱したことは科学史に多少通じた方なら思い出せると思います。

しかしそれは今でいう熱力学の法則としてでした。熱学と力学はそれまで別枠で、そこにエネルギーという新概念、そしてもう十数年遅れてエントロピーという新概念が見いだされて、この二つをメーターにした「熱力学」が生まれたのです。

かくして熱力学の第一法則として「エネルギー保存則」が、第二法則として「エントロピー増大法則」がそれぞれ王座を与えられました。

この「エネルギー保存則」を出発的に、それまでの力学が再検証されて「力学的エネルギー保存則」が抽出された…と、そんなところだったのではないかというのが、私の推理というか想像です。


名づけは後からなされる、科学においても

「ツンデレ」ということばがありますね。これは21世紀になってから生まれたものです。このフレーズの発明とともに、過去の例がいろいろ探られていきました。「あるある、あれとかそうやね」と。

同じノリで「エネルギー保存則」が19世紀後半に、「運動量保存則」が20世紀前半に名づけされた――のかどうか今のところ断定はしかねますが、おそらくそうだと想像します。

現代の私たちは、高校科学でこの二つをペアとして教わるので、ああきっと何百年も前からあったんだろうなーと刷り込まれてしまっているせいで、それで本格的な物理学史の書物に手を出すと、途中で頭がおかしくなってしまうのです。

そこのところを『古典力学の形成』の著者さんは、できれば序章で明確にすべきでした。「そういうのは後から名づけされたもので、デカルトもラグランジュもハミルトンも、それどころかアインシュタインも当時じぇんじぇん意識していなかった」と。


複素数と物理数学

同書を読んでいて、他にも気になった点があります。複数あります。解析学の発展史の一角として解析力学を眺めなおす視点が欲しかったことは前回論じたのでここでは省きます。複素数そして複素解析の発展が、物理学のそれとどう絡み合ってきたのか、そこが知りたいなーって私は思うのです。

「そんなにいうならお前書けばいいやん」

えー!? 



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